雑記:ようやく景色になれた
3月21日は雨だった、
わたしたちは都庁で写真を撮った。
だけど、雨に濡れたのは写真家だけだった。
この日はじめて景色になれた気がした
デジタル変換されたわたしたちが
街の中に置かれたとき、
人間の存在感は雨のような自然現象に近くて
不安定で、不確定で、
建物みたいな確かな形には全然成れてなくて、
なんだかほっとして肩の力が抜けたんだ.
「あと、レットゴーのメンバーの写真を送ってほしいって言ってた。」
突然そう言われ、はてどうしたものかと考えた.
バラエティショップ・レットゴーはデジタルホームセンターとして活動しているのだけれど、普段ばらばらの生き方をしているので、全員集まることはほとんどない。
どうやら先日参加したイベントの開催報告用に、プロフィール写真が必要らしい。
『いつまでに必要って言ってた?』
「・・・できたら今週中?」
そう返事をもらった今日は金曜日。
さて、どうしようか。
今週中は現実的に無理だとしても、早めに撮らなくちゃね、ってことで『zoomで並んで撮影したらいいんじゃない?』と思い付きで返した。
『舞台の写真を撮っている友人に、画面越しでもいい感じになる構図、相談しておいてほしい』
何気なくそう頼んで、昼夜逆転の私は眠りについた。
「昼間新宿で撮影だから、終わったら都庁で撮るのはどう?って提案もらった」
起きたらそういう流れになっていた。
写真家だけ、現地に行く。
被写体は自宅からzoom出演。
なんだかおもしろい時代になったね。
どんな絵が取れるか想像できなかったけれど、
想像できなかったら面白そうと思ってそのプランに乗った。
3月21日は雨だった。
いつだっけ、
ごうごうと音を立て、
春らしい風が窓ガラスを叩いていた夜があった気がする。
最近、画面ばかり見ているな。
そんなことを感じていた。
そのせいか、外に出る度に目が立体感を捉えるのが苦手になっている気がした。
心なしか駅で人とぶつかることも多くなった気がした。
人との距離感をとる能力が鈍くなっているのかもしれないと推測した。
電車の座席に座る人の姿勢が崩れてきたように感じていた。
部屋でくつろいでいる姿勢のまま外に出ているようだと思った。
人間はどうなっていくのだろうかと考えていた
知らないうちに変容している。
全員が全体として変化しているのだから誰も気づかない。
どうなってもいいと思っているし、
どうにか なっていくのだろうし、
どうなってほしくない わけでもないから、
ただそれをじっと観察している。
「こんな感じになるよ」
zoom越しに現地で写真を撮っていたC'sさんが、
さっそく撮った写真を画面共有で見せてくれた。
それを見た時に
「あ、大丈夫だ。」
そう思った。
雨は走るように流れていて
地面は固くひんやりと堅実そうで
水たまりは波打ってキラキラ光っている
そして、
何重にもデジタル変換された自分たちの姿は
静かな雨の都庁の景色の一部になじんでいた
ちゃんと景色の一部になれているじゃない。
建物でもないし
計算機でもないし
地面でもないし
空でも雨でもない
似ているものをあえて探すのなら
雨に当たって形を変える、水たまりの波紋みたいだと思った。
薄曇りの日曜日の静かな都庁前の雰囲気にしっかり左右されながら、
ふうわりと弱弱しくうつろい揺らめいている。
そのくせして、その気になったら
後ろにある建物とか建てちゃうし、
そこに張ってあるロゴとかイベントとかつくっちゃうんだ。
「いびつな不確定要素、人間」はそんなに気負わなくても大丈夫そうだ。
自分たちがつくったものと、地球が育ててきたものの間でうまくやれそうだ。
人新生?笑っちゃうね。
どう見てもたいしたことないじゃん。人間なんて。
雨が降って
水たまりが揺れて
灰色がかった少し肌寒そうな空に翻弄されて
突然何かやる気になったり、
なにかを背負った気になったりして、
どうこうしようと奮闘しちゃう
ちょっと不器用で個性的なチームメンバー。
それが人間だ。
だから大丈夫。
そう思った
きっと仲良くやれるよ
この宇宙がはじまってから今まで何一つ変わっちゃいない。
ぼくたちはいつでも調和を保てている。
信じてくれよ。
そんなに悪いようにしないから。
なんかいい感じになっていくように今日も創造するから、これからも仲良くやっていこう。
いつだってこころの底から信じているよ
Photography : C's
THANK YOU
広大な仮想空間の中でこんにちは。サポートもらった分また実験して新しい景色を作ります。