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ツールが会社を変えてくれるのではなく、会社を変えるのは「ツールを使うあなた」~SaaS勉強会からの気づき~

今日はTeachme Bizのタイ拠点を率いる豆田さんが主宰するオンライン勉強会に参加させてもらった。Teachme Biz とは業務用マニュアルが簡単に作成できるツールで、今タイでも多くの企業で急速に導入が進んでいるツールだ。

今回はTeachme Bizの説明ではなく「様々なSaaSをどう活用し経営に生かすか」という趣旨の勉強会。豆田さんがご自身の経験も踏まえてふんだんにノウハウシェアをしてくれた。Slackや kintoneといった有名なものから、一般にはあまり知られていないけど便利なツールの紹介、そしてそれを実際に使ってみてどうかという使用感のお話も聞けてかなり勉強になった。

一方で、こういうSaaSと言うのは、利用企業からすると「本当に使いこなせるのか」「費用をかけた分の元は取れるのか」という懸念と常に隣り合わせである。私自身も、以前あるCRMを導入しようと思ったが、メンバーに懸念を表出され導入を見送った経験がある。

沢山良いツールは巷にあるし、それを活用して成功している企業があるのはわかる。一方で、それが「わが社でもうまくいく」かどうかは、また別な問題である。個社ごとに事業特性や組織の状態は違う。それにそのツールが自社に上手くなじむかどうかを、自分で判断しなくてはいけない。私としては以下の3つが重要だと思う。

①視界の共有度合い

ツールを導入するために重要なのは「Why?」である。つまり何のためにそのツールを導入するのかという「目的」である。

私が数年前にCRMツールの導入を検討したときに、メンバーからは「まだ早いのではないか」という声があり見送るという判断をした。しかしそれは、私とメンバーの視界が一致していなかったからだ。経営者である私は、今後の拡大戦略や社内の業務フローの非効率を見て「ツールを導入すべき」と思っていた。しかし同じレベルの問題意識は当時のメンバーには無かった。そして、今思えば、その前提を共有していないが故に、メンバーはツールだけを見て反対というリアクションを示した。

経営者と社員というのは、えてして見ている「視界」が違うものである。視界には「時間と空間」がある。経営者は少なくとも数年先の時間軸でモノを見ているし、またトップの視界は広くて高い。一方で従業員はトップに比べて短期的視野であり、現場目線でものを見ている。必然的に、見ている時間と空間にギャップが生じるのである。

「視界を揃える」という事をせずに、ツール導入の必然性への意識は揃わない。ゆえに、まずやるべきことはツールの説明の前に、この先会社をどうしようと思っているかというビジョンの共有、また今、経営は会社をどう見ているかという問題意識の共有である。数年前の自分はそれが欠けていたのではないかという事を反省している。

②メンバーの能力、変化対応力の問題

こうしたツール導入の時に同じく浮かぶ懸念は「うちのメンバーに使いこなせるだろうか」という懸念である。

日本であれば人材に最低限のリテラシーはあるかもしれないが、タイなどではまだ人材の質のバラつきも大きい。またいくら会社命令だからと言っても、ハイわかりましたと素直に使ってくれる人ばかりとは限らない。

普段から新しいものにオープンで無い人が、急に新しいツールを使い始めるはずが無い。組織にどれくらい「学ぶ文化」「変化する文化」があるのかが、ツール導入の際に明らかになるのだ。そうした土壌のあるなしで、ツール導入の成否は変わってくる。荒れた大地にいくら良い植物のタネをまいてもうまく行かないのである。

じゃあ土壌が無いからツールを諦めるのかというと、そうではない。そうした自社の文化の状態をしっかりと認識しつつ「ツール導入を新しい文化を作る機会」と位置付けてやることが大事である。繰り返すが、大切なのはツールの良し悪しではなく、ツールの使いこなす側のレディネスである。

導入の際には、どうすれば社員の意識に影響が与えられるかという視点で、工夫を加えるべきだろう。たとえば、

●ツールを活用している外部の会社の社員と交流させてもらい、刺激と変化へのオープンネスを作る
●ツール導入とともに新しいルーティンを作る(例:ツールを使ってのGood & Newの報告)
●それでも不安な場合は、変化対応に柔軟な一部の人でまずテスト実施し、組織内に小さな成功とそれによる変化の機運を作る

と言ったことが考えられる。(ちなみにこの「外部刺激」「新ルーティン」「スモールサクセス」はSaaS導入に関係なく、一般的な組織文化の変革においての重要ファクターと全く同じである。)

3.経営者自身のリテラシーとコミットメント

最後に大事なのは「経営者自身が使い倒す」という事だろう。

例えば「Slackって本当に便利?」というのはよく起業家同士の会話で聞かれる会話である。私自身は、自社で使っていて「Slackはとてもアリ」だと思っている。様々な外部アプリ連携をしたり、内省用の自分だけのチャネルを作ったり、絵文字追加などの変化を加えたり、自分なりにフル活用している。その結果、「これは便利」という個人的感触を得ているので、人に聞かれたときに「便利ですよ!」とSlackの魅力を伝えることができる。

ツール導入後、初期にツールへの懸念は必ず出てくるものである。人は変化に慣れるまでは不満を口にするものだからだ。その初期の懸念に対して、「間違いなく良いものだから」「とにかく使い続けよう」と曇りのない目で言えるだろうか。

「ではあと3か月使ってみて、そこでダメなら再検討しようか」という弱気発言がリーダーから出てきてしまうようなら、それは経営者自身がそのツールの魅力を信じていないという事になる。

変革には、継続とコミットメントが必要である。社内ツールの導入もある意味で「従業員の行動・態度の変革」であるので、ちょっとやそっとの抵抗であきらめてはいけない。そのためにはリーダーがツールの有用性を強く信じること、またリーダー自身が最高のユーザーであること、が大切だろう。

冒頭の豆田さんが凄いのはTeachmeを使い倒すだけでなく、様々なツールを自分で使いまくってその素晴らしさを体現している点だ。そこまで使い倒せば魅力も十分にわかるだろうし、その姿勢とパッションが恐らく従業員にも伝播して自社ツール含め各ツールへの愛着が深まっているのではないか。

ビジネスがデジタル抜きで語れない時代において、リーダー自身がITリテラシーを高めることはリーダーシップの発揮に直結する。正直、私自身もリテラシーがすごく高い方ではないが、今いくつかのツールを一生懸命勉強している。得意なスタッフに任せるだけでなく、自分でもツールをいじり倒す姿勢が大事だと、最近とみに思う。

以上、3つのポイントを紹介した。SaaSなどのツール導入を検討している企業の参考になれば幸いである。昨日は大変勉強になったので、私もこれをきっかけに自社の変革をより一層進めていきたい。

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