【10年後の未来をつくるトーク#7】人の数だけ普通がある|西川悟平さん(7本指のピアニスト)

ゲストに「7本指のピアニスト」として様々な活動に取り組んでいる、西川悟平さんにお越しいただき、広がる社会の多様性について“未来をつくるトーク”をしました。

西川さんは現在、ピアニストとして世界中で活動するかたわら、次世代を担う子へトークセッションを行っています。

15歳の時、音楽の先生が好きでピアノを始めた西川さん、先生の演奏に雷に打たれたような衝撃を受け、猛特訓の末、音楽大学のピアノ科に進学します。その後、海外の有名ピアニストに認められ渡米、格式あるリンカーン・センターで演奏をする機会を得ます。演奏を成功におさめた西川さんにはスポンサーがつき、アメリカンドリームを達成したかに見えました。

しかし、世界中からトッププレイヤーが集まるマンハッタンにて、プレッシャーを感じ続け、ジストニアという病気を患ってしまいます。ジストニアとは、身体が意思とは関係なしに動いてしまう脳の病気です。西川さんは、ピアニストには欠かせない指が無意識に内側に曲がり、自由に動かなくなりました。「もう二度とピアノはひけません」そう5人の医師に告げられた西川さんは絶望のどん底へ。

その後、様々な業種を経験します。しばらくたったある時、幼稚園の子どもにピアノを弾いてとせがまれ、簡単な童謡をその時、動くわずかな指だけを使って弾いてみました。子どもたちは西川さんの指などお構いなしに流れてくる音にだけ反応して喜んでくれました。「別に動く指だけ使って弾けばいいんだ。動く指があるのはありがたい」西川さんに2回目の雷が落ちました。

それから長い時間をかけて練習し、ついに1曲弾けるようになりました。1曲2曲と弾ける曲を増やしていきます。指も7本まで動くようになりました。「動かない指やジストニアを憎んでいた時はいいことはひとつも起こらなかった。まだ動く指やいろんなことに気づかせてくれたジストニアに感謝するようになった瞬間にたくさんのチャンスが舞い込むようになりました」この経験から西川さんは「チャレンジする中で、壁にぶつかっても泣くのは1日目まで、2日目からはチャンスだと思ってほしい」と語ります。失敗した分、心の引き出しが増えていくのだそうです。

配信の後半ではそんな西川さんにSDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」から、10-2は2030年までに誰にでも可能性があり、その可能性を発揮できる社会にするというターゲットについての考えを聞いてみました。西川さんは自身がニューヨークに滞在していた時の経験から自分の主張より、まずは冷静に相手を理解しようと努めることが大切だと考えています。「自分が、自分が」と話すより、まずは相手へ問いかけるようにしています。

多様性が尊重される時代に突入し、常識が常識ではなくなるようになりました。だからこそ、当たり前のことに感謝しつつ、自分も相手も受け入れてみませんか?