見出し画像

農業高校生だからこそ、できる支援がある。- ひとり親世帯へ届けたい

農業版生徒会とも呼べる”農業クラブ本部”。自分たちの手で栽培した野菜や校内フードバンクで集まった食品を寄付するなど、地域のフードバンクと連携した支援活動を実践している神奈川県立中央農業高校の農業クラブ本部のみなさんにお話を伺いました。

説明2

ー 全校生徒に声をかけて校内でフードドライブ活動をしているんですよね。

私たちは" 校内フードバンク ”と呼んでいます。年2回、職員室の前などに食品を入れてもらうボックスを設置しています。教室にポスターを貼って周知したり、私たちがホームルームの時間にクラスのみんなへ食品の寄付を呼びかけたりしています。

ボックス

感動したのが、周知期間以外にもボックスを置いていたら、入れてくれる生徒がいたんです。校内での理解がちょっとずつ広がってきているなと感じています。

食品

<インタビュー時は周知期間外だったが、中をのぞくと食品が入っていた>

ー なぜ、校内フードバンクを始めたんですか?

もともとは、養鶏部が、栽培したお米をフードバンク(NPO法人)に寄付していました。養鶏部と農業クラブ本部の顧問が同じ先生だったことがきっかけで、農業クラブ本部でもフードバンクを手伝いたいと思い、2年前からフードバンクが行う食品の譲渡会場で運営補助を始めました。

フードバンクは、SDGsの17目標のうち、7つの目標の実現に貢献できます。実際にフードバンクの譲渡会場に足を運び、多くのことを学ばせていただく中で「この活動を家族や友達にも知ってもらいたい!」と思い、校内フードバンクを始めました。活動を通して、ひとり親支援に取り組んでいます。

ゴール

※フードドライブやフードバンクについて、詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。

ー 自分たちで育てた野菜も寄付しているんですよね。

去年は、譲渡会場にナスやピーマンを持っていきました。今年は、春先に玉ねぎを持っていき、もう少しすると、大根とサツマイモを持っていく予定です。

譲渡会場で直接お渡した方から「すごい。こんな野菜も育てているんだね!」など声をかけてもらい、喜んでいただきました。授業で育てた野菜を、自分の足で持っていき、直接お渡しすることで、元気もお渡しすることができて嬉しいなって、いつも思っています。

自分もほしいけど、僕たちが育てた野菜で人の手助けができるなら、あげたい。

ー 本来は、育てた野菜を自宅に持ち帰り、自分で食べられることができるんですよね。

はい。そうですが、フードバンクに生鮮食品が不足していることは、実際に現場を見て知っていました。自分で育てた野菜はほしいんですけど、このアイディアが出た際には進んでやりたいと思いました。

大根

<この大根たちの一部も規格外品は、譲渡会場へ持っていく予定とのこと>

― (先生に対し)活動を続けていく中で変化を感じていますか?

(先生)現在、譲渡会場での運営補助に月3回ほど行っています。活動当初は、手伝いに行く人を募っても、手を上げるのは1,2人の生徒だけだったんですが、今では生徒に声をかけると、運営補助の枠が埋まるようになり、行くことが当たり前になってきました。校内フードバンクの活動も自然と根付いてきています。

譲渡会場に受取りに来られる方は、ひとり親の方が多く、なかなか子どもを外に連れ出す機会がないので、高校生が遊び相手になってくれて、気分転換になったという声をいただいています。子どもたちが生徒へ「またきてください」と話しかけているのを聞いたこともあります。

大会賞状(集合写真)

各種大会での発表を通して、校内フードバンクなどの活動を全国へ発信。
令和3年7月には県内の農業高校の研究活動を発表する「プロジェクト発表・意見発表県大会」では日頃の成果が認められ、最優秀賞を初受賞。同年8月に行われた関東地区学校農業クラブ連盟大会令和3年度埼玉大会」に出場して優秀賞を受賞。
<大会賞状(集合写真)1列目(左から):女屋さん、相原さん、池田さん、細野さん、森山さん、小澤さん。2列目(左から):石川さん、髙橋(七渚)さん、遠藤さん、上里さん、髙橋(愁)さん、阿部さん>


― 校内フードバンク以外に、どんな活動しているんですか?

高校に隣接する特別支援学校にボランティアスタッフとして行ったり、コロナ禍前には羊などを連れていき、ふれあい動物園を行いました。他には、地元警察と連携して交通安全キャンペーンの実施や、高校の文化祭に農業クラブ本部として出展して、その利益をフードバンクへ寄付したりもしています。

― 農業高校を卒業したら、やりたいことはありますか?

高校では牛が生まれる瞬間を見たり、ここで搾った牛乳が殺菌処理されて、子供たちに給食で飲んでもらったりしました。そうした活動の中で、ただ牛を管理するだけではなく、地域や人と直接つながっているんだなと日々実感しています。

私が進学する酪農専門学校のある地域は、濃厚な牛乳を出すジャージー牛が有名です。そこの牛乳を飲んだ際に、私も酪農家として普及していきたいとの思いを抱きました。

画像7

<高校の中には放牧場もあります>

― 高校生にSDGsを身近に感じてもらうためには、どうしたらいいと思いますか?

SDGsの17個の大きなゴールがある中で、一つのゴールをもっと小さな取り組みにかみ砕いて知ってもらうことで、自分たちの身近な取り組みが実はSDGsに繋がっていることを実感してもらえるのかなと思います。

ー ありがとうございました。

画像1

<お話を伺った農業クラブ本部のみなさん。左から、遠藤さん、森山さん、池田さん、細野さん、女屋さん 、後ろにいるのが顧問の前田先生。+ TOP画像の阿部さん。>

農業クラブ室

農業クラブ本部とは
・農業関係の高校には、農業を学んでいる高校生が農業に対する理解を深め、学校行事や地域貢献活動などの各種取組を行う(学校)農業クラブがある(FFJ:Future  Farmers of Japan)。
・農業クラブ活動を取りまとめているのが農業クラブ本部。研究成果を発表するプロジェクト発表会の運営なども担っている。
・神奈川県立中央農業高校では、農業クラブとして、より専門的に学ぶ専門研究部(例:養鶏部、酪農部など)を設置している。

配置図

<敷地面積は約114,333㎡。生徒が広大な校地内を自転車で移動しているのが印象的でした>

■ 神奈川県立中央農業高校
神奈川県海老名市。明治39年に前身の愛甲郡立農業補習学校として創立し、昭和11年に県立学校となる。園芸科学科、畜産科学科、農業総合科を設置。
公式HP