見出し画像

なぜ日本の子供は一人で学校に行けるのか

良く言われることですが、海外の人が日本に来てすごくビックリすることの一つが、「子供が自分で電車に乗ったり、歩いたりして学校に行く」と言うことです。

私の知る限り、日本以外の海外ではかなり珍しい光景だと思います。世界の標準はスクールバス、あるいは親が送り迎えするのが普通でしょう。

うちの子供たちは基本的はシンガポールとタイでしか学校に通ったことが無いので(一時体験除く)、これまで基本は親が送り迎えをしていました。また、学校が終わった後も、どこかに出かけるのに子供たち同士で出かけることはありません。

今回はじめて1年間、日本でフルで学校に通いました。徒歩通学ですが子供たちは自分で学校に行き、また学校が終わると自転車に乗って日が暮れるまで遊びに行く生活を体験しました。最後には30分くらい電車に乗って塾にも通えるようになりました。子供たちにはそれが非常に新鮮で楽しく、日本が好きになる理由の一つになったようです。

日本に存在する「集団への信頼性」(Group Reliance)

まさにそれについて書かれている記事が以前ありましたので、一部を抜粋で紹介しておきます。

「なぜ日本の子供は一人で歩いて学校へ行けるのか」

「この際立った独立心はなぜ生まれるのか。文化人類学者のDwayne Dixonによるとそれは「集団への信頼性」(Group Reliance)によるものだ。日本の子供は早くからそれを学び、すべてのコミュニティの構成員がそれを助ける存在として貢献することが期待されている。」

「こうした規範は、例えば学校で教えられる。順番に掃除の担当になったり給食当番になることを経験し、専門のスタッフに頼ることは無い。例えばトイレ掃除なども行うことを通じて、色々な労働を分け合うことを経験する。」

公共空間に責任を持つ、ということを通じて当事者意識を身に着ける。また、掃除を自分たちでしなくてはいけないため、その場を汚した結果がどうなるか、ということを具体的に学ぶことができる。この考えは社会全体に適用されるため、日本の町はとても清潔である。また、子供たちは、非常時には、社会の誰かに頼ってよいと言うことを理解している。」

日本は極めて犯罪率の低い国である。間違いなく、それが両親が子供を外に出しても安全であると考える理由になっている。また、都市がコンパクトであることや歩いて移動する文化があることも、安全性を作っている理由かもしれない」

「子供たちにこのように自立させることから、親は子供と、そして社会全体への深い信頼感を抱くのである。世界の多くの子供たちが"自分のことは自分でやる"子たちではあるが、この日本における「信頼と協力」が生まれる状況は西洋からみると非常に興味深く、またあまり語られることの多くない現象である。」

日本の都市の高い安全性が、日本人の「信頼と協力」という独特な社会規範を作っている、と言うことが言えそうです。

この記事にあるように、日本人からすれば当たり前の掃除や給食当番といった体験を通じて、我々は集団に対して責任を持つこと、また労働を分け合うということを身をもって学んでいるわけです。こうしたことは日本以外の国からすればとても驚くべきことだ、ということは日本にいるとなかなか気づきません。

ちなみに、どちらがいいのか?については海外で子育てしている人と話しても「一長一短あるよね」という感想が多いです。

日本で子育てすると自立心が育まれる一方で、気を付けないと親子の絆が薄くなる。海外にいると親子で過ごす時間が長いので親子の仲は良くなりますが、親離れ・子離れするタイミングが難しい。双方のメリットを理解しつつ、それぞれの家庭で方針を決める必要がありそうです。

コンテキストの違いを理解する

なお、こうした違いは仕事の仕方にも影響を与えているでしょう。

グローバルビジネスでも日本人は「チームで仕事を共有すること」に慣れているので、みずから「ボールを拾う」人が多いです。一方で外国人が「ボールを拾って」くれないことにしばしば日本人は不満を持ちますが、こうした「コンテキスト(背景文脈)の違い」を共有していないのですから、それを最初から期待するほうが間違っているといえます。

我々がマネジメントをしていく上でまず大事なのはこうしたお互いのビヘイビアの裏側にあるコンテキストを理解すること。そしてその上で、組織の構成員として期待したいvalue(価値観)を定義し、暗黙の前提ではなく明文化する。そして定義した共有価値観に対しては人種や文化を超えて従う、といった組織運営を行っていくことが、グローバルの組織運営では大事だと思います。

今日は以上です。


(本記事は、旧はてなブログの記事を加筆掲載したものです)

ーーーー(お知らせ)

「自分の軸を見つけ出す”リーダーシップの旅”」オンライン・ワークショップ開講中
Lead the Self(自分をリードする)ことをテーマに、仲間と共に様々なアクティビティに取り組むオンライン・ワークショップです。組織でリーダー的ポジションにいるかどうかは関係なく、ご自身のビジョンや方向性を見つけ出したい全ての方にご参加いただけます。(全編・日本語です)
詳しくはこちら

ーーーー
「マンガで学ぶリーダーシップ スースー!ピム!リーダーシップ編」
新任リーダーの成長ストーリーから、「リーダーシップとは何か」「部下の強みを引き出すには」「部下へのフィードバックの仕方」などについて楽しく学んでいただけるAmazon書籍です。(全編・日本語です)
詳しくはこちら

「この記事は役に立つ」と思って頂けたらサポートお願いします!