07日本文法講義 山田孝雄 橋本進吉 時枝誠記

小島俊夫 日本文法講義 1997 奥羽大学 記録尾坂淳一
教科書/国文法要説 文語編 おうふう
(山田、橋本、時枝文法)

1、文法研究の対象と領域
a対象
「アタマ」
音atama→社会習慣の違い
+意味 頭=音韻論
科学=単位(時間、長さ、重さ)測定が可能
  =極めて近い状況をつくれる(くり返せる)
a t m=単位 音声学
  =音素 音韻論
a ta ma=音声学的音節
   =音韻論的音節

b語彙論(意味論)
単語を集合として考える
ネジのアタマ、頭、→atama

c文法論
|駅に行く|切符を買う|列車に乗る|
|駅に行って切符を買い列車に乗る|
|~|文 長さが違っても同じ単位とみる
|~|伝達性がある
|切符|伝達性がない→語彙論
|駅に|行く|→構文要素
|駅|に|行く|→単語
|駅|の|近|さ| →「さ」単語 接尾語 接辞

2、山田文法(構文論)山田考雄
「文」統覚作用によりて統合せられたる思想が言語という形式によりて表現せられたるもの
統覚作用 人の内面の思想が一点に集約されること「種々の観念がある一点において関係をもち統合されるはたらき」

句 
花が 咲く 季節が 来た。
└───┘統覚作用=句
  └──────┘統覚作用=句
    └────────┘統覚作用=句
└──────────────┘文=判断のしめくくり(。)

文→単文 読点がない 句点がひとつしか存在しない
  花が咲く。
 →複文→重文 並立の関係(~で、~)
  風吹き出で、雨はげし。
 →複文→合文 合同の関係(~でも、~)
  春は立ちしかども、風なほ寒し。
 →複文→有属文 主従の関係(~を、~)
  雁の空高く渡るも、見ゆ。=述体の句
 →換体の句 形式のない文

個の物体の外延上(あてはめる範囲)の関係
 個別   並立

 合同 一致

 主従


二個物体の内包上(あてはめる条件)の関係
  主従  合同

  対等 並立

  一致

「位格」
父さん 白い 山茶花は 赤いのより ずっと きれい です
呼格  連体格 主格  補格    修飾格 賓格  述格

松は 常緑樹 なり
主格 賓格  述格=判断して切れる=陳述

花  赤し
主格 賓格+述格 賓格=属性、概念、

陳述=表現を統一し成功させるはたらき≒統覚作用
主格 賓格 述格 =位格
└────┘
  └統一する┘ =陳述

大工が「家を」建てる
    補格=説明を補う

太郎は 載せたり
太郎は「荷を」「車に」載せたり
    補格  補格

(蕎麦屋で)「私は たぬきだ」
→橋本文法「私は学生だ」形式主義
→山田文法「メニュー」論理主義

3、橋本文法(構文論)橋本進吉
a文
文の内容=それだけで一つの完結したあることを表す
文の形式=文は音の連続である
    =文の前後には必ず音の切れ目がある
    =文の末尾には特殊な音調がある

文の形 発話の音色における社会習慣的くりかえしに現れる特徴
文の意義 発話の意味における社会習慣的くりかえしに現れる特徴

発話=発話行動 音声を出す行動(表情や身振りなど同時に行われる行動群の一種)
  =発話行動とその結果生じた音声とその意味する内容

言語作品=発話の音声に発音の社会習慣的に型に由来する共通点があり、それらの音声に発する刺激となる状況やそれを聞いて示す言語共同体に属する人々の反応に共通性が認められる場合に発話が言語作品に該当する(抽象的単位)
「キャア」=「ヘビダ」

発話=一回限りの出来事(同じ発話は二度以上起きることはない)、発音者が心理的生理的な活動や行動ならびにその結果生じた音声(具体的現象)
「ワタシダヨ」「オバアチャンダ」
 =コンニチハ
「ナンジダトオモッテルノ」
 →「11時ダヨ」×
 →「ゴメンナサイ」○

発話=具体的、くりかえし現れる、社会的
言語作品=抽象的、一回限り、狭い範囲の人々

文(単位)
(ハイキングにて)コレハイイツエダ(拾った木の枝)×
(上を録音)コレハイイツエダ×
(加工した杖)コレハイイツエダ○
(事情が分からなくても)いつでもだれでもどこででも
文とは言語作品をさらに抽象化したものが文

初夏の雨がもえる若葉に豊かな潤いを与えた。 文
│初夏の雨が│もえる若葉に│豊かな潤いを│与えた│構文要素(文節)

音の連続→形、社会的
文→言語発信の最小単位
「雨」アメ↑!アメ↑?アメ↓。=文末音調があるものは文

b構文要素=文の言語発信の内容をさまたげない限度での最小の音の切れ目「文節」(山田文法の位格)

文節=文を分解して最初に得られる単位
文法研究においては形(音)から意味に入るべきである
聞き手の立場に立つ
聞き手の耳に一区切れ一区切れごとにひびくひとまとまりのことば
言語の社会的側面
できるだけ多くを切った(文の伝達性をさまたげない)最も短い区切り

c研究について
1形から内容へ 聞き手の立場=橋本文法の方法
2内容から形へ 話し手の立場

白く|大きな|木星が|見えて|いる
 3  2   1  0'  0
└──┘
  2
 └─────┘
   1
  └─────────┘0
0述語 日本語は述語だけで成立する
123述語から遠ざかる順

4、時枝文法(構文論)時枝誠記
a言語過程説 フッサール現象学、演繹法、志向重視、 主観的、
現象=対象との関係のうちにある意識「対象は意識の中にある」現象空間は意識の中に存在
対象が自己にはたらきかけるあり方
意識がそれを構成するあり方
「言語は主体の行為、実践である」

b文
主観客観の合一しまとまった思想の表現でありこれを言語に即していえば詞と辞の結合であることを第一条件とし、文はまた完結した思想の表現であり従って言語的には終止するところの言語形式を必要とすることを第二条件とする

梅の 花が 咲い た
詞  辞 詞 辞

梅の 花が 咲く ■
詞  辞 詞 零記号

詞=客体的表現の単語 話し手の心→間接(材料)
辞=主体的表現の単語 話し手の心→直接
零記号=0も主体の意識内
橋本 |梅の|花が|咲いた| |太郎と|次郎が|来た|
時枝 〈梅の花〉が咲いた 〈太郎と次郎が〉来た

匂い も 高く 花 が  咲いた

匂い も 高く ■ 咲いた
=完結しない形式
匂い も 高く 花 が   咲く ■
=完結の形式=詞辞の連続
寄らば大樹の陰
三人寄れば文殊の知恵

c句(=構文要素 橋本の文節 山田の位格)
辞が詞を統一する
統一された関係を「格」という
「詞」+「辞」=格=句
「詞」「辞」=単語=品詞

述語
主語
連体修飾語
連用修飾語
独立語
対象語
文のそれぞれの句は述語から抽出される
述語だけで文ができる
「学校へ 行った」=「私が」の省略
英語「I am」=述語が主語に対応する

d対象語
蛇がおっかない
足がいたい
水がのみたい =思っているのは「私」=主語
 ↓  ↓
対象 主観
 ↓
主体の外

(私は)山が見える=客観
私が(本を)読む=主観
私は見える=主観+客観=主客融合
人が コップを 盆に のせる○
人が コップが 盆に のせる×
コップを 盆に のせて いる○   動詞的性格
コップを 盆に のせて ある×   宿題ができている
コップが 盆に のせて いる×   形容詞的性格
コップが 盆に のせて ある○   仕事ができる

5、品詞論 山田孝雄
単語─観念語─自用語─概念語(体言名詞代名詞数詞)
          ↳陳述語(用言動詞形容詞存在詞助動詞)
      ↳副用語(副詞)
  ↳関係語(助詞)

「体言」名詞代名詞
日本語━本がある━━━━━これがある
英語━━ book is,books are,━this is,there are,

「用言」動詞形容詞
咲く=赤い花が咲く
   花が赤い
   咲けば赤い
   赤ければ咲く

存在詞=有り 居り 侍り 候ふ
    実質存在詞(それだけで分かる)
   =なり たり ごとし
    形式存在詞(それだけで分からない)

松は常緑樹なり
     形式存在詞
     述格
     陳述(判断がくだされる)

花が 咲く
   実質存在詞

副詞
海は おだやか だ
   副詞  存在詞
   内容を限定する=賓格=修飾語(用言を修飾)

                   情態副詞
             属性の副詞<
        語の副詞<      程度副詞
   先行副詞<     陳述の副詞
副詞<     感動副詞
   接続副詞
ゆっくり(語の副詞)彼は語る
ああ(感動の副詞) 彼は語る
しかし(接続副詞) 彼は語る
もし(陳述の副詞)汝行かば(呼応 陳述に制限を与える)
やや(属性の副詞)遠い(遠い=属性 属性の状態を表す)
すこし(程度の副詞)左(体言を修飾することがある)
あきらか(情態副詞)なり(形式存在詞=用言を修飾する)
あきらか(副詞)に(格助詞)=陳述  
→橋本文法「あきらかに」一語

「助動詞」
雨 ふ ら   ず
    語尾 複語尾=陳述(用言)
ふらね ども
    複語尾
ふれ ども
   助詞(関係語)
「ふらず」一語
「ふらねども」一語
「ふれども」二語

「助詞」
         7
       5< 8
     3<
   1<  6< 9
助詞<  4   10
   2
1一つの句の内部にあるもの
2句と句を結び合わせるもの
接続助詞
駅に行きて買ふ
3一定の関係を示すもの
4使用範囲のゆるやかなもの
間投助詞
駅にね行ってね買う
5句の成分の成立または意義に関するもの
6句そのものの成立または意義に関するもの
7一定の成分の成立に関するもの
格助詞
どろぼうヲガ 警官ガヲ しばる
8句の成分について下の用言の意義を修飾するもの
副助詞
私ばかりに用を言い付ける
9述語の上にあって影響を与えるもの
係り助詞
鳥は飛ぶとき羽をひろげる
10句の終止に用いるもの
終助詞
買ったよ 買ったか

6、品詞論 橋本進吉
単語
↳その単語単独で文節になり得る単語
               ↳1
               ↳2
               ↳3
               ↳4
↳その単語単独で文節になり得ない単語⑤

1種々の断続の関係をその単語自身が形を変えることによって示す単語(動詞形容詞)

2種々の断続の関係を形を変えず、示し得ない単語(名詞)(英語pens)

3常にあとへ続く構文要素となる単語(副詞連体詞)
かれは おもむろに 立ち上がった
└────┘入れ換えが可能
おもむろに=形が変わらない、常に続く

あの 問題は どうなった
└───┘入れ換えが不可能

4常に切れる構文要素となる単語
ああおどろいた→おどろいた|ああ 二文
こらまて一文→まて|こら 二文
すこしまて一文→まてすこし 一文

⑤その単語単独で構文要素になり得ない単語
1その単語の形が変わることによって切れ、続きを示す単語(助動詞)
走る 走らせる(切れ) 走らせ(続き)
2その単語の形が変わらず切れ、続きを示さない単語(助詞)
3その単語の形が変わらず、常に続くはたらきを示す単語(助詞)
4その単語の形が変わらず、常に切れるはたらきを示す単語(助詞)

助詞
↳断続を示さない
 ↳連用形の後にも位置する 副助詞
 ↳連用形の後には位置しない 準体助詞
  ↳いつも続く
   接続するもので用言の後にのみ位置 接続助詞
   種々の語の後に位置 並立助詞
  ↳接続以外で続く
   体言に続き種々の語のあとに続く 連体助詞
   用言に続き体言のあとにのみ位置する 格助詞
   用言に続き種々の語のあとに位置する 係助詞

↳いつも切れる
 文の末尾に位置し切れを示す 終助詞
 構文要素の末尾に位置し切れを示す 間投助詞

「日本語の特徴」
述語が重要
述語にいろいろな要素が一語のようにつく
「走ら+せ+られ+る」

7、品詞論 時枝誠記
     体言
   詞<   動詞
単語<  用言<
   辞    形容詞
   └助詞
   └助動詞
   └感動詞
   └接続詞

体言
┗名詞 いわゆる形容動詞語幹
┗形式名詞
┗体言的接尾語 ~さ(~がる 用言的接尾語)
┗接頭語
┗代名詞
  ┗名詞的代名詞
  ┗連体詞的代名詞
  ┗副詞的代名詞
┗副詞
┗連体詞

「代名詞」
これは それは 本だ
これが それが 本は これだ =名詞的
        本が

ぼくのだ=連体詞的
こう言う そう言う=副詞的
ぼくの|が  あついの|が =詞+辞
ぼく|の|が  写真|館

「名詞」
静か|だ
└客体的概念 話し手にも聞き手にも属さない心の外の概念→名詞

「助詞」
格助詞 格をあらわす助詞
太郎は勉強をし始めた=勉強をし始めたのが太郎だ
副助詞 限定をあらわす助詞
太郎は勉強をし始めた=次郎三郎はしないのに太郎だけは始めた
接続助詞 接続をあらわす助詞
終助詞 感動をあらわす助詞
→「は」話し手の主体的表現「辞」
 ↑
橋本文法では格助詞 花は咲く
連用修飾語(目的語) 花は見るが

大野晋「言語過程における詞辞の分類について」(文語)
我 ■ 行か む
彼 ■ 行か む
    ┗客体的表現=詞といえるのではないか

三人寄れば文殊の知恵
已然形+確定ば=寄ると

寄らば大樹の陰
未然形+仮定ば=もし寄るならば
         ↓異なる意味
        寄れ寄ら=詞
        ば=辞
=寄れ寄らの中にも主体的表現がある
=辞になり得る

万葉集2・199 乱而来礼みだれてきたれ
きたれ(已然形)くるので=くる+接続
万葉集12・1266八船多氣やふねたけ
け(已然形)けれども=たる+逆接
=一語で複数の意味
=詞辞の新しい分類
行くjuk+i=行き
行くjuk+u=行く

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐前期

8、文語の構文論(ある一つの文のある単語のはたらき)
年のうちに春は来にけり。  切れる文
ひととせをこぞとはいはむ、 切れる文
ことしとやいはむ。     切れる文

表現=一回限りの独自性=文章や文学
  =繰り返される共有性=日本語研究
言葉=外形(音)=音声(くりかえさない)
       =音韻(くりかえす)
  =内容(意味)
単位=組織としてのかたまり=文

文語の構文要素
年のうちに 春は    来にけり
春は    年のうちに 来にけり
春は    来にけり  年のうちに

文語の単語(接尾辞)
春は 来に けり
春は 来め
春は 来
春  来
「き」=「く」
「に」=「め」性質は同じ
全体(文や文節)の中での前後の位置関係

文語の活用
形は異なってもはたらきは同じ(日本語の特徴)
英語  he    his him  一息 屈折語
日本語 彼が/は 彼の 彼に 二息 孤立語
中国語             孤立語

活用で多くの構文要素が述語に入る「付着語」
「走らせられたろうか」

兄が弟を助ける→弟が兄に助けられる
          └────┘呼応
花咲く→花ぞ咲きける
     └───┘呼応
(時枝 花+ぞ=文のしめくくり)


a文語の助詞「に」=呼応がある
奥山に紅葉ふみわけ(古今215)
  └────┘場所を示す

すみのえのきしによる浪(古今559)
       対象を示す

いまさらに山へかへるな(古今412)
    └────┘かへる

北へ行く
──>>──
=「に」に比べ漠然と示す、対象から遠ざかる

花なき里△も花ぞちりける(古今9)
里に花散る 花散る
花里に散る 花散りけり
      花ぞ散りける
=省略できる「に」
=限定を示す(制限する)
時△ぞ秋はかなしき

b係助詞「ぞ」「は」
秋ならでおくしらつゆはねざめするわがたまくらのしづくなりけり(古今757)
↓意味上変わらない
ねざめするわがたまくらのしづくぞ秋ならでおくしらつゆなりける

c文語の接続助詞「を」
袖ひじてむすびし水のこぼれるを
───────────────〉接続語

春たつけふの風やとくらむ(古今1・2)
〉───────────被接続語
───────────>>───主語・述語
───────>>─連体修飾語「風」
──>>──連体修飾語「今日」
─>>─主語・述語

─内において順番はかえられない
接続語─>を>─被接続語
     =接続詞を

雪とのみふるだにあるをさくら花
──────────>|────|
           =独立語 修飾しないされない語

いかにちれとか風のふくらむ(古今2・86)
>────────────────

こころをしきみにまつるとおもへれば
よしこのごろはこひつつをあらむ(万葉集11・2603)
       こひ‐‐‐あり
       こひて‐‐あり
       こひつつ‐あり
           を=間投助詞(省略できる)

みぬめをすぎて(万葉集3・250)
   =格助詞を

われはきけるをやどかさず(万葉集2・126)
      =接続助詞を
われはきく 
われはきけり
われはきける

d文語の接続助詞「は」
うぐいすのたによりいづるこえなくは
─────────────────>接続語

春くることをたれかしらまし(古今14)
>────────────────被接続語

なく(未然形)ハ=接続助詞
なく(連用形)ハ=係助詞

心あてにをらばやをらむ(古今277)
      接続助詞+係助詞
      接続助詞は係助詞よりいつもはやい

長許こそは(今昔物語23・24)
  係助詞+係助詞
  係助詞は・も 結びは終止形

e文語の感動詞
あなこひし今もみてしが(古今695)
単語で感動詞
構文要素で独立語

やよやまてやまほととぎすことづてむ(古今152)
やよ+や=感動詞+感動詞(二語)
やよや=感動詞(一語)

     やまほととぎす(よ)
     第二人称‐‐‐省略=独立語

いざさくら我もちりなむ(古今77)
さあさくらよ

f文語の並立語
暮ると明くと目かれぬものを梅の花(古今45)
────|───
並立語 並立語

春の色のいたりいたらぬ里はあらじ
   ────|────
   並立語 並立語

さけるさかざる花の見ゆらむ(古今96)
────────────>>───
主語       述語
─────────>>─
連体修飾語  被修飾語
────|────
並立語並立語

いたる里 いたらぬ里
さける花 さかざる花

あさにはにいでたちならしゆふにはにふみたひらげず(万葉集3957)
朝庭に出で立ち並さず夕庭に踏み平らげず
━━━━━━━━並立━━━━━━━並立
=ならし=打消しの省略 

9、文語の品詞論(はたらきによる単語の分類)
a係助詞
こひすてふわが名はまだきたちにけり
人しれずこそおもひそめしか(天徳四年三月三十日歌合)
こひす=準体言
てふ=連語と+いふ 格助詞とに形容詞いふが熟合
  =連体助詞 語形が変わらないいつも体言へ続く
まだき=副詞
まだし=形容詞(おとな名詞 おとなし形容詞)
まだ=副詞
いまだ いまだし=接頭辞(いばら、い行く、い積る)

人しれずこそおもひそめしか
=人しれずおもひそめしかども
雨ふる。

雨こそふれ(已然形)
雨こそふれ、=雨ふれども、逆接
雨こそふれ。=雨ふる。順接

b「からに」
吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ(古今249)

よとよのからに(万葉集18・4069)
  「の」連体助詞
  「から」名詞
  「に」単語のうしろにつくことがある語(夜遅くにすみません)  
   =「からに」で一語

わがからに (万葉集26・4356)
「わが」代名詞+連体助詞「からに」名詞

をかびから(万葉集17・3946)
「をかび」名詞「から」格助詞

すゑしたねから(万葉集17・3946)
「すゑしたね」名詞「から」格助詞

へだてしからに(万葉集4・638)
   「からに」接続助詞

てにとるからにゆらくたまのお(万葉集20・4493)
   「からに」接続助詞

やすからずしのびたまふからに、(源氏あげまき)
───────────────────>接続語(接続助詞)
これから忙しくなる 格助詞
これからが忙しくなる 副助詞+格助詞
(格助詞+格助詞はない)

c「むべ」「うべ」
吹くからに秋の草木のしをるれば
むべ山風をあらしといふらむ(古今249)

うべこひにけり(万葉集310)
動詞うべなふ

うべもさきたる(万葉集831)
動詞

わがおほきみはうべなうべなわれを(日本書紀)
            な=文末の終助詞

ここみればうべし(万葉集4361)
       し=名詞について形容詞になる(おとなしなど)

まだし(源氏物語をとめ)
  し=副詞について形容詞になる(いとどしなど)

むべむべし(源氏物語うつせみ)
    し=動詞四段未然形について形容詞になる
うべ(むべ)≒名詞から動詞になった

d「ながら」
夏の夜はまだよれながらあけぬるを
雲のいづこに月やどるらむ(古今三夏166)

みむ人は枝ながらみよ(古今四秋上222)
    名詞+接尾辞「枝のまま」=名詞

おなじみかづきのうちながら(源氏物語さかき)
        名詞+接続辞=名詞

頭中将ばかりを「たちながらこなたにいりたまへ」(源氏物語ゆうがほ)
        動詞+接続助詞

日はてりながら雪のかしらにふり(古今一8詞書)
    接続助詞=順接「照っているので」
        =逆接「晴れているのに」

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐後期