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散文詩) 星月夜、幸も不幸も願わぬための。

不思議なこととは、やはりあるものなのです。

10月10日のことです。

その名に星団の名を冠した友が

日付も大きく越した27時ごろ

少し白んだため息混じりの

けれども体温をもった言葉を

ぽとりぽとりと落としてくれた

まさにその日。

私も星空を見ていたのです。


その日は久しぶりに

多くの人々が集まって

出店やコンサート、花火なんかを

一緒に楽しめた日。

場所はといえば

そこは山の上で

緑のカーペットみたいな原っぱが

上に向かって大きく口を開いている

吹き抜けた場所。

星を見上げていたのは

まさにその時、その場所だったのです。


大きい卵黄みたいなお月様が

原っぱの裾から段々と顔をのぞかせておりました。

上ではないですよ。

真っ直ぐ平たく、視線を伸ばせば見えるのです。

そこかしこにいる人々のお顔というお顔の中に混じって見えて、

そこかしこにいる人々のお顔というお顔よりもずっと大きく見えて、

ついつい話しかけたくなるような、

ややもすると話しかけられてもいるような、

そんなお月さまだったのです。


だからでしょうか、

目線を上にあげまして

頭上に広がる星空を見てしまったが最後、

やはり人々のことを想ってしまったのです。

どうしているでしょうか、元気でしょうか、

寂しくはないでしょうか、寂しくてもいいですよ、

哀しさはどうですか、それもいいですね、

それがあるなら教えてください。

笑っていてください、なんてことは思うはずもなく、

ただ皆々様の

今日のあるがままのお姿が

気になってしまい、

愛おしく思えてしまい、

ただこのまま遠くから、

星を眺めていられることを、

願ったのです。

星も二つか三つ流れましたので、

きっとこの願い、

叶うものと思われますのは、

無謀というものでしょうか。


星空といえば

思い浮かぶのは二次元のキャンバス

あっちに星が、こっちに星が、

黒地に白い雫が

散っているイメージでしょう。

けれどもこの日の星空は

どうも様子が違ったのです。

遠近感があったのです。

あれは近いですね、おや、

これは遠いですね。

その星空は

三次元でありました。

紐の長さも不揃いな

仄かな電灯が無数に垂れる

天井を見上げているようでありました。


そうしてです。

自分が立つこの場所もまた

その灯の一つでありました。

暗がりのなかに寂しく浮かび

か弱く戸惑う無数の灯の

ただ一つなのでありました。

今この地点から広がる

上下左右を隙間なく、

咲き乱れている灯がありました。

ややもすれば、

わたくしそのものでさえも、

ひとつの灯でありました。


上だと思っていたあの灯は

ブラジルから見たら下にあるのです。

その逆も然り。

アメリカからなら左にあったり、

右にあったりするのです。

この素朴な事実に

今更ながら気付いたのでありました。


皆々さまへ、願います。

どうかそのままでいらっしゃること、

願います。

悲しみや喜び、焦りに戸惑い、

数多の感情ありますでしょうが、

いま見上げてます星々に

飛びつくことなく、

ただそのままでいてくださることを、

願います。

それは上でも下でもないのですから、

ただそれを眺めて、

自分の地点を踏みしめて、

その灰明るい灯りを、

私に届けてくれること、

願います。


星も二つか三つ流れましたので、

きっとこの願い、

叶うものと思われますのは、

無謀というものでしょうか。

不思議なことはあるものでして

その日私も

星空見上げていたのです。

だから叶う気、するのです。

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