【終活110番059】もしも家族が亡くなったら

配偶者や親が亡くなった場合、一般的に必要となる死後事務についてまとめておきます。

●死後14日以内に行う事務手続
縁起でもない話で恐縮ですが、当事者意識を持ってもらいたいので、ちょっと想像してみてください…。あなたが自宅で亡くなったとします。発見した家族は、まず、救急車を呼ぶでしょう。そして、救急隊員のガイドによって、主治医にあなたの死亡診断書を書いてもらうはずです。それを持って、死後7日以内に自治体に出向き、火葬許可証をもらいます。なお、自治体ですが、あなたが亡くなった場所、あなたの本籍地、届出人の住民票がある場所のいずれでも構いません。戸籍課に届け出るようにします。その後、葬儀社やお寺などを手配して、通夜と葬儀を済ませ、火葬します。

仮にあなたが独居だった場合、通報を受けた警察が、住民票や戸籍をたどって、6親等の親族まで連絡をします。そして、連絡を受けた人が、代わりに上記のような対応をすることになります。

葬儀が終わったら、遺族は死後14日以内に、故人の保険証などを返納して、資格喪失手続を行います。併せて、世帯主変更や、住民票の抹消手続も済ませます。なお、会社の健康保険の場合は、会社に返納します。また、国民年金は死後14日以内に、厚生年金は死後10日以内に、年金受給の停止手続も行う必要があります。年金事務所に事前に予約を入れて、死亡診断書のコピーと故人の年金証書(年金手帳)を持参します。

●死後4カ月以内に行う事務手続
つぎに、故人の確定申告と納税を行わなければなりません。これは「準確定申告」といって、その年の1月1日から故人が死亡した日までの所得金額や税額を計算して申告するものです。故人名義の不動産があれば、固定資産税の納付も必要になります。

●死後10カ月以内に行う事務手続
相続税の申告と納付も必要です。期限は、故人の死亡日から10ヶ月。ちなみに、相続税は一括で納付しなければならず、期限内に納付できないと延滞金が発生しますので要注意です。遺族が故人の財産や負債をすべて把握できているとは限りません。遺品をひっくり返して調べたり整理したりすることがいかに厄介なことかは、容易に想像できると思います。
だからこそ、生前にすべて整理して書きとめて、その内容を家族と共有しておくべきなのです。その際には、作業依頼とそれにかかる想定費用分を先渡ししてあげることです。頼まれた側のモチベーションがちがってきます。

さいごに、生命保険のことに触れておきます。
故人が生命保険に加入していれば、保険金を受け取るために保険会社に連絡する必要があります。ただじっと待っていても、保険会社のほうからコンタクトしてくることはありません。保険金を支払わずに済めば、それは丸々、彼らの儲けになりますからね。遺品から保険証書を探し出します。預金通帳やクレジットカードの明細書も、です。そして、保険料の引き落としがないかどうかを確認します。

故人が預金口座を持っていた銀行や、証券口座を持っていた証券会社に連絡して、口座を止める手続も必要です。家族は、故人の遺品から通帳を探したり、郵便物のなかから証券会社の残高報告書を見つけて、ひとつずつ対応しなければなりません。

水道・光熱費や携帯電話代等々、故人が生前利用していたサービスの料金も、郵便物や通帳、クレジットカードの明細などから調べ上げて、個々に電話をして解除の手続を取る必要があります。

こうして支払うべきおカネと残ったおカネをすべて把握できたら、ようやく家族は故人の遺産をどうやって分けるかを話し合うスタート地点に立ちます。遺産分割協議です。話し合いが円滑に進まない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。

以上が、あなたの亡くなった後、残された家族が対応しなければならない作業の概略です。
どうですか?気が遠くなるほどに、厄介で面倒くさそうじゃないですか。

でも、実際の作業はもっともっと大変なのです。そう感じてもらえたなら、元気なうちに取り組んでおいてほしいことはただひとつ。自分の財産をすべて明らかにして、それを受け取ることになる相続権者ひとり一人に、エンディングに向けて頼みたい作業とその財源。そして、引き継ぐつもりのおカネについて、自分自身の言葉で真摯に伝えることです。

その際に、ただ口頭で伝えるのではなく、エンディングノートやエイジングウィルをツールとして使うようにしてください。あなたが亡くなってからはじめて出てくる遺言で事が明らかになるよりも、元気なうちに向き合って、依頼事項とおカネをセットで伝えてあげるほうがよっぽど有効です。そうすることで、親側は、わが子の老後支援を確実に得られることで安心を手にすることができます。子ども側は、早期におカネを引き継げることで老親のサポートをしようという覚悟と責任が芽生えてくるのです。これこそが、私が世の中に提唱し続けている『永遠の親子愛で紡ぐ魔法の終活』なのです。

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