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第2の脳みそ作る思考整理法「Zettelkasten method」を会得したい

米国発のメモツール「Roam」がシードラウンドで900万ドルを調達したと「The Information」が報じました。評価額は早くも2億ドルに跳ね上がったと言います。

Roam ResearchはConor White-SullivanJoshua Brownによって2017年に創業されました。

彼らのメモツールは定期課金型のサブスクリプションで提供されており、ARRは100万ドル(1億円)を突破したとのこと。現在は11名体制のスモールチームで、黒字化しているようです。

投資家にはStripe創業者のCollison兄弟なども名を連ねており、すでに登録者は10万人以上。一時は新規登録の受付をストップするほどで、熱狂的なファンが急増しているといいます。

今回の資金調達は一般的なVCラウンドに比べて希薄化が小さいことが指摘されています。

DCM Ventures原さんによるとNotionやRoam、Superhumanといったテック企業の成長の背景には以下2つのトレンドがある。

1. 投資家の変化:伝統的なVCではなく、エンジェルやソロキャピタリストがリード
2. Go-to-Market戦略の変化:これまでは巨額の資金がマーケティングに投じられていたところ、最近は口コミ・共有で伸びる"Product Led Growth"が中心

マーケ費用を燃やさなくても成長できる下地の整った企業が増えてきているのは非常に興味深いです。

根底にあるのは「Zettelkasten method」という思考整理法

Roam Researchの特徴は「紐付け」にあります。

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Roamで作成したメモ同士は、関連する情報があれば紐付けることができます。ディレクトリ構造やタグ付けによるグルーピングといった整理は不要で、単語同士をネットワーク状に繋ぎ合わせることで関連情報を引き出しやすくしてくれる仕組みとなっています。

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メモ同士のリンケージを図式化すると、脳みそにおけるニューロンのつながりみたいな全体像が浮かび上がってきます。

Roam Researchを活用すれば、まさに「第2の脳("The Second Brain")」を作り上げることができるというわけです。

サンミンさんがまとめてくださっているように、「Bidirectional Link(双方向性のリンク)」であることもRoamの特徴。トランスクルージョンを用いて繋がり合ったページを行き来できたり、思わぬ過去のメモに再び辿り着けたりできます。

この第2の脳を作り上げる「Roam Research」というサービスの根底にある思考法が「Zettelkasten method」と呼ばれるものです。

Zettelkasten methodはドイツの社会学者Niklas Luhmann氏が思考整理のために生み出した手法です。Zettelは「メモ」、kastenは「箱」という意味で、紙のメモを箱に貯めてくことで情報を整理していったのが始まりだそうです。

情報を一生懸命ノートにまとめても、後で見直したときに関連知識やアイディアを参照できないことに課題を感じていたというLuhmann氏。そこで、小さな紙のカードに単一の情報のみを書き、固有の番号を振って同じ箱に収納して関連情報を蓄積していきました。

Zettelkastenのルールは以下の通り。(GIGAZINE記事より抜粋)

【Zettelkastenのルール】
1:カード1枚につき1アイデアを記入
2:カードの内容を完結させる
3:カードは常に他のカードとリンクさせる
4:カードのリンクが何を意味するかを説明する
5:自分の言葉を使う
6:参考文献を残しておく
7:自分の考えを加える
8:構造を気にしない
9:接続カードを追加する
10:アウトラインカードを追加する
11:カードを削除しない
12:恐れずにカードを追加する

Luhmann氏は思考整理に関する研究を40年間も続け、出版した本は累計70冊以上、発表した論文は500本を超えます。彼が生涯でKasten(箱)に蓄積したZettel(メモ)は9万枚以上にのぼるそう。そこには第2の脳が出来上がっていることでしょう。

個人的に思考がとっ散らかるタイプで、メモをどう活用するか悩み続けてきました。そんな中でZettelkasten methodに出会い、ひらめきやアイディアを生み出す"ニューロンの発火"を再現できるような手法に強く惹かれました。Roamは初見殺しのサービスではありますが、応募していた「Roam Scholars Program」が通っていて50%割引クーポンをGETしていたことに気が付いたので、これから使い込んで第2の脳みそを育てていきたいなと思っています。

Roamは思考整理についてWhite Paper(執筆者は最初にプロトタイプを試し、1人目の出資者となったRichard Meadows氏)も出しており、一般的なメモや思考整理の現場や課題、それを解決するRoam Researchというツールについて解説しています。

Googleのページランク理論のような引用数、サイテーション数による論文の評価モデルやベイジアン推論なども交え、Roamがノード接続、ネットワーク式アプローチに至ったロジックを学べる内容となっています。

面白いのは、最終的にRoamはユーザー同士のノードを繋ぎ合わせた「集合知(Wisdom of crowds)」を作り上げることを目標に掲げているということ。著名投資家レイ・ダリオが運営するヘッジファンド「Bridgewater Associates」の意思決定システムなども例に交えながら情報の重み付け(Believability scores)等に言及されているのも非常に興味深い。集合知が衆愚となる原因であるバイアスを回避するための工夫も施していくようです。

現在はEvernoteキラーと目されているRoam Researchですが、様々なドキュメンテーションツールやWikipedia、さらにはGoogleまでも超えるような集合知を作り上げる可能性を秘めているのかもしれないなと思った次第です。

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