老健の本質は介護施設ではなく医療施設

これまでの記事の中で、介護施設のなかでは、消去法ではありますが、老健の医療サポートがベストだと書いてきました。ひとことで言えば、医療施設ゆえの安心が老健にはあるのです。

ということで、老健が安心な理由は、手厚い医療看護体制にあります。
介護保険上の規定として、100人の利用者に対して職員は34人以上いなければなりません。

が、問題はその職員の内訳です。特養は34人のうち、看護師はわずか3人でOKです。一方の老健は10人の配置が必要です。おまけに、平日の日中時間帯には医師も置かねばなりません。かつ、ほとんどの老健には病医院が隣接しているのです。自分の親を入れるとしたら、果たしてどちらが安心か……。これはもう比較になりませんよね。

現在、全国の約4,300件のうち8割以上は当然のように夜勤看護をつけていますし、看取りまで対応しています。その理由は、介護報酬云々の経営上の戦略ということではないと、老健の現場で活躍されている職員の人たちを見ていて思います。老健での生活に慣れ親しんだ方が最後の最期の瞬間を迎えようとしたときに、できればここで看取ってもらえないだろうかというご家族の要望に対して、看護師以下の多くの職員が真摯に向き合っているということなのです。ここに医者も入れていいかどうかは微妙ですが…(苦笑)。

看護師を夜勤させればそれだけ人件費は嵩むし、看取りのために医師を待機させたら尚のことです。それでも全国の老健の8割が日常的に看取りを行っていて、さらにこの先も、老健全体として看取りに対応していこうという風潮(まちがいありません!)には、救われる思いがします。

死に場所が足らなくてどうにもならなくて、困った挙句にSアミーユ川崎幸町(2014年に夜勤職員が入所者3名を居室のベランダから突き落とした事件。現在は当時の経営母体である株式会社メッセージを吸収合併した損保ジャパンが運営を引き継いでいる)みたいなババを引いてしまうような残念な時代において、認知症の親御さんを抱える現役世代にとって、老健はまちがいなくひと筋の光です。

あとひとつ、付け加えるならば、経営母体が(社会福祉法人や株式会社ではなく)医療法人である点は大きいと思っています。グループ内に、病医院を要しているわけで、経営の確固たる柱があるということは、経営的にゆとりがあるということを意味しています。これはとても重要なことで、グループ全体が堅調な経営を維持できていれば、そこで働く職員にも精神的な余裕が出てくるものなのです。要は、待遇面に反映されますからね。

なので、経営的に収益分岐点カスカスで、コスト削減第一みたいなオペレーショんに陥りがちな他の業態よりも、介護報酬のみならず診療報酬という収益源がある医療法人のほうが決定的に安心ということになるのです。

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