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「ほんとうに!?」

 現在BS-11で放送されている『ほんとうに』(第十八回)を見て考えさせられた。
 日本橋の老舗の煎餅屋「はまかわ」の従業員の湯村敬太(江藤潤)との縁談がまとまったと早とちりした浜川トキ(市川翠扇)が従業員の三浦桃子(大竹しのぶ)に「桃割れ」という髪型をさせる(写真)。嫁ぐ前の節分にする下町の女性の髪型らしいのだが、若者たちには不評で次男の浜川南平(草刈正雄)には「今は昭和52年でアナクロニズム」「おばあちゃんのおもちゃにされて可哀そうだ」だと批判する。
 店に出ても男性客に「この店、変わってるね、店員にこんなかっこうさせるなんて」と笑われるのだが、幼い娘を連れて店に入ってきた女性客には可愛いと褒められる。
 その直後に、店の裏に連れて行かれて南平に「見てられないからその頭を直してしまえ」と言われた桃子は「御隠居さんが喜んでくださっているから」と言って断ると、南平は「周りのことばかり考える君には主体性がない」と桃子を詰るのである。
 確かに桃子のことを密かに想う南平には大人しく言われるがままに「桃割れ」を甘んじて受け入れている桃子の意志の弱さが歯がゆいのではあろう。アメリカ帰りの南平、つまりアメリカ人を父親に持つ草刈正雄はこのドラマにおいて日本の旧弊を改めさせていく役割を担っているはずだが、ここでは明らかに失敗しているものの、それは別として、令和5年の今ならば「コスプレ」として評判になり煎餅店のプロモーションにもなる髪型である。昭和52年(1977年)に時代遅れだった髪型が令和5年(2023年)に何度目かの「最先端」に変わるのである。