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アジアで外国人をマネジメントする中で学んだ4つの大切なこと

タイでマネジメントしてきて、失敗しながらも学んできたことを少しまとめておきます。また、経験上、他のアジアの国々でも共通する部分があるのではないかと思います。

(以前「起業5年目の振り返り」というnoteを書き本当はそのシリーズで書きたかったのですが、気づいたら2か月も経ってしまったので、シリーズにするのは辞めました・笑)

就労観、価値観、コミュニケーション、関係性、の4つの観点で書いてみます。

1. 就労観:その人はなんのために働いているのかを常に考える

日本人と外国人で大きく違うものの一つが、就労観では無いでしょうか。

タイの場合、そこそこの大学に行けるような家柄出身の方の場合、大学生が大学を出ると、そのまま進学するか、留学でもするか、または親の仕事でも手伝うか、などなど様々な選択肢の中でキャリアを考えます。大学を出る=社会人になる、という考え方が一般的な日本とはそこはずいぶん違います。(そもそも「社会人」という概念は外国語に訳せないと思ってます)

なので、その人がどういう人生観、就労観を持っていて、どういう理由で就職活動をしているのかを丹念に聞いておかないと、お互いの時間感覚がマッチしないという事が起こります。

例えばよくあるのは、実家がファミリービジネスをやっていて、30歳くらいを過ぎたら家に戻らないといけない暗黙のプレッシャーがある、というパターン。本人はそれまでに何社か経験しておこう、といった就職動機を持っている。そうした場合、こちらは3年くらいでようやく一人前という時間感覚で捉えているのに、向こうは1~2年で色々経験したので次の会社に行きます、といったことが起きかねません。こういうミスマッチを防ぐために、だいたい何年くらいで一人前になることを期待しているのか、どういう時間感覚で頑張ってほしいかをきちんと伝える必要があります。

自分の場合、その感覚が分からなくて採用し、「実家に帰る」と言ってサッと辞めてしまった子もいました。逆に、親が何をやっていて、親が子供のキャリアに対してどういう期待をしているのか(ココすごく大事)、を聞くようになって、少なくともそうしたズレは減りました。日本では家族構成や親の職業などに質問するのはNGだと思いますが、アジアではむしろ逆で、絶対に聞いておいた方が良いと思います。

2. 価値観:その考えは目的に対して必要か?それとも自分の美学なのか?を問いかける


仕事の指示を出すときに、日本人がフラストレーションが抱えるのが、仕事の進め方です。ほうれんそう、スケジュール意識、品質意識、等が日本人が大きなギャップを感じ、そしてストレスを感じるポイントの代表例です。

これについては、まず「そのギャップの原因は日本人にある」という事を我々日本人は知らなくてはいけません。毎年アジアの色々な国で仕事をしますが、様々な国々で聞く各国人の評価はだいたい似通っています。

「タイ人は報連相せず、計画的に仕事を進めず、すぐ転職する」
「インドネシア人は報連相せず、計画的に仕事を進めず、すぐ転職する」
「インド人は報連相せず、計画的に仕事を進めず、すぐ転職する」

など。そこからわかることは、相手国以上に、我々日本人が特殊な文化を持っているということです。「日本人は情報共有を過度に求め、(実行よりも)計画に時間をかけ、また終身雇用という特殊な前提で仕事をしている(かもしれない)」という視点をもって、自分をアップデートすることが必要です。

私が意識しているのは、「その価値観は目的やゴールに対して必要かどうか?」という視点を持つことです。

例えば、「情報共有」については、以前、「情報共有は最低限で良い」という部下との間に、対立がありました。「問題や、大事な情報は共有するようにしているから、結果には影響していない。なので、Jackが言うレベルの情報共有は必要ない」と主張する部下。僕は「持っている情報はなるべく場に出すこと」と日本で教わってきたので、感覚的には違和感があるのですが、彼の説明にはゴールに対しての合理性があったので、僕が折れました。相手に自分の価値観や美学を押し付けているだけ、と反省したのです。

逆に、「細かな部分にこだわること」においてギャップがあった場合は、「プロフェッショナルとしての顧客からの信頼を失うので、細部にこだわることは重要。これは自分の美学から言っているのではなくビジネス合理性から言っている」と、自分の主張を曲げませんでした。

それは目的に対して必要なことなのか、それとも単なる価値観の押し付けなのか、を峻別できることが大事だと思います。

3. コミュニケーション:言う事を絞り何回も言う、顔を見て言う、相手を責めない

外国人と仕事をしているととにかくコミュニケーションがズレまくります。様々な問題はほとんどここから起因するのではないでしょうか。

先ほどの価値観の違いに加えて、言語の違いもあります。アジアではお互いに不完全な英語で話したり、ローカル言語を交えたり、とコミュニケーションの精度がかなり落ちますので、ちょっとした指示ですらズレて伝わります。

ここに対して色々試みましたが、なかなか魔法はありません。以下のような当たり前のことの積み重ねしか無いと思っています。

・言う事を絞る。よく"More is Less, Less is More."と言います。伝えることを増やせば増やすほど、伝わりづらくなります。メッセージを絞りましょう。チームの方針発表で、毎回たくさんの文字量のスライドを沢山こしらえる人がいますが、時に逆効果となります。毎回同じメッセージのスライドを何回も使った方が効果的な場合もあります。

・顔を見て言う。やはりFace to Faceに勝るものはありません。アジアの人たちは言葉にすべてを表しませんから(日本人もですが)、違和感があっても反論してくれるとは限りません。でも対面であれば、表情を読み取り、気になっていることがありそうであればそこを汲み取ることが出来ます。良くないのはLINEやSlackでの感情的なやりとりです。英語でチャットすると言葉のニュアンスも伝わらないので、状況は悪化するばかりです。途中で打ち切って、直接話すか電話しましょう。弊社はリモートワーク制度を導入していますが、自律的な働き方ができるメリットはありつつも、一定の制限を設けて運用するようになりました。

・相手を責めない。それでもコミュニケーションはズレていきますが、それはもう宿命です。言った・言わないや、お互いの解釈の違いを責めるのは不毛です。ここでは、「人ではなく、間に問題がある」という原則に立ち返りましょう。「ミスコミュニケーションは常に起きる、それを取り除くことが共通のゴール」と置いて、相手との協力体制を作りましょう。そのために必要であれば、「ミスコミュニケーションの原因は自分だったかもしれない、申し訳ない」とリーダーが積極的に謝罪してしまいましょう。

4. 関係性:愛情を持ち接し、自分をさらけ出す

よく引用されるエリン・メイヤーさんの研究では、信頼の作り方には「タスクベース」と「関係ベース」がありますが、アジアでは「関係ベース」の社会が多く、どちらかと言うとウェットな関係が好まれます。

一方でタイには「階級社会」の名残があり、上司と部下との格差を明確にしておいた方が良い、というような教えも存在しているため、そこの取り扱いが自分には最初よくわかりませんでした。

ただタイで活躍している日本人リーダー、また自分自身も色々と試行錯誤してみて思うのは、「サーバント型」のリーダーシップスタイルがタイには一番馴染むという事です。皆と一緒に汗をかき、よく部下の話を聞きサポートし、カジュアルに接するようなスタイルですです。

そこに必要なのは、シンプルですが「愛情」だと思います。常に愛情を持って接するために、たくさんの会社がある中でたまたま自分の会社で働いてくれていることへの感謝、外国人の自分の下で働いてくれていることへの感謝、そういった気持ちを持ち続けたいものです。

「ちゃんと給料分働けよ!」とか「ワークライフバランスのことばっかり考えるなよ!」とか色々と愚痴ってしまう気持ちはわかりますが、そういうことを言い始めると、余計に負の感情が溜まって、態度に出てしまいます。

また、部下とパーソナルな関係を作るには、今の自分が何に困っていて、何を助けてほしいかを正直に打ち明けることも大事だ、と自分は学びました。リーダーは弱さ(Vulnerability)を見せることも時に必要というは研究でも明らかになっています。

メンバーが心を開かないのは、リーダーが心を開いていないからかもしれません。タイ人は、もともとはとても情に厚い民族です。日本人も同様ですが、あるいはそれ以上かもしれません。そうした心の繋がりが作れることを信じて、気持ちを打ち明けてみる勇気も必要だと思います。

以上、乱文ですが経験から4点にまとめてみました。これからも組織と向きあい、そこから学んでいき、自分と事業を成長させていきたいと思います。

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