ログローニョの聖マテオ祭(前編)
─ スペイン・ラ・リオハ地方 ─
ヨーロッパのワインのためのぶどうの収穫開始時期は、地域、ぶどうの品種によって異なる。
スペイン最大のワイン産地ラ・リオハ地方では、聖マテオの祝日(9月21日)から赤ワイン用のぶどう品種、テンプラニーリョ(Tempranillo)の収穫が始まる。
聖マテオの祝日の前後1週間、ラ・リオハの中心都市ログローニョ(Logroño)で、その年最初に収穫したぶどうを圧縮してできた果汁を、聖母子像に捧げるセレモニーなど各種イヴェントが開催される。
聖マテオの祝日にログローニョの聖マリア大聖堂(Concatedral de Santa María de la Redonda)で、サントス・モントイア・トレス(Santos Montoya Torres)司教の司式で11時から記念日のミサが行われた。
混声合唱団が歌う賛美歌が、石造りの高い天井の堂内に響き渡る中、赤い法衣を纏った地域の教区の司教団が入場した。
この日は、ラ・リオハ州知事、ログローニョ市長なども参列し、通常の倍以上のミサ参加者があり、普段は鉄格子で閉じられている側廊の礼拝堂も、一般参列者に開放された。
ラ・リオハ州、ログローニョ市の守護聖人となっているヴァルヴァネラの聖母(Virgen del Valvanera)。
言い伝えによると盗人が被害者の祈りを聞いて悔悛したところ、ある日天使が現れ、ログローニョから南西へ約40キロメートルの地、ヴァルヴァネラに行くよう命じた。
盗人は、ヴァルヴァネラでミツバチが群がる聖母子像を見つけた。その地に9世紀頃、聖母マリア礼拝堂が築かれ、後に修道院が建てられた。
ヴァルヴァネラの聖母子像は数々の奇跡を起こしたことから、ラ・リオハ州の人たちに崇敬されるようになった。
ミサの後に、民族衣装を着たログローニョの市民たちが、大聖堂からぶどう圧縮(Pisado de la uva) のイヴェント会場の広場パセオ・デル・エスポロン(Paseo del Espolón)までぶどうを持ってパレードをした。
民俗楽器を奏でる楽団がパレードを先導。
リオハ地方の主要なぶどう品種であるテンプラニーリョは、燦々と太陽が輝くイベリア半島から南フランスにかけて多く栽培されている。
「テンプラーノ(temprano)」とは"早熟"を意味し、この品種は比較的早い時期に収穫される。
ぶどうの皮が厚く色が濃く、いかにも情熱的なスペインらしい色調の濃い赤ワインを造る。
御輿に載せたヴァルヴァネラの聖母子像がワイン関連業者たちに担がれ、パレードの最後尾を飾る。
ちょっと寄り道
近年、ヨーロッパでは「エノトゥーリズム(Oenotourism)」と呼ばれるワイン関連の旅が人気だ。
「エノ(Oeno)」とは古代ギリシア語でワインを意味する"οἶνος"に由来する。
ワイン産地を訪ねる、ワイン農家に泊まる、ワイナリーを訪れ、ワインの利き酒をする。
最近では、ワインを造る際に派生するぶどう粕をペーストにして、身体に塗りマッサージする「エノマッサージ(Enomasaje)」も誕生した。
ラ・リオハ地方はエノトゥーリズモが盛んで、ログローニョの近郊にもワイナリーにホテル、レストラン、さらにはエノマッサージを提供する施設がある。
レストランでワインと食事を楽しみ、その後ゆっくりと旅の疲れを癒してはどうだろうか?
身も心も共にリフレッシュするに違いない。
後編へ続く。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?