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不思議で可笑しくて怖い話

失敗談を整理していると、 W さんがやってしまった話が出てきた。

笑い転げながら聞いたその話はとても真実の話とは思えなかった。近所の変わり者で有名な W さんの話だ。

行きつけの喫茶店で、偶然隣り合わせた W さん、店主とも顔見知りとのことだったのですぐ打ち解けて話し込んだ。

つい最近、フィリピンで命拾いをした話をし出した。

W「フィリピンに行ってたけど、ようやく日本に帰ってこれたよ」

私「旅行に行ったんですか?」

W「そう、だいぶん長くいたけどね」

私「良いですね。1人で行ったんですか?」

W「いや四人で行きました」

私「仲良しグループで良かったですね」

W「いや知らない人たちだよ」

私「どう言うことですか?」

W「いやー、***という喫茶店でコーヒーを飲んでいたら、三人グループが、しきりに困った困ったと長いこと話し込んでいたんだよ。それで、『どうしたんですか?』と聞いたら」

三「今度フィリッピンに4人で旅行に行く約束をしていたら、直前に1人が突然キャンセルしたいて言い出して旅行代金の返金が無いそうで、困っているんです」

W「私は暇だったので『じゃ、私が代わりに行きますよ』と言ったらみんな喜んでね」

私「良かったじゃ無いですか」

W「私は何もわからない状況で彼らと同行したの。空港で待ち合わせて、彼らと一緒にフィリピン、マニラに着いたの」

私「楽しかったでしょう?」

W「その夜は一緒にご飯食べて、翌朝だったね、問題は」

私「何があったの?」

W「朝ごはんが済んだら彼らは3人一緒にどこかへ行こうとしてるの」

私「一緒に行かなかったの?」

W「喫茶店で初めて会った、全然知らない人達だからね。会話もできない。名前も知らないし、予定も聞いてない」

私「えーっ!そんな良い加減な話でついて行ったの?」

W「はい、ただの員数合わせ」

私「それじゃ、ホテルで退屈だったでしょう?1人で過ごすのは大変ですよ」

W「だから慌ててついて行ったの、彼らに。英語もできないし、1人では何もできないから」

私「良かったですね」

W「それがあんまり良くなかったんだよね」

私「どうしたんですか?」

W「一緒のタクシーに乗せてもらえなかったので、次のタクシーに乗ったの」

私「英語もできないのに?」

W「そうです。身振り手振りで前の車を指さして『追いかけろ!』と言ったの」

私「よく通じたね」

W「気合いだね」

私「それでどこに行ったんですか?」

W「前のタクシーを追いかけて行ったんだけど、こちらの運転手が前のタクシーを見失ったんだよね」

私「まずいですね」

W「目的地を知らないからね。だから、その辺りを探したの」

私「見つかりました?あそこは渋滞がひどいから大変だったでしょう?」

W「見失ったの、1時間くらい走り回ったんだけど、全く見つからなくって困ってしまってね」

私「それは大失敗ですね」

W「それでタクシーを見失った運転手に文句を言ったの『お前のせいで友人の行き先がわからない』て、日本語で。意味は通じてないけどなんとなく怒っているのはわかるのね。そしたら、運転手が『ここで降りろ』て言ってるのね」

私「降ろされたら困るでしょう?」

W「そうです、英語が全くできないから。降ろされたらどこにも行けない。ただ請求された料金が法外だったので、頭にきて運転手を殴ったのね」

私「えーっ!殴ったの?命が危ないよ。あの国は治安が悪いから。よく無事だったね」

W「車から出ると人垣ができて、現地の人に取り囲まれちゃった。ボコボコに殴られていると警官が来たんだよ。警官が、運転手から事情を聴取して、私に何か言うけど全くわからない。なすすべがないから警官に向かって『ニコー』と笑ったんだよ。

私「それでどうなりました?」

W「お金を払えとの素振りだったので、警官と運転手にお金を渡したら無事解放されたよ」

私「良かったですね」

W「それで、別のタクシーを捕まえて、ホテルへ帰ろうとしたけどホテルの名前を知らないの。ホテルの玄関のタイルが一枚剥がれているのを覚えているだけ」

私「それでどうしたの?」

W「仕方がないのでタクシーを諦めて、ぶらぶら歩いて、そこいらのホテルの玄関まで行ってはタイルが剥がれているかどうか確認して回ったの」

私「大変ですね。それでにつけたの?」

W「ホテルがたくさんあって探してもわからないんだよ」

私「どうしたんですか?」

W「暗くなったらホテルのロビーで寝ることにしたの」

私「怒られなかった?

W「警察を呼ばれたけど、『ニコー』と笑ってチップをあげたら、黙って帰って行ったよ」

私「お金持ってたんですね」

W「200万円持っていって腹巻きに100万円、ホテルのセーフティボックスに100万円入れてあったから」

私「危なくなかったですか?」

W「服は現地用に、ボロボロのものを買って着ていたし、靴もゴムゾーリに履き替えていたから、金を持っているようには見えないようにしていたよ」

私「頭良いですね。どうして帰って来れたんですか?」

W「あるホテルのロビーに座っていると、明らかに日本のヤクザと思われる人が、フィリピンのそちら関係の人と、ピストル購入の話をしているのに出会したの」

私「怖い話ですね」

W「3ヶ月くらいしたら、またその人が日本から来てピストルの買い付けをしているの」

私「顔を覚えられたでしょう?」

W「挨拶をした程度、日本語がようやく通じたので嬉しかった。あまり深く話をしなかったけど」

私「どうして帰って来れたの?」

W「また3ヶ月ほどしたら、同じ人がピストルの買い付けに来たの。挨拶をしたら、事情を聞かれたので、『友人を見失ってホテルがわからないし、パスポートも無い、日本に帰りたくても帰れない』と言ったら、その人が日本行きの航空券を売ってくれたの」

私「良かったですね」

W「腹巻きにまだお金があったからね。そのまま空港まで行ったら、航空券が偽造で警察に逮捕されたの」

私「大変ですね」

W「いや、警察で通訳をつけてくれて、ようやく事情がわかって、すぐに玄関先のタイルの剥がれたホテルを見つけてくれて、部屋にあったパスポートを手に入れることができたよ。お金も100万円そのまま出てきたよ」

腹の皮が捩れそうなほど笑ったけど、1歩間違えると命が危険にさらされる国だから自分も気をつけるようにしよう。










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