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TKD 30th 30 Albums

不肖ながらわたくしTKD、5月5日にとうとう30歳になっちまいまして。
区切りのいい歳ですし、25歳の時にも下のツイートのような年齢になぞらえるまとめをしたので、2022年、30歳で選ぶアルバム・シングル・EP30枚を選出しました。評価というより「30歳男性社会人」の日々を泳いでいくたった今響いているものは、というチョイス。
今回は1アーティスト1枚、ベストアルバム除外という縛りを設けて選出しました。ではでは、25歳の時のを振り返りつつ、順不同でガガッとやってくぜ。アルファベット順でも、リリース順でもないぜ。

1.SOLEIL「My Name is SOLEIL」2018

収められた手練れ達によるオールディーズポップスへの愛に溢れた楽曲に心動かされまくった。情報量が多い楽曲もそりゃ魅力的だけど、シンプルで短くてキラキラしてキュートな楽曲もそれに勝らずとも劣らず魅力的。当時14歳のそれいゆの歌声も、未完成がゆえに持つ輝きに満ちている。

2.lyrical school「WORLD'S END」2018

どの曲も超キャッチーで「世界の終わり」というタイトルに掲げたテーマと、楽曲に現れている「夏」のイメージが上手く溶け込んで全体として、何とも言えない切なさを生み出している。もうこのアルバムを作った体制は終わりを迎えたけれど、「とくかくパーティーを続けよう ずっとずっとずっとその先も「今」が続きますように」とリスナーが思える「今」を作ってくれた彼女たちに惜しみない拍手を。

3.清春「夜、カルメンの詩集」2018

清春というミュージシャンは飽きっぽく、衣装を着替えるが如く長いキャリアの中で次々に色んな音楽をバンド・ソロ活動で試してきた。そして50歳という年齢を前に見つけた「衣装」がアコースティックかつスパニッシュなサウンドだった。昔のような特徴的なビブラートはこのアルバムでは皆無だが、ハスキーな高音と節回しで今の「清春」というものを提示している。今の清春の旨味を百二十分に味わえる素晴らしいアルバム。

4.cero「POLY LIFE MULTI SOUL」2018

聞けば聞くほど体に馴染んでいく感覚もありつつ、「Waters」は聞けども聞けども掴みきれず、だからこそ尚聞くという調子で。元々器楽的技術の事柄に関する理解を差し置いて享受していたが、ライブで体感して、このアルバムのテーマに触れるというのはいい経験だった。『Obscure Ride』の名盤さも理解できるが、リズムオリエンテッドなこちらに個人的な趣味として軍配が上がるかな。

5.桜エビ~ず「octave」2019

俺は「アルバム」が聴きたいのか、「イイ曲が10曲前後まとめられたもの」を聴きたいのか、どちらなのか。実際12か月連続配信リリースした楽曲群に新曲を一曲プラスした作りになっているこのアルバム。一応全体のテーマというか、ムードとして歌っている彼女たちと同世代が過ごすシーンなどを描いたものになってはいる。いつまで経っても、一枚で綴るストーリー以上に一つ一つの輝き重視なセレクトなのだと思う。どこを切り取っても煌めいてる。

6.小沢健二「So kakkoii 宇宙」2019

ずっと、『LIFE』かこっちか迷い続けている。こっちの方が、音の鳴り方やメディア出演時のパフォーマンス(リズムトラックをiPhoneから鳴らす等)込みで今の自分には響いている。自分の周りにも子宝に恵まれた家庭をもつ友人が増えてきて、多義的な「子ども」「次世代」という存在への意識が強くなってきたこともこちらを選定した要因になる。

7.THE NOVEMBERS「ANGELS」2019

シャウトとインダストリアルな音像とが相まって暴力的なまでの揺さぶりと陶酔を感じるのだけど、その側面だけでなく、そこに指す一筋の光明のような「Everything」「CLOSE TO ME」といったポップな曲を共存させているのが類稀な点ではないか、と思う。先述した暴力的なまでの音は、突き放すためのものではなく、俺らがよりよく関わり合えればと思う故にぶつかり合うことで生まれる衝撃音。この後、より音が洗練されていくが、この歪みこそ、と思う。

8.RYUTist「ファルセット」2020

誰もが春を奪われたのが2020年だった。過酷な状況こそ輝きを増すのが優れたポップスの皮肉。これは新潟から失われた春を笑顔で届けてくれた四人の「GIRLS」によるポップアルバム。豪華な提供曲者が並んでいるが、散漫な印象を受けないのは、四人の声を核としているから。もしかしたら、これが彼女たちがポップさを保ちつつエッジィなクリエイトを行える臨界点かもしれないなどと不安もありつつ。

9.Dos Monos「Larderello」2021

15分程度という収録時間でも、テレ東「蓋」とのコラボを踏まえたコンセプトで統一されており、「アルバム」的聞き心地が担保されている。固有名詞や引用は甚だしいが、衒学的ではないし、野球からの引用もあるなどナードぽくないのも気持ちがいい。トラックはアブストラクトながら、どの曲もキャッチー。オールディーズ好きだから、3分以内のキャッチーな曲並んでたらイエーイだし、この短さはありがたかった。

10.Base Ball Bear「C2」2015

思い入れだけでセレクトすると『新呼吸』なんだけど、今の自分に響くのはこちら。ちょうどコンポーザーの小出祐介が30歳の年にリリースされたからだろうか。社会への目配せや「どうしよう」もなくあふれてしまう通り過ぎたはずの青春性、これからの自身の指針を語るような詞に共振する感覚がある。リズム隊が強固となってファンクネスが強くなった楽曲群が今は自分にマッチしている。

11.L'Arc~en~Ciel「True」1996

多くの人に受け入れられる大衆性を持ちながら、それまでに培ってきた美的感覚などは一つも削られていない、いつ聞いてもウットリするようなアルバム。毎秒「ラルクのアルバム一枚」は刻々と変わってしまうので、打ち込んでいるこの一秒間の俺は「True」を選択したということです。もう2022年には新アルバムのリリースは見込めなさそうで意気消沈です。

12.NUMBER GIRL「NUM-HEAVYMETALLIC」2002

ファストチューンのギターのジャキリ具合、ダブを通過したことによるミドルチューンの音響がビシビシ響く。2020年、ステイホーム期直前に密集したZepp Fukuokaのフロアで浴びた彼らのサウンド、宝モンじゃんかよ~。ナンバーガールとしての活動はまたストップするらしいけど、イイモン見せてくれてあざっす!カンパイ!てな気持ちです。

13.SADS「THE ROSE GOD GAVE ME」2001

佐野元春は人生に必要なものという質問に「ユーモアと官能」と答えたという。このアルバムに表されているのは暴力と官能。それを持ち前のメロディセンスで練り上げている。復活後のサッズがこの時期のヘヴィネスをアップデートせんとする活動をしていたが、暴力と官能とメロディ、その三点のバランスでこのアルバムに比肩することはかなわなかった。

14.岡村靖幸「家庭教師」1990

ベボベLOCKS!の「B-CD」のコーナーで「あの娘~」に出会い…という流れで聴き始めた。俺はこのアルバムを聴くと羨ましくなる。その「『君』への思い」の開陳ぶりに。リビドーの存在や、不安感、虚勢、奉仕…それらを歌唱と肉体の躍動を持って100%のその先まで伝え切ろうとする姿にやられてしまう。

15.黒夢「CORKSCREW」1998

楽曲に並ぶ言葉の数々は清春の本心というより、その時の(楽曲の/ファッションの)スタイルに合わせた薄っぺらな言葉かもしれない。年間100本以上の肉体を酷使するようなライブを通過した尖った歌唱も、「その方がカッコイイから」くらいなものかもしれない。30歳にもなるとそう思えるようになってきた。しかしこの速度と言葉でなくては救えない心の影のようなものがあったのも事実。今だってそれは変わらない。

16.佐野元春「VISITORS」1984

作家論的に作品の評価をするのはなんだかなあと思ってしまうのだけど、「昔のピンナップは捨てて」しまうかごとく異郷に向かい、あらたな文化の潮流に身を委ね、オリジナルな表現を作り出した佐野元春の奮闘ぶりが楽曲からどうしても伝わってきて、その熱量にやられてるのだろうと思う。しっかし、この2022年、このアルバムにも比肩しうるアルバムを作るんだからスゲエよなあ。「鋼のようなwisdom」は未だ錆びてはいない。

17.山下達郎「FOR YOU」1982

こういう言い方は皮肉にしか聞こえないかもしれないが、超々高品質な商品だなと思う。「売れる」ためにこのアルバムを作って、実際に「売って」、その後の彼の活動につながってるんだろう。だとして、その「商品」には山下達郎という神経質な職人の神経が隅々まで張り巡らされている。「SPARKLE」のギターカッティングも、「YOUR EYES」の多重コーラスも言葉にできぬほど圧倒的。

18.ももいろクローバーZ「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』」2012

10年も経つと、ももクロに対する熱というのもしっかり冷め、一定の距離を取りつつ聞いてる感じで、かつ新曲への驚きもどんどん減ってはいる。しかし、この黄金のトライアングルと呼ぶべき三曲の輝きようよ。俺が彼女の楽曲に欲しているものが、この三曲に詰まっている。というか、この筋のアイドル楽曲に求めているものが、と言い換えるべきか?

19.THE PREDETORS「牙をみせろ」2008

高校の時に聞いてたわ~懐けぇ~キャッチーィイ~てなチョイスであるのは間違いないのだけど、ニルヴァーナオマージュな楽曲によるバンドしてえ的な始まりでできたバンドで。その肩の力が抜けてる感じとか、「マジ」ではない感じが、今でも聞きやすく感じられる。

20.宇多田ヒカル「BADモード」2022

30の年に聞いた宇多田の新作。全部シングル曲で切れる楽曲じゃん。というか、実際配信とかでシングル切りまくってたのか。リアルタイムで宇多田ヒカルに触れてきたのに、ここで初めてビターッとマッチした。どこから聞いてもメッチャいい。音の鳴り方も最高。

21.The Mirraz「夏を好きになるための6の法則」2013

Mステの出演から時は流れて・・・という2022年ではありますが、ここに収められた熱量は未だにグッとくるものがある。初期はもう少し皮肉が中心だったが、メジャーに乗り込むこともあってか、世界変えてやるぜ的な勢いがみなぎっている。いまだに(最新の)アクモンのパロディみたいな曲してるのも含めて面白い存在だよね、巻けないで!ミイラズ!

22.大滝詠一「NIAGARA MOON」1975

ギリギリまでロンバケを選出してたけど、変更。30になった今の生活の中じゃ、ロンバケのリゾート感や、たおやかでありながらも拘りきった神経質的な音世界に身を委ねるのが少し辛い。大滝氏は自身の楽曲を「ドライ」と「ウェット」に二分してたが、「ドライ」に振り切った、おふざけに満ちたこの楽曲群の方が肩の力抜いて楽しめる。

23.森山直太朗「黄金の心」2014

軽みとマジのバランスがちょうどいい…。絶対的な歌唱の持ち主なんだから、マジなのだけ歌ってもいいんだろうけど、この軽みなんだよなあ。年始に見たライブでも「正月の時期にぴったりの曲を・・・」と「さくら」を歌い始めたっけ。ふざけすぎなんだよな。でも、ふざけがないと。

24.Mr.Children「DISCOVERY」1999

桜井和義29歳のアルバム。ミスチルで一枚選ぶなら長らく「I♥U」だったのだけど、長尺の曲でジリジリと淡々と響かせてくるムードや、社会や周囲の他人への皮肉や、こぼれおちる君へのシンプルな想い、疲労感、ジャケットの四人の表情、たった今の俺にはビシビシ響く。

25.はっぴいえんど「風街ろまん」1971

このアルバムが日本ロック史上一番のアルバムかどうかは分からないけど、このアルバムほどあっちゃこっちゃ色んな事やってて、詩情溢れながらも同時代の風景をスケッチしきってて、ダレずにサクッと終わるアルバム、そんなに無いよなと思う。

26.XA-VAT「艶℃」2011

疲れてる時、歌詞に意味があるとさらに疲れてしまうときがある。楽曲はかなり肉体に訴えかけるバキバキのダンスチューンがそろっているが、「レスザン零視 バベルの先 浮き足ジョジョ立ち」だもん、頭カラッポで踊れてサイコー。

27.cali≠gari「10-Rebuild-」2019

俺はcali≠gariは元の「10」から入ったのだけども、フザケてる歌詞なのに曲はクールでカッケェのに刺さってしまって。このクオリティのリミックス+新録盤が「この雨に撃たれて」の付属盤で買った人しか聞けないってさ…!全然ノスタルジー感じさせるだけの作品じゃない、あの頃聞いてた作品がここまで「今」のモノになるとは…!と驚かされた一枚。

28.私立恵比寿中学「でかどんでん」2018

『中人』から時は流れて…。この選出もももクロと結構似た感覚によるものかな。アルバムもいいけど、「・・・」となってしまうおふざけ曲が…。このシングルは「熟女になっても」という超名曲もあるし、ユーモアある楽曲から、「響」のようなストレートな楽曲まで4曲に旨味がギュッと詰まってる。

29.口ロロ「ファンファーレ」2005

一曲目の「パーティ」が院生時のモラトリアムな雰囲気を思い出させるんだよなあ。「ずっと続かないことは分かってるし、ずっと続いてほしいというわけでもないけど、なまじ楽しいし」みたいな、甘い歯切れの悪さを味わわせてくれる。夏の夜をラップで駆け抜けていく「 Twilight Rase 」も強烈に好き。

30.w-inds.「20XX"We are"」2021

このジャケットのようなスーツとコートが似合うシャキッとした大人になりてえと思うよ。楽曲もスマートで超イカしてる。二人になるという大きな変化を経て作られたアルバムということもあり、ただスマートなだけではない、ビターな質感も今の自分に響いてるのかもしれない。

やっぱ20代より一枚を何度も!とか月に何十枚も聞きまくるとか、そういうスタンスでは生活できなくなってはいるけど、30代も音楽含め色々楽しみたいな~。

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