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すべてのビジネスケアラーのみなさんに

3日前、わが阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝を果たし、ようやく祝宴ムードも落ち着いてきたところです。これからは、38年ぶりの日本一に向けて、身を引き締め、襟を正して、全身全霊で応援していくことにします…。

しかし、つくづく思うのは、ああして歓喜の渦の中で酔いしれている熱烈な虎党のなかには、親の介護問題で苦悩している人はいないのだろうか…ということです。まぁ、在宅で家族介護なんぞしているとしたら、当然、甲子園球場に出向けるはずもないのですからね。あの場に居合わせた人たちは、幸運にも、いま現在は老親問題を抱えていないのだろうと推察します。

ただ、親が要介護状態であったとしても、スポーツ観戦やらコンサートやら旅行やらに出かけることができる人たちもいます。それは、親を施設に入れている人たちです。

ビジネスケアラーというのは、仕事と家庭の合間に時間を捻出して、介護が必要な家族のために身を削って奔走している人たちのことを言います。多くの場合、ケアの対象者と同居しながら大変な日々を過ごしている人たちのことが、典型的な例として取り上げられているようです。

不運にもそうした状況下にある人たちに対して、どうしてもお伝えしたいことがあります。

みなさんはなぜ、みずから介護しているのでしょうか? 言い換えれば、どうして介護施設に入れて、プロに介護を任せないのでしょうか? そうすれば、自分の時間も圧倒的に確保しやすくなるし、何よりも心身の疲弊が圧倒的に軽減されるのに、です。

その理由について、私がビジネスケアラーのみなさんからの相談を受けた経験に基づいて言うとするならば、「どうしても自分が親の介護をしたいんだ!」という人は1割もいません。「やむなく介護をしている」人がほぼ全員だと理解しています。

で、後者の人たちが、にもかかわらず自分で親の介護に携わっている理由を訊いてみると、これまた9割以上の人が、「施設に入れるだけの経済的余裕がないから」と答えるのです。

で、私は、おカネがなくても施設介護を利用できる方法を教えて差し上げると、感覚的に7割の人たちが、ガイドに従って動いてくれます。残りの3割の人たちは、なぜかアクションを取りません。おそらく、私のガイドに納得がいかないのか、それよりも現状のままの過酷な日々を過ごすことのほうを望んだのか…。そのいずれかだろうと思います。

私が「おカネがないから自分がヤルしかない」という人たちにお伝えするソリューションは、簡単なことです。親を扶養家族から外して、生活保護を受給させて、特養・老健もしくは、介護付きのケアハウスに入所させる…。それだけのことです。

これを伝える前段階では、「あなたの親御さんは、わが子が仕事や家庭に支障をきたしながら、介護してもらうことを望んでいたのでしょうかねぇ」…みたいな話をします。「もしもあなたが、将来要介護になったとしたら、ご自分のお子さんに介護してほしいと思われますか?」と。

これでほとんどの人が覚悟を決めてくれます。「親を施設に入れよう。仕事と家庭をまもろう。それこそが、親が自分に望んでいることに違いない!」と腹に落ちるのだと思います。

そもそも、子には親の介護をする義務はありません。民法では確かに親の扶養義務が規定されています。でもそれは、『子の生活に支障が出ないかぎり』という条件付きです。つまり、親の面倒をみることで自分の家庭がままならなくなるような経済状況にある場合には、親の扶養義務はないのです。

また、親が生活保護を受給しているという事実は、誰にも知られることはありません。恥ずかしいことでも何でもない。長いこと納税してきた国民の、当然の権利です。現に、生活保護を受給しながら特養で暮らしている人はザラにいます。ちなみに、生活保護受給者は、特養の入所判定において優先されます!

結果的に、親を施設に入れることで、親に対してやさしい気持ちになれます。たまに見舞いに行った時の向き合い方が穏やかになります。常に時間と空間を共有していることから生じてくる、ささくれだったような感情が、距離を置くことで解消されていくわけです。

それに何よりも、ビジネスケアラーのみなさんが不在の間に家にひとりで置いておくのも不安でしょう? 結局は、家よりも施設のほうが安心・安全・快適なのです。

だから、「おカネがないから自分が家で介護するっきゃない」と決めつけてしまっているビジネスケアラーの人たちには、『世帯分離(親を扶養家族から外す手続き)⇒生活保護⇒特養入所』を進めてほしい。そして、ご自身の人生を取り戻してほしいと願います。

自分ひとりで手続きを完結する自信がないのであれば、社会福祉協議会や地域包括支援センターにいる社会福祉士をつかまえて助けてもらってください。社会福祉士って国家資格は、そういうことをしてくれる専門職なので。


どうかあきらめないで、親の介護をご自分の生活と人生から遮断してください。親離れしてください。元気だった頃の親御さんだって、きっとそう願っていたはずですよ。

阪神タイガースの優勝に酔いしれつつ、明け方、そんなことが浮かんできたので綴ってみました。

ビジネスケアラーのみなさんが、キラキラな年末を取り戻せるよう祈っています…。


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