【終活110番062】永遠の親子愛で紡ぐ魔法の終活(標準形)

前回の記事で究極の終活についてお話ししましたが、経済事情でそこまで太っ腹にはいかないよなぁ~という方も多いかと思います。でも、心配しないでください。魔法の終活の標準モデルを目標にトライしてくれれば大丈夫ですから。

標準的な魔法の終活は、大きく4つのステップで進めていきます。それが「縮伝頼渡(しゅくでんらいと)」です。何かの呪文のようですが、もしよろしければ、本当に呪文だと思ってこれを繰り返しながら、生涯主役人生をまっとうするためのあるべき終活に取り組んでみてください。

ステップ1:縮める
まずは、親子のこころの距離を縮めることです。これは、前段でご紹介したように、それなりの頻度で親子で飲食でもしながら、老い先のことについてさりげなく口にして、別れ際にはちょっとでいいからおカネをあげる…ということです。諸事情でこれが叶わない場合には、メールやLINEや手紙で代用します。お盆休みと年末年始にしか顔を合わせることができないのであれば、こどもの誕生日、ひなまつり、端午の節句、バレンタインデー、ホワイトデー、桜や紅葉の季節等々、最低でも年に4回を目指すようにしてください。要するに、別々に暮らしている子どものマインドから親の存在が消去されないことが大切です。頭の片隅でいいから、親のことを置いておいてもらうようにしたいところです。

で、メッセージの中身ですが、基本は、「問題ない?何かあったらいつでも言ってきてね!いつも応援してるから!」で十分です。子どもの好物か何かと一緒に宅配便で送ってあげるのもいいでしょう。ただ、年に一度は、この基本形から一歩踏み込むようにします。いちばん無理がないのは、やはり誕生日でしょうか。「誕生日おめでとう!いつも頑張ってるあなたに、大したこともしてあげられなくってゴメンね。あなたがうちに生まれてきてくれたおかげで、ハッピーをいっぱいもらいました。本当にありがとうね。あなたは私の宝物!」のような流れが鉄板です。謝罪から感謝の流れが読む側のこころをキュンとさせることがわかっています。最後の部分ですが、「私の誇り」とか「私の人生最大の報酬」とか「私の自慢の娘(息子)」とか、いろいろアレンジするといいでしょう。あと、逆に、親の誕生日もあり、ですね。「誕生日を迎えるたびに、親として至らない自分を申し訳なく思います。そして、あなたが生まれてきてくれたことを本当にうれしく思っています。いつもありがとう。身体に気をつけて頑張って!」みたいな感じでしょうか。

いずれにしても、老い先のさまざまな局面でわが子のサポートをもらおうと思ったら、何の予告もないままにその時になって突然SOSを送るというのは望ましくありません。子どもたちも仕事に家庭に大忙しなのですから。そのためにも、元気なうちから、親子間のこころの距離を縮めておくことが絶対条件です。円滑な老後のためには戦略が要るというわけです。

ステップ2:伝える
つぎはいよいよ、面と向かって親の想いを伝えることになります。子どもが成人してしまうと、たまに里帰りしたわが子と、何ら建設的な、あるいは意味のある会話のひとつもしないままに別れてしまうケースがよくあるものです。孫が誕生した後は、さらにこの傾向が強まります。里帰りの際には、例え30分でもいいからキチンと向き合う時間を作るようにしてください。できれば、食事の時間とかではなく、親子会議とまではいかないまでも、ちゃんとした落ち着いた空間を作りたいところです。なお、配偶者は不要です。というか、居ないほうがいいです。理由はステップ4で述べます。

さて、何を伝えるのか。ズバリ、老後の想定課題ごとの、現時点での基本方針です。親側の希望と置き換えてもいいでしょう。「もういい歳になってきたので今後のことを知っておいてほしい」と切り出して、以下、ほとんどの人がエンディングを迎えるまでに遭遇する老後の課題についての想いを伝えていきます。もちろん、事前に紙に書いておくようにします。これは、ステップ3もステップ4も同様です。

・要介護になって排泄介助が必要になったら、速やかに施設に入りたい
・施設は、市内の、年金の範囲内で賄えるところであればどこでも構わない
・認知症の症状が出た場合も、即、入院か施設入所を希望する
・75歳を過ぎたら、いかなる場合であっても身体にメスは入れたくない
・原状回復が望めなければ、いかなる延命治療も拒否する
・財産は、長男・長女・次女・次男で750万円ずつ等分する
・葬儀は不要。戒名も要らない。菩提寺に納骨だけしてほしい。お寺にはその旨、伝えておく

念のため言っておくと、子どもたち全員を一堂に集めて話をする必要はありません。むしろ、個別が理想です。財産分与比率が異なる場合はなおさらです。で、建前として、均等割りであることを全員に伝えます。
多めにもらうことになる子どもに対しては、何かしらの作業依頼とセットでプラスαを上乗せする…。そんな伝え方が望ましいでしょう。おカネの話はナーバスです。ひとりっ子以外の場合、必ず誰かが不満を抱くものです。親が亡き後、兄弟姉妹の間に亀裂が入ることがないようにしたいのであれば、財産分けについては、全員に詳細を全部開陳する必要はありません。それはとてもリスキーだと認識しておいてください。

ステップ3:頼む
老い先についての基本方針を伝えたら、つぎは子どもへのサポート依頼です。ステップ2で伝えた現時点での青写真を実現しようと思ったら、どうしても子どもたちのサポートが必要となります。それを具体的に頼むわけです。

例えば…。
・介護が必要になった時の事務手続きを頼みたい
・施設に入るときの施設さがしと事務手続きを頼みたい
・認知症の兆しが出たときには、通院や入院の段取りと事務手続きを頼みたい
・何かの折に医者に手術を勧められたときはセカンドオピニオンの段取りを頼みたい
・さいごは住み慣れた自宅で迎えたいので、在宅で看取ってくれるドクターの手配を頼みたい
・延命治療は一切ノーという要望を医療関係者に伝えてくれるよう頼みたい
・祭祀関係の段取りはすべて頼みたい
・死んだ後の諸手続きを頼みたい
・施設入所後の自宅の売却および、それに伴う遺品整理を頼みたい
・ペットの面倒を頼みたい

こんな感じです。


ステップ4:渡す
その上で、頼んだ作業の対価として、経費相当の金額を早期に手渡すようにします。現金手渡しでもいいのですが。できれば、その作業を頼む子どもに引き継いでもらうおカネをすべてひとつの預金口座にあらかじめ入金しておいて、通帳・印鑑・キャッシュカード・暗証番号をそのまま渡してしまいたいところです。なお、必ず普通預金にしてください。定期預金は、あらかじめ、一刻も早く解約して普通預金に振り替えておくようにします。その上で、自分の手元には、年金用の通帳だけを残しておけばいいと思います。もちろん、ある程度の残高を確保しておいても構いません。最終的には、年金用口座の残高だけを均等配分すればいいような状態を早めに作っておくことが理想です。

例えば、介護まわりの一切を頼む子どもには、想定される施設入所に期間を設定して経費総額に、施設さがしの経費も加味した金額をひとつの預金通帳に入金して手渡すようにします。介護関連の作業を頼まれた子どもは、もっとも多くのおカネがかかります。例えば、月額10万円の施設に10年入るとしたら、1,200万円です。これについては、年金用の預金口座をそのまま管理してもらうしかありません。あらかじめ、施設さがしに係る経費分と相続予定金額を加えておくようにしましょう。とにもかくにも、作業を頼むのとセットでおカネも渡すことが重要です。ギブ・アンド・テイクです。こうすることで、子どもの側に、親の老後を支えようという覚悟が定まるわけです。逆に、頼みごとをするばかりでおカネの話をスルーしていると、なかなか望むようなサポートはしてもらえないと思っていたほうがいいでしょう。哀しいことかもしれませんが、これが現実だと知っておいたほうがいいと思います。

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