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ブルマ事件勃発

人間の肉体のピークは20歳前後だと言われる。高校時代までは陸上部に所属していた私だが、その後はドラム一色の生活になり18歳から現在に至るまで運動らしい運動を一切せずに16年もの歳月が流れた‥‥

何もしなくても肉体は衰えていく上に、無運動生活をひたすら守り続けてきた甲斐あって、肉体の衰えるペースは目を見張るモノがあり、今では階段を登り降りするだけでもぜーぜーいう始末。養命酒や求心のCMを見る度に買おうかどうか真剣に悩む。
このままのペースで行くと、座っているだけでぜ ーぜー言い出すのではないかと心配になってくる。

体力的に絶頂期だった高校生の頃。朝は自転車で10Kmほど学校まで猛スピードで通い、その後、体育の授業でラグビー 、昼休みは友達とサッカーをし、夕方には部活動で2時間ほど走り込み。そして、また自転車で10Kmの家路を猛スピードで帰っていく。一体何キロカロリー消費してたんだと思うくらい動き続けていたのが遠い過去の話である。

そんな、ストイックな高校時代。ある日の体育の時間のことである。高校生にもなると、体操服に着替える部屋は男女別々で、私のクラスの教室では女子が着替える事になっていた。
男子は隣の教室で着替える。
授業が終わって、制服に着替え、自分の教室つまりは、女子が着替えていた教室に戻り、席に着いて次の授業で使う教科書を取り出そうと机の中に手を突っ込んだ時である。

手に教科書でない感触が当たる。教科書や筆記類ではない、ふんわりとした布のような感覚。

私は、タオルでも入れておいたか
な??と思いそのふんわりしたモノを取り出すと、それはなんと女子の「ブルマ」ではないか!

とっさに机の中にもう一度隠し、なぜブルマがこんなところに入っているのか考えに考えるが、思い当たる節がない‥‥

もしかして、自分は夢遊病で寝ている間にブルマを盗んでしまったのか‥‥いや、確かにさっきまでラグビーをしていたではないか‥‥
それとも、何者かの陰謀で私を痴漢扱いにして学校から追放しようとしているのか‥‥


あれこれ考えている間に、教室には女子も既にいる。私がブルマを所持しているという事実を他人に見られるのは非常にマズイ‥‥

まだ高校生活で彼女もできていないし、キッスさえしていない。あんなことやこんなこともまだしていないのに、冤罪で高校生活にピリオドを打たねばならなくなっては、バラ色の青春が今日で終わってしまう。そう考えた私はその日の放課後までブルマを机にそっとしまったまま、1日を過ごすことにした。

それにしても、これは誰のブルマなんだ‥‥頭の中はブルマの事で一杯で授業どころではない。

そうこうしているうちに、放課後になった。
女子がいなくなったのを見計らって仲の良い友人数人にブルマが机の中にあると言う事を打ち明ける。

全員大興奮である。思春期真っ盛りの我々男子にとって女子のブルマを目の当たりにする機会など、この先もこの後も絶対にない事である。ひとつのブルマに何人もの男子が群がる姿はなかなか滑稽でシュールな場面であった。

しかし、肝心の「なぜブルマが私の机の中にあったのか」という謎が残ったままである。

ある友人の仮説では、
「そのブルマの持ち主は私に恋心を抱いており、ブルマで気をひこうという作戦に違いない」と言う。しかし、女子高生がそんなに大胆なお色気作戦をしてくるものだろうか。
むしろ、ブルマをそっと机の中に忍ばせることがお色気だと思っているのなら、それは大きな間違いである。

別の友人の仮説では、
「自分の机と間違えて高松の机に入れたんじゃないか」と言う。まあ、妥当な答えだが、ブルマを机に直に入れるだろうか‥‥という疑問が残る。

色々と勝手な想像を巡らせ、ひとしきり盛り上がったところで、この話題にも飽きてきて皆帰ったのだが、結局は何も解決することなくただ手元にブルマが残るということになった。

「部屋とブルマと私」である。「Yシャツ」が「ブルマ」に変わっただけでこんなにも卑猥なタイトルになる。

それにしても、このブルマどう処理したらいいものなのか…
学校の落とし物へ届ける事も考えたが、やはり冤罪と取り違えられる可能性もなきにしもあらず…

もう一度、ブルマと真っ向から向き合ってみようと、じっくりとブルマを観察していると、なんと名前が書いてあるではないか!

どうしてこれに早く気が付かなかったのか…そして、私は誰もいない夕方の教室で1人、本人の机の中にブルマをそっとしまい込んで教室を出ていった。
それ以後、そのブルマの持ち主と話しをすると何だか恥ずかしい気持ちでいっぱいになった。

青春ってすばらしいなー。

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