【老親リスクを回避せよ09】老親たちよ、謙虚たれ

現代は長生きしなければならない時代。だからこそ、親子関係のあり方についても従来とは変化して然るべきです。高齢者と話していて、老老地獄問題の根底には、老親の驕りと勘違いがあるように感じることがあります。

実は、人生の最終段階にあって、「親子関係の悪化」に苦慮しているシニアはとても多いです。シニアが死を自分の問題として意識するようになったときに、彼らが懇願するのは、「いま一度、昔のようにわが子との良好な関係を取り戻したい」ということ。逆にいうと、歳を重ねるに連れ、親子関係が悪化してしまうケースがそれだけ多いということです。

親子(身内)間トラブルの元凶は、突き詰めれば、多かれ少なかれ、おカネの問題です。親は老いて尚、おカネにお金に執着して手放さず、一方で介護など親の面倒を子に期待する。子にしてみれば、負担だけが上乗せされ身動きがとれなくなってしまう。「子が親の面倒をみるのは当然」などというのは100年古い。もはや時代が違います。現代を生きる子どもたちは忙しいし、高度経済成長時代を生きてきた人たちとは状況がちがうのです。

はっきり言いましょう。現在の老親世代が若かった頃。あの戦後経済の高度成長時代。兵隊から企業戦士に衣替えしたサラリーマンは、政官業の壮大なる癒着の恩恵を受けて、組織の歯車となりました。そして、機械的に時間を過ごすことの対価として、誰であっても、それなりのおカネを手にして蓄えることができました。そういう良い時代だったのですだ。

誤解を恐れず言わせてもらえば、老親世代が特別に有能だったからではありません。残念なことですが、この点を勘違いしている老親世代がかなり多いように感じています。

現在のこの国では、有能な人でさえ日々食べていくので精一杯。そんな過酷な毎日を生きている子どもたちに、金銭的な裏づけを示すこともなしに『親の面倒を子が見るのは当たり前』などと言っているから、老老地獄に落ちるのです。老親世代は、現役世代の子どもたちに、もっと謙虚になる必要があるのではないでしょうか。娘さん・息子さんをわが子として授かったことの意味を、いま一度見つめ直してみる必要があると、私は思っています。

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