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詩) もの知りたる猫

あんまり物知り顔だから
私は知ろうとしてました。
猫の知ってる春の気だるさ
私は知ろうとしてました。
知ろうとしてたまさにその時、
彼奴(きゃつ)は舞い散る桜に酔って
ひらりすり抜け消えました。

あんまり物知り顔だから
私は知ろうとしてました。
猫の知ってる夏のアンニュイ
私は知ろうとしてました。
知ろうとしてたまさにその時、
彼奴はゆらめく陽炎と
ふっと音なく消えました。

あんまり物知り顔だから
私は知ろうとしてました。
猫の知ってる秋のモノクロ
私は知ろうとしてました。
知ろうとしてたまさにその時、
彼奴は過ぎゆく秋雲と
こっそり行方をくらましました。

あんまり物知り顔だから
私は知ろうとしてました。
猫の知ってる冬の陰翳
私は知ろうとしてました。
知ろうとしてたまさにその時、
彼奴は微かな月光を頼りに
すっかり遠くへ消えました。

あんまり物知り顔だから
どうやら知ろうとしてたのです。
猫の命がいかなるものかを
私は知ろうとしてたのです。
そうして私は知ったのです。
どこか遠くにあることが
命であること知ったのです。

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  Tue 11 Jan 2022 With the fancy that Yume reads this aloud. 

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