私の読んだ100冊_002『学校を出よう!』

二回目は土日辺りで頑張れば良いかと思っていたのだが、興が乗ったので書ける日にはガシガシと書いていこうと思う。

今回感想文のようなものを書くのは『学校を出よう!』。タイトルだけならあまりピンと来る人間も多くないのではないかと勝手に思っているのだが、作者はあの谷川流さんである。それでも「どの?」となった人でも、代表作なら名前を聞いたことがある人も多いだろう。『涼宮ハルヒの憂鬱』の原作者である。

ちなみに、二度のアニメ化を果たした『涼宮ハルヒの憂鬱』と、正直知っている人があまり居なさそうな『学校を出よう!』であるが、作者のデビュー作として同時刊行されている同期である。さらに言うと、電撃文庫では『学校を出よう!』の他にも何冊か作品を出しており、確か自分は一通り谷川作品は目を通しているはずである。雑誌連載のみで単行本未収録の話など、一部例外はあるが……。

他の作品も100冊感想文のネタが切れ始めたらポツポツと語ることになるかもしれないが、個人的にはこれが一番好きな作品であるため、せっかくなので真っ先に記録を残しておこうと思う。

と言いつつ、この作品は紹介が非常に難しい。なぜかと言うと、全六巻(続きの構想もあったらしいが最早望めまい)のうち一巻と二巻は実質世界観を共有している番外編のような感じで、三巻から主人公ポジションが固定されている。しかし、一巻を読まないと三巻以降が繋がらない(二巻だけは読むに越したことは無いくらいのポジション)というややこしさ。説明してみようとして思ったが、一体何にハマっていたのか……。

ざっくりした世界観としては、思春期になると一部の男女に超能力が備わり、二十歳になるぐらいまでには大体その力は消えていくのだが、政府としては隠し通しておきたいらしく、能力に目覚めた子供たちを山間の寮付きの学校で生活させて能力が消失するのを待つ日和見対策を講じていると言った感じ。

そして、タイトルの通り軟禁されている学校からの脱出を試みるのが一巻の主人公なのだが……、二巻はその学校が出てこず、三巻以降は主人公が変わるため、そもそも学校から脱出しようとかそんな話ですらなくなる。

じゃあこの作品の何が面白いかというと、結局は登場人物たちの言い回しや、作者の頭の良さに起因するのか色々な物事への考察だったりするのかなと。同様の理由で『涼宮ハルヒの憂鬱』好きではありますが、こちらの方がそうしたエッセンスがより強いかなと思う。から、万人受けしなくてそんなに人気が出なかったのかもな……。

あとは一巻を読んだタイミングが結構強烈な印象を残している体験と結びついているから忘れがたいというのがあるとは思う。転校して離れ離れになった友人に会うため、バスに揺られて一時間。札幌苫小牧間の高速バスの車内で暇つぶしに読んでいたので、否が応でもその記憶が引っ張り出されてしみじみした気持ちになる。

無限ループしているあるアイテム(ネタバレ防止)は果たしてどこから来たんだろうね? というオチもクソもないパラドックスみたいな問いだとか、オンオフできずに他人の心の声がだだ洩れて聞こえてしまうから植物に囲まれて過ごすのが好きなんだというキャラだとか、別に他所でも似たようなモチーフに触れられそうな物事のいくつかはこの作品で初めて触れたので原初という点では非常に強烈に自分の中に残り続けている作品である。

ちなみに、いつだったか弟におススメ小説をまとめて叩きつけた時にこの作品も二巻まで押し付けたのだけど、数年経っても本棚の肥やしにされていました……。売られていないだけマシか。

次回予告、萬屋直人著『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』

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