12日本文学講読Ⅱ とりかへばや物語

加藤幸一 日本文学講読Ⅱ 1997 奥羽大学 記録尾坂淳一
教科書/鈴木弘道 校注とりかへばや物語 笠間書院
(とりかへばや物語現代語訳)

a評価
異常な設定
「平安末期成立のとりかへばやは、女性的な気質の兄君と男めいた気性の妹君とが、それぞれ女装男装して華やかな宮廷生活に悲劇喜劇の渦をまきおこす物語。」桑原博史とりかへばや物語全訳注講談社

藤岡作太郎の酷評、長く権威をもつ
「同情の禁じ難きところなく、彼此人物の性格十分に発揮せず、ただ叙事を怪奇にして、前後応接に暇あらしめず、つとめて読者の心を欺諞し、眩惑して、小説の功成れりとす。その奇変を好むや、殆ど乱に近づき、醜穢読むに堪えざるところ少なからず。敢て道義を以て小説を律せんとするにあらず、その毫も美趣の存せざるを難ずるなり。殊に甚しきは、中納言が右大将の妻の四の君と通じ、また右大将と契るところなど、ただ嘔吐を催すのみ。」藤岡作太郎国文学全史平安朝篇明治38年

昭和五十年代、内容や表現が評価される(様々な愛情のあり方、特異な女性の生き方)

b成立
「無名草子」
「古きもの」11世紀末頃
「この頃」12世紀末頃=二つのとりかへばや物語
古本とりかへばや物語
‐超現実的、怪奇性が強い→散逸
今とりかへばや物語
‐改作、高く評価される→現存本約80本

c作者
不明
女君の生き方に詳しく、文体も女性的→女性か?

d手法
二人づれの手法=相並ぶ者や対照的な二人を並べて描きそれぞれの特徴を際立たせる

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐前期

(記録者感想)
文が長く主語を間違えやすいので現代語訳の際は注意。源氏物語の影響が色濃いが、きょうだい愛により幸福となる設定に現実性(当時の社会問題、他の作品にない新しさ)が観られる。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐後期