明るい夜に出かけて
もっと読みたい。
これが率直な感想だった。決して物足りなかったわけではない。むしろ大満足だった。
物語はラジオのハガキ職人の富山、バイトの先輩で歌い手の鹿沢、高校の同級生でネット配信者の永川、女子高生で有名ハガキ職人の佐古田。非現実な自分を持っているこの4人によって、非現実と現実を行き来しながら進んでゆく。
インターネットが普及して非現実的な世界やコミュニケーションが当たり前になっている現在。人間的な繋がりはどんどん少なくなってきている。
なんていう批判は簡単にできるし、古い大人はテンプレートのようにそう表現する。
そんな古大人に対し若者や若者の気持ちわかるよマン(いわゆる新大人)は、いつまでそんな考えしてるんだ。と反論する。
この小説ではそんな両者の考え方を批判も肯定もせず、暗く且つ明るく表現されている。
主人公の富山は複雑な過去を持ち、暗い世界で寂しくコンビニでバイトをする20歳。
しかし、鹿沢や永川、佐古田と出会いそんな暗い世界に徐々に明かりを取り入られていく。
「暗い」と「明るい」
言葉としては矛盾しているがこの物語の中の「明るい」は決して大きくない。夜にポツンと光る街頭やラジオブースのようなもの。
暗い世界に明かりが生まれ、歩みを止めていた自分の足を前に運ぶ。
明るい夜に出かけていく。
その先には眩しいほど明るい朝が待っているのかもしれない。
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