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【ジェイの才能探訪#8】才能発掘⑤(IN“S”IGHTS)〜分かる、それ嫌だよね…〜

 続いての質問は、「あなたが絶対にやりたくないことは何ですか?」の“ Scorn診断”である。拒絶したい・究極的な苦手なことを知り、それらを避ける行動が才能に繋がったり、活躍できる環境を知ることができたりする。子ども達はどんなことに苦手意識があるのだろうか?

 始めに、最も多かった回答を紹介する。
「絶叫系のアトラクション、お化け屋敷には行きたくない!」
 子どもらしくてほほ笑ましい回答だ。これらは単純な恐怖体験であるため、才能との関係は低そうだ。

 強いて結びつけるなら、安全性(心理的安全性)が担保された場面で才能が発揮できるということだろうか。まあこれは、全ての人に共通することであろう。

 ちなみに、他には「飛行機に乗ること。ホラーゲーム。バンジージャンプ。高いウォータースライダー。激辛早食いはしたくない。」があった。激辛早食いってなんだ?


 次いで多かった回答は「全校生や大勢の前で発表すること。」である。
 理由を聞いてみると、緊張する。失敗が大々的になることが嫌だ。という理由が多かった。なるほど頷ける。誰しも失態は晒したくないものだ。

 さらに、これまで大勢の前で発表したことがあるのか?失敗したことがあるのか?と聞いてみた。すると驚いたことに、失敗した経験はおろか、全校生の前での発表経験をした子どもはほとんどいなかった。つまり未知の経験に臆して、想像で拒絶していることが分かった。

 失敗を恐れる気持ちは分かるが、個人的に非常に残念な気持ちにもなった。実際に発表してみたら上手く行った。心配は取り越し苦労だった。案外、発表する・プレゼンする才能があった。と気づくことができたかもしれない。

 少なくとも回答していた子の中には、教室の中では大きくハキハキと発表できる。論理的に事象を説明できる。練習さえすれば上手に発表できる子が多くいた。これらの子が、やったことがないというだけで、才能が埋もれてしまっていると想像すると残念で仕方がない。未経験が才能に蓋をしているのではないかと思えた。

 これの問答を機に、子ども達の自信が喪失しない範囲で、なるべく多くの体験・経験をさせてあげたいと感じた。そういった活動の中で、今まで気づかなかった才能、自他ともに認められなかった才能を迎え入れられることができ、新たな自分との出会いがなされるのではないかと思った。


 続いて注目すべき回答は「友達を傷つけること、友達を失うことは絶対にしたくない!」である。この回答から友達を思いやること、交友関係を大切にしていることが分かる。

 このことは、才能というより、才能の発動条件に関わることだと分析した。友達のためだったら積極的に活動できる。率先して動ける。“友達”というキーワードを軸に才能発揮ができるのではないか。この子達にはそうアドバイスした。


 小学生らしく、勉強に関する回答もあった。「初めから算数の勉強は絶対したくない。読書感想文などの長い文章を書きたくない。楽器の演奏は無理。」などである。

 完全なる苦手意識からくる拒絶であろう。苦手→好きに意識を変革することは非常に難しい。苦手な勉強を補習すればするほど、苦手という思いは深まるばかり。アプローチすればするほどドツボにハマる。むしろ、これらの苦手意識は矯正しないというのが自論である。

 とはいえ、放っておくのも教師として問題なので、考え方や向き合い方が変わってくれたら良いな…というアプローチ方法にした。例えば、“算数の中でも図形分野は得意そうだよね。”とか、“普段、自分の思いや考えを喋ることはよくしているよね。じゃあ先ずは、誰かに語りかけるように文章を書いてみたらどう。”などである。その個人に合った方法、丁度良い向き合い方を模索することで、その子なりの最適解を見つけていけるのではないかと考えた。ただこれは楽しくもあり、難しくもある。


 すでに、自身の才能の特性に気づき始めている子もいた。
「単純な作業はしたくない。」
 回答だけ見ると、鼻につく感じがするが、実際この子は繰り返しの作業が苦手で、教師の話もちゃんとは聞けない。だが、学力は高く、発想も豊か。事象に対する質問の切り口が鋭く、会話していてとても楽しい。この子へのアドバイスは単純明快である。“単純作業はさっさと終わらせるなり、他人に任せるなりして、伸び伸びやれ!”である。ただ、自由ばっかりにできないのが学校現場である。

「人のためにならない仕事はやりたくない。」
 この子は何でも言われたことは出来てしまう、いわゆる優等生タイプ。教師側も信頼を置き、多くのことを頼んでしまっていた。ただ、この回答から推察すると、世の中にとって有用だな、人の為になることだな、という活動にエネルギーが湧くタイプである。きっと今後も多分に頼まれごとを引き受け、期待に応えようとするのであろう。私のアドバイスとしては、“自分のやりたいこと(欲望)も大事にしてね。”である。


 最後に「やりたくないことはありません。何事も頑張ればどうにかなる!」と回答した子を紹介しよう。
 素晴らしいマインドで、殊勝な心掛けに頭が上がらない。実際に心優しく、集団から外れている子や、浮いている子にも話しかけてくれていた。雰囲気の違和感にも敏感で、いつも平和や平穏を保とうとアクションしてくれていた。

 上記した子と似ていて、友人関係に関して多くの頼み事をしてしまっていた。しかし、中学校に進学後、しばらくして不登校になってしまっている。他人に心のリソースを傾け過ぎてしまい、自身の心の元気が無くなってしまったのだろうか。再び、優しい笑顔を振りまく元気な姿になってくれることをただ祈るばかりである。


【まとめ】
・心理的安全性が担保できている場面でこそ才能が十二分に発揮出来る。
・その安全性を創造するためには、子ども達に自信を持たせることが重要である。
・教師や大人が“こんな才能ありそうじゃない!?”と認めてあげることで、子ども達の自信が湧く。
・苦手を矯正するだけでなく、アプローチ方法を変えることも有効である。
・才能や特性を知る上で、ある程度の体験・経験も必要である。

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