【終活110番013】老親とはリスクである

人類史上、こんなに長生きした時代はありません。
ほんの数十年前まで、親のさいごの望みは初孫の顔を見ることでした。
つまり、60代半ばで亡くなる人がほとんどだったということです。

でも、今はちがいます。100歳超えもめずらしくない時代になりました。
孫どころか曾孫とだって遊べるようになりました。
昭和世代の人にしてみると、信じられない世の中になったわけです。

ただ、長生き時代ゆえのリスクもあります。介護や認知症が最たるものです。最近は、これに感染症が加わりました。いずれにしても、現役世代にとっては、もっとも脂の乗った時期に老親問題が生じるものです。ある日突然、何の予告もなく、それは起きます。

かつてのように、親子世帯が同居もしくは近居していた時代は、兆しが見えたものでした。
ところが物理的に遠く離れて暮らしていると、なかなかそうはいきません。年に一回か二回、お盆や正月にしか顔を合わせない親子が結構いるのです。

そうなると、仕事中にかかってきた一本の携帯電話で子ども側の世界がガラッと変わります。まさに、青天の霹靂です。仕事のこと、子どもの受験や就職のこと、家のローンのこと…。そんなこんなで気の休まる暇もない生活の中に、突如として親の介護問題が降って湧くのです。

自分を産んで育ててくれた親のことですから、それはそれなりに対応することでしょう。
でも、あまりにも頻繁に携帯電話が鳴ったり、仕事や家事を抜けて応援に来てくれと言われたりしていくうちに、だんだんとネガティブ感が出てきます。面倒だとか厄介だとか、いいがげんにしてよとか…。

というのも、私たちの遺伝子には、子どもが年老いた親の面倒を見るというプログラムが書き込まれていないのです。昔は、そうなる前に親はもう天国に行っていたのですから。だから、老親のことであれやこれや作業を求められると、ついつい苛立ったり文句を言ったりしたくなってしまうわけです。老親のことにネガティブな感情が顔をのぞかせてしまうことに対して、自分を責める必要はありません。これはやむを得ないことなのです。

そう考えると、親も子も、必ずやってくる老後問題についてはあらかじめ計画を立てておくことが必要だとわかってもらえると思います。こういうことが起きたら、だれが何をどうするのか。いざという時のアクションプランを作るために、親がまだ元気なうちから会話しておくこと。そうすることで、こころの準備をしておきたいところです。

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