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■63アニメ「世話焼きキツネの仙狐さん」希望と期待とベルクソン

話に進展が少なく、一見退屈に感じられる作品ですが、とても楽しく拝見しました。

理由を私なりに考えてみたのですが、観ていますと出来事や次に出る台詞など全く予想どおりに、そのままとび出てくるのです。「次はこう言うぞ」などと考えていますと、まさにそのとおりに出るんです。

これは「こう言うぞ」ではなく、「次はこう言って欲しい」であって、読者である私の傲慢、奢り、であるわけで、じつにお恥ずかしいはなし、というだけなのです。つまりこの作品は、読者の「希望」を表現する事を主眼としております。

対して、読者の「期待の水平」を前進させる事を主眼とする作品、すなわち作中の個性や展開、事件、社会性を描く作品はベルクソン「笑い」にあるように「こわばり」が必要です。こわばりは読者の期待を限界まで引き寄せた上で哄笑を起こします。

「世話焼きキツネの仙狐さん」はこのこわばりが異様に少ない。観ていてとてもスムーズなんですね。あたかもサザエさんやドラえもんのように、いつもそこにあるもの、読者の希望を表しているように思います。これがこの作品のおもしろさはないでしょうか。