お値段35ドル!AliExpressで売っている怪しいスマホ"P48 Pro"をバラしてみる
概要
昨今の情勢もあり、世界最大級の電気街である深圳・華強北へ行くことができずもどかしい今日このごろですが、ひと頃に比べると国際物流の混乱も落ち着いてきて、海外から怪しいガジェットを買う活動はそこそこ活発にできるようになっています。そんなわけで、今回は怪しいガジェット好きにはおなじみのAliExpressで見つけた怪しいスマートフォン"P48 Pro"を試しに購入し、分解してみました。購入元は下記のShopになります。
正直なところ名前の時点で気がつく人は気がつくと思いますが、見た目も米中貿易摩擦の影響をもろに受けているH社のフラッグシップモデルをリスペクトしているように見えます。しかし驚くべきはそのお値段、なんとUSD34.99(私が購入した時は日本円では3,777円でした)です。見た目もさることながら、スマートフォンがこの値段となると一周回ってますます怪しいと思い、ついポチってしまったのでした。
さて、さらに販売ページの詳細仕様を見ていくと、3G専用、RAMは1G、ROMは8GB、カメラはフロント200万画素/リア500万画素という文字が並んでいて、2020年現在ではかなりショボい仕様である感は否めません。CPUは2017年に分解した偽iPhone Xに載っていたMediaTekのMT6580との記載があり、古さが感じられます。しかし一方ではカタログ画像の中にはDeca Coreとの記載もあります。製品ページですら信用ならないあたりも怪しさを増していてなかなかポイントが高いです。
なお、筆者の過去のアクションカムやスマホ等のガジェットの分解記事はこちらにまとめてあります。あわせてご覧ください。
免責
本分解レポートを参照した結果生じたいかなる損害についても筆者は責任を負いません。また、本製品の使用を推奨するものでもありません。
外箱
まずは外箱です。至ってシンプル、青地の化粧箱の天面に"android"の文字とドロイド君が箔押しされているだけというデザインです。箱の上側面には"P48PRO 1+8 欧規緑色"というシールが貼られていました。「欧規」はACアダプタがEUで一般的なCタイプのプラグであることを指しているのではないかと思います。
内容物
箱の中には本体の他に、上の写真のようなアクセサリー類も入っていました。4000円しないスマホですが、ケースに保護シート(本体にも最初から貼ってありました)、イヤホンに充電器とUSBケーブル、ユーザーマニュアルが付いていました。
外観
さて、次は本体外観です。上下に大きなベゼルがあるのがよく分かる一方で、最近のスマホでよく見るフロントカメラのノッチを模したデザインがされています。しかし、ノッチを模したところにあるのはカメラではなく通話用スピーカーであることが後から判明しました。フロントカメラはその左側、黄色く見えるフロントカメラ用LEDの横に取り付けられています。
本来裏側はこちらのようにツルッとしたエメラルドグリーンの塗装になっています。本物(?)はもう少しグラデーションのかかった塗装ではないかと思うのですが、こちらは特にグラデーションはない一様な塗装です。また、この背面パーツはバッテリーカバーとなっているため、SIM挿入時およびバッテリー交換時はここを外して内部にアクセスすることになります。
さて、ヘッダー画像にもしましたが、外観の最大のツッコミどころはこのカメラ部分です。いかにも5眼!という雰囲気な上に、ダメ押しの”LCIEA”です。”LCIEA”ですからね、某ドイツのブランドとは関係ないのでしょう。"SUMMAFIT-R1:2.2/27 ASBH."という表記も、オリジナルを微妙に変えて真似ていて、ネタ元を良く観察しているな…と感心してしまいます。
上の写真は本体下部を撮ったものです。ご覧の通り、USBポートが見当たらず、マイクやスピーカーの穴だけが開いています。よく見ると気がつくかもしれませんが、右側の6個の穴はすべて貫通していて、ここから音が出るようになっていますが、左側の6個の穴は一番左端の1個(分解したところ裏にマイクがありました)以外は途中でふさがっており、飾りであることが分かります。
こちらは本体上部の写真です。本体上部にイヤホンジャックとUSB(micro-B!)ポートがあることが分かります。本体上部にUSBポートがあるというのはちょっとめずらしい気がします。
筐体を分解する
いよいよ本体の分解です。バッテリーカバーを剥がすと"4800mAh"というバッテリーとSIMスロットが目に入ってきます。製品ページにはバッテリー容量は3800mAhとの記載があり、食い違っています。また、本体左下のフェルトのようなものが見える部分はスピーカーでした。
バッテリーを取り外すと裏面には注意書きが書いてありました。英語が少し変な気がしますが、中国の工業規格であるGB規格に準拠しているような表記があったりと、ユーザーの目に見えるところに取り付けられること自体は少し意識していそうです。
また、バッテリーカバー越しに見えていた5眼のカメラのうち、右側の2眼については筐体の対応する位置にはなにも搭載されておらず、レンズ風の飾りであったことが分かりました。
バッテリーカバーの"LCIEA"表記のある部分を剥がすと、右側の2つのレンズはバッテリーカバーの樹脂を少し凹凸させ、そこに黒で着色しただけのものだったことが分かりました。こんな程度でもそれっぽく見えてしまうものなんですね…
側部の電源ボタン等はフレキシブル基板がそのまま露出しているのではなく、ビニールテープのようなものでくるまれた状態になっていました。防水等への配慮か、押し込まれたときに配線の通っているフレキシブル基板にかかる負荷を分散して断線しにくくするためといったところでしょうか。
筐体にはシール状のアンテナが貼り付けられていました。"GT033"という表記はこの後も各所に出てきていたので、この端末の内部的な機種名だと思われます。
こちらはバッテリーカバーの裏側ですが、ここにも"GT033"の文字がありました。"201379"が何を意味するのか気になるところです。"2013年7月9日"と解釈するとそんな昔にこのデザインの型を起こせるわけがない(タイムマシンでもあれば別ですが…)ので矛盾しますし、"20年の第13週"とすると"79"がよく分からなくなってしまいます。単なる何かの通し番号でしょうか…?
筐体のネジを外し、ツメも外していくと、筐体裏蓋を取り外すことができました。裏蓋を取り外すと、ダイキャスト製のフレームとそこに取り付けられた基板(上部)、振動モーター、マイク、スピーカー(下部)が見えてきます。
基板を取り出す
メイン基板のある上部に目をやると、まず最初にバッテリーカバーには5つ、裏蓋では3つ見えていたカメラのレンズ(風の飾り)がなくなり、ついに本物のカメラモジュールが1個だけリアカメラとして取り付けられていることが分かりました。バッテリーカバーだけでなく、裏蓋にまでわざわざレンズ風の飾りを付けるとは全く芸が細かいですね…
また、このように本体上部にメイン基板があり、サイズやコストの観点から他の部分に追加で基板を置きたくないという理由でUSBポートやイヤホンジャックを上部に持ってきたのだと思われます。
加えて、基板上に"HEBS Q3_MB_V6.1 20191216" とあることから、少なくともこのリビジョンの基板の設計は割と最近に行われたものであると推測できます。
さて、メイン基板は大半がシールドケースで覆われていますが、ここまで来るとおもて面のタッチパネルから伸びるフレキシブル基板上のICを観察することができます。このICは米国FocalTech SystemsのタッチパネルコントローラーであるFT6336です。以前分解したスマホ2機種でも同じICが搭載されていました。
FT6336が載ったフレキシブル基板を持ち上げると、QCシールらしきものが見えてきます。シールには"Q3-82-3G 512+8 HSWRAFR","B1 B6 21016104","JH-20200706 03198","DL BT MMI QC"との記載があります。気になる点としては、製品ページや外箱のシールには"1+8"と書いてあったのですが、このシールには"512+8"とある点や、"20200706"という記載から製造は2020年の7月であると思われる点が挙げられます。
筐体のネジは全て外したにも関わらず、メイン基板がダイキャストのフレームからうまく外れませんでした。バッテリーの下に来ていた黒いシートの裏にもネジがあるのかと剥がしてみると、ネジはありませんでしたが、黒いシートによって画面のフレキシブル基板が固定されていました。
黒いシートをすべて剥がすと、写真のようにメイン基板をフレームから外すことができ、基板の裏面にアクセスすることができました。基板の裏側は導電シートでシールドされているようでした。
イメージセンサー等を一通り分解した後に、タッチパネルとフレームを分離する作業もしました。タッチパネルの下部には"MCA-57302-GT032-V0"と、これまでの"GT033"とは違い"GT032"と記載がありました。一つ前の機種とタッチパネルが共通ということでしょうか?
ダイキャストのフレームからLCDモジュールを取り外すとこんな感じです。フレーム下部の張り出したスペースの裏には振動モーターが取り付けられていました。
フレームには"GT033-A"という表記と、手書き感のある"X043"という表記がありました。手書きの方はダイキャスト工場内での管理番号でしょうか。なんとも適当な感じです。
LCDを調べる
LCDには”BL-HL5798-V1 HL570-09-V0 200626”と、LCDから伸びるフレキシブル基板にはHL5723-V2との記載がありました。残念ながら検索してもデータシートにたどりつくことはできませんでした。
顕微鏡を使ってディスプレイのピクセルを観察してみたところ、このLCDは1mmあたりに約7ピクセル並んでいることが分かりました。見たところ、このLCDの縦の有効エリアが約130mm、横の有効エリアが約63mmだったので、ここから計算すると縦910x横441pixelとなります。製品ページを見ると縦854x横480pixelとあり、ピクセルピッチの測定誤差を踏まえるとこの点に関しては製品ページは正しい表記をしていると言えそうです。
メイン基板を調べる
さて、お次はメイン基板です。メイン基板の裏の導電シートを剥がすと、ポリイミドテープ越しに基板のうら面が見えてきます。ご覧の通り、フロントカメラ(基板右下)、リアカメラ(基板中央~左下)、液晶パネル(基板上部)、側面ボタン(基板左側)の各々のフレキシブル基板が直接メイン基板にはんだ付けされています。薄型化とコネクタのコストを削減するための工夫でしょうか。また、こちら側に接続されているのはフレキシブル基板のみで、ICは一切搭載されていません。これも薄型化とコストカットのためだと思われます。
うら面のポリイミドテープを剥がし、ヒートガンで軽く加熱してやることですべてのフレキシブル基板外し、メイン基板だけを取り出しました。しかしまだシールドケースが付いているため、どのようなICが搭載されているか分かりません。このシールドケースは基板にハンダで固定されているようだったので、基板うら面と同様、シールドケースもヒートガンで加熱し取り外しました。
若干イヤホンジャックを融かしてしまいましたが、きれいに取り外すことができました。
せっかくなのでサイズ比較のためにB-CASカード(クレジットカードサイズ)と並べてみました。いかにコンパクトにまとまっているか分かるかと思います。
基板上の部品を調べる
基板上の部品チェックに入る前に、フレキシブル基板とシールドケースを取り外したメイン基板の写真を貼っておきます。基板上部、USBコネクタの下の基板の開口はもしかすると本体背面の真ん中にカメラが来るタイプのスマホも同じ基板で作れるようにする工夫かもしれません。
また、基板うら面には"2007 HSWRAFR 21016104"と印字があります。"HSWRAFR 21016104"はシールドケース上に貼られていたQCシールと同じ内容です。また、"2007"は2020年07月製造の意味だと思われます。基板のシルク印刷でなく、後から印刷したと思われる黒印字でこれらの文字が印刷されていることを考えると、"2007"のあとのこれらの文字はロット番号等を示すものだと考えられます。
さて、いよいよ毎度おなじみの部品チェックです。今回はおもて面にしか部品が載っていませんので、部品一覧もおもて面のみです。今回は小物部品は判別がつくものがほとんどありませんでした…
結局のところ、CPUは製品ページに記載されているMT6580ではなく、さらに古いMT6582でした。MT6582は偽iPhoneXより前に分解した怪しいスマホにも採用されていました。2013年の第3四半期に発表されたチップで、Android 4.4時代に良く使われたチップのようです。実際、製品ページの下の方を見てみると、製品ページに書いてあるAndroid 9搭載というのはFakeで、Android 4.2が入っていることを示唆するコメントも見られます。
MT6582の隣にあるのがKingstonのeMMCとLPDDR2 SDRAMを1つのパッケージにまとめたeMCPの08EMCP04-NL2AV100です。データシートはありませんでしたが、"08EMCP04"まで品番が同じ姉妹品の資料や、Baiduで検索するとヒットする部品販売店のページから、8GBのeMMCと4GbitのLPDDR2 SDRAMを集積したICだということが分かりました。8GBは製品ページの説明通りですが、4Gbit=512MBになるので、RAM容量に関しては製品ページ記載の"1GB"は間違っていて、QCシールに書いてあった"512"が正解ということになります。
MT6582とeMCPの下にある2つのICは品番を特定できませんでした。2つのICのうち、右側のICにはバッテリー端子の+側が直結されていることからバッテリー充電ICだと思われます。左側のICは真上のインダクタが接続されていることからDC-DCコンバータICだと思われます。
MT6582以外のMediaTek製のICを見ていくと、PMIC(電源管理IC)としてMT6323、WiFi/Bluetooth/GPS/FMのRFフロントエンド(2.4GHzなど、通信に実際に使われる高い周波数の信号を扱う部分だけを切り出した機能ブロック)ICとしてMT6627、2G/3G信号の送受信ICとしてMT6166が搭載されています。これらのICはMT6582とセットで使う前提のICなので、前に述べた怪しいスマホでも使われていました。チップのマーキングを見ていくと、MT6166以外は2014年、MT6166は2015年の製造のようでした。ちなみに、怪しいスマホに搭載されていたMediaTekチップのうち、MT6582とMT6323は2014年製造、MT6166とMT6627は2013年製造のようでした。
残る大きめの2つのICは中国OnMicro(旧HunterSun)のHS8358とHS8684です。どちらのICも偽iPhone Xにも搭載されていたICで、HS8358は3G向け、HS8684は2G向けのパワーアンプICです。OnMicroの沿革を見ると、2019年にNB-IoT向けパワーアンプICがMediaTekのQVL(Qualified Vendor List:動作確認済みメーカーリスト)に入った旨が記載されています。おそらくですが、2G/3Gでも同様にQVLに入っていて、MediaTekのチップと一緒に使われることが多いのではないかと思います。
残りの部品のうち、左上の3つはGPS/WIFIアンテナへの端子のそばにあることから、GPS/WIFI関連の信号の切り替え・電気的整合を取るためのデバイスだと思われます。唯一、"GG"とマーキングがあるICについてはFairchild(現On Semiconductor)のシングル・2入力ANDゲートのNC7SZ08のように見えますが、何に使われているのかは分かりませんでした。隣の”G1ZC”と書いてあるICを制御する信号を作るために使われているのかもしれません。
右側の"Unknown LGA x2"としたICは、品番こそ解明することは出来ませんでしたが、MT6166から伸びた配線がここに入る、HS8358へと入っていくことや、検索して出てくる他のMT6166を使ったスマートフォンの回路図を踏まえると、送信信号と受信信号を分離・混合するのに使われるデュプレクサだと思われます。
メイン基板の調査を一通りした後に、基板の端部をやすりで削って銅箔部を露出させて基板の層数の調査もしました。写真の通り6層基板のようです。また、パターンを見たところ、ブラインドビアがあるようなのでビルドアップ工法(中心の2層の上下に1層張り合わせるごとに穴あけ・メッキ加工を行う工法)で製造されているようです。
リアカメラを調べる
さて、メイン基板の次はリアカメラです。
リアカメラのフレキシブル基板には"XR-2755GT033-D1308-1"と書いてあります。カメラモジュールの場合、フレキシブル基板にイメージセンサーの型番に関するヒントが含まれていることが多いです。"GT033"はここまでの分解でどうやらこのスマホの内部型番のようだということがわかっていますので、"2755"か"1308"あたりがイメージセンサーの型番だと当たりをつけ、調べてみると案の定、中国GalaxyCoreがGC2755という1/5インチ・フルHDのイメージセンサーを出していることが分かりました。おそらくこれが正解だろうと考えつつ、分解を進めました。
カメラモジュールはレンズ部、レンズマウント、フレキシブル基板の3つに簡単に分解できました。レンズ部はネジになっていますが、フォーカス固定のために樹脂で固定されていました。少し強く力をかけてやると、固定が取れ、後はネジを外す要領でレンズを外すことが出来ました。レンズマウントとフレキシブル基板は接着されているだけなので、センサを割らないように気をつけながらフレキシブル基板をはがしていくことで分離できました。
その後ヒートガンで加熱し、イメージセンサーを取り外すことが出来ました。700円アクションカムの分解の際に出てきたGalaxyCoreのGC0309のように、チップ内に型番が書いてあるといったことはありませんでしたが、裏面の端子配置やサイズがGC2755のデータシートに記載のものと完全に一致しているので、GC2755で間違いないと思います。最初に書いたように、GC2755はフルHDのイメージセンサーなので、約200万画素のイメージセンサーということになります。製品ページではリアカメラは500万画素、と書いてあったので、ここも間違っていることになります。
フロントカメラを調べる
さて、リアカメラの次はフロントカメラです。こちらも同じ要領で、"2385"で調べたところ、GalaxyCoreのGC2385という1/5インチ・1600x1200Pixelのイメージセンサーがあることが判明したので、おそらくそれだろうと予想しながら分解しました。
こちらも分解の上ヒートガンでフレキシブル基板からイメージセンサーを取り外し、センサ単体を観察しました。やはり端子配置やサイズから、こちらもGC2385とみて間違いなさそうです。GC2385は1600x1200Pixelということなので、こちらはおよそ200万画素ということになり、製品ページの謳い文句通りのスペック、ということになります。
所感
メイン基板が非常に小さく、ほとんどコネクタを使わずにはんだ付けで他のフレキシブル基板と接続されていたり、部品が片面実装であったり、USBポート用に別途基板を用意するのを嫌い本体上部にUSBポートを持ってきていたりといった様々なコストカットを実現する努力が見えるスマホでした。
正直なところ、それでも4000円を切るというのは驚きですが、基板上の製造年月日やバージョン番号を見るに、メイン基板自体はデッドストックを持ってきて作っているというわけではなく、最近でもまだどこかに需要があり、それに応えて基板を設計・製造しているものと思われます。一方、搭載されているMediaTekのICは製造年が2014年~15年頃のようなので、IC自体はデッドストックを使っている、ということになりそうです。「基板は新造・ICはデッドストック」という組み合わせだと、2017年に購入&分解した、基板は2016年の設計、SDRAMは2001年製だったドン・キホーテのアクションカムを思い出します。
実はこれと同じタイミングで、少しデザインが異なる同じくらいの価格のスマホをAliExpressで購入していたのですが、そちらもやはり本体上部にUSBポートが付いているデザインになっていました。おそらく、今回のメイン基板は汎用スマホ用基板、中国語でいう「公板」として流通していて、こちらのスマホにも同じ基板が入っているのではないかと思います。なお、「公板」とそれを取り巻く中国・深圳のサプライチェーンについては下記の書籍に詳しい記載があります。
一方、ICを見ていくと、過去により高い値段で入手した怪しいスマホたちと構成はさほど変わらないということが分かります。MediaTekはスマホの心臓部となるCPUだけを押さえるのではなく、セットで使う電源管理ICや通信回路部のICなども提供し、「チップセット」を構成することでスマホメーカーが容易にMediaTekのICを使うことができるような体制を構築しています。今回の分解は以前の怪しいスマホの分解と併せて、MediaTekのICがチップセット単位で活用されているよい実例といえると思います。
製品全体としてはバッテリー容量、リアカメラの画素数、RAM容量等々、製品ページの記載と違うものが多々あるめちゃくちゃな製品でしたが、それでもケースにレンズの飾りを付けてまで某H社のスマホに似せていたり、本体上部にすべての機能を詰め込む努力がしてあったりと、複雑な構造で分解が難しいというのとは別の方向性で、分解していてなかなかおもしろいスマホでした。また、落ち着いて考えると、一時下火になったように見えた山寨スマホが、模倣のターゲットをiPhone Xのような海外製品からH社のような自国製品に変えて復活しているとも捉えることができます。まともに使う気は最初からまったくないというユーザーが世界にどれだけいるのかは分かりませんが、少なくとも私のような怪しいガジェット好きにとってはこの製品の存在自体がちょっとした朗報、という感じもしてしまうのでした。
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