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-自分のからだに対する責任を手放さないこと- ヴァインホルド響子さん

今回のインタビューは、ドイツのハンブルグでプラクティショナーとして活動されているヴァインホルド響子さんにお話を伺ってみました。

ーーーJFC:自己紹介をお願いします。

響子さん:こんにちは、ヴァインホルド響子です。ドイツ、ハンブルクを拠点に、フェルデンクライスプラクティショナーとして活動しています。

少しさかのぼってお話すると、元々は歌手として活動していました。22才の時に渡米し、音楽院を卒業後、ミュージカルやコンサートを中心に音楽活動をしてい他のですが、体調を崩したことをきっかけに音楽活動を一度休止し、フェルデンクライスを始めました。ちょうどその年、夫の転職が決まったので、現在はドイツのハンブルク郊外にあるクレンパーハイデという村で、夫と娘と3人で暮らしています。


ーーーJFC:フェルデンクライスを始めたきっかけは何ですか?

5、6年前、心身ともに無理をし、体調を崩した時がありました。それをきっかけに、自分の体の仕組みに強く興味を持ったんです。音楽家として体を資本とする仕事をしてきたけれど、自分の体のことをどれくらい知っていたんだろう?と、立ち止まりました。

そこで、以前から興味があったフェルデンクライスを体験しに、ニューヨークの養成所を訪れました。音楽家にはアレクサンダーテクニックの方が知られていますが、フェルデンクライスがパフォーマーによいということは、歌の先生から聞いていて、以前から気になっているメソッドだったんです。

初日のレッスンで、体の奥深くから、じわじわと緩まって行くような、初めての感覚を経験して、これはすごい、もっと知りたいと思ったのと同時に、フェルデンクライスは自分の人生の中で大切な要素になる気がしました。

ニューヨークの養成コースから、ドイツではハンブルクの養成コースに編入、2019年に資格を取得しました。ドイツ語初級で飛び込びこんだので、なかなか大変でしたが、体で学んでいくフェルデンクライスだからこそ、出来たことだと思います。


ーーーJFC:日頃からフェルデンクライスのレッスンをする上でテーマにしていること、生徒さんに伝えたいと思っていることは何ですか?


響子さん:レッスンに来られる方は、姿勢を改善したい方、手術のあと腕がうまく上がらない方、パフォーマンス力を上げたい方、など、様々な方がいらっしゃいます。お一人ひとりの状態をよりよくしていくことに、まずは目を向けますが、レッスンを続けて行く中で、「自分のからだに対する責任を手放さないこと」の大切さを感じていただけたら、と思っています。当たり前のように聞こえるけど、実は簡単ではない。特に、痛みや問題を抱えている時は、どうにかして~と、誰かに投げ出したくなることもありますよね。必要な時には医療やプロの方に頼りながらも、自分の体について、主体性を無くさないことが大事なことだと思っています。

からだに耳を澄ませ、からだへの気づきを深めることは、そのための第一歩であり、第二歩であり、第百歩です(笑)。


ーーーJFC:フェルデンクライスをどのように自分のライフスタイルに取り入れていますか?

響子さん:自己ケアのため、生活の中に取り入れています。以前は整体師さんやマッサージ師さんに頼っていたことを自分で出来るようになりました。
長距離移動後の腰痛や、娘を長い間抱っこした後の肩こりを緩めたり、ストレスを感じたときの対処にも役立っています。産後、心身ともに余裕がなかった時にもとても助けられましたね。

フェデンクライスと出会うまで、私は目標に向かって突っ走るのが好きでした。それはそれで喜びはあるんですが、体や時間はその目標を達成する為の道具のような感覚があったんです。

フェルデンクライスのレッスンの中では、今この時に目を向け、体とゆっくり向き合いながら、一つ一つのステップを踏んでいきますよね。そうしているうちに、「頑張っていない」のにからだが変わっていく。その体験を続けるうちに、物事に対する取り組み方が変わりました。

今このときの体に集中し、行っていることの「質」に目を向ける、そうすると知らないうちに目標が達成されていたりするし、何よりも日々の幸福度が高まりましたね。


ーーーJFC:今後の展望について教えてください。

響子さん:施術台でのレッスン(FI)、生徒さんが自分で体を動かすレッスン(ATM)共に、引き続き経験を積んでいきたいです。コロナ下でなかなか対面のレッスンが出来なかったので、今年は実際に体に触れるレッスンが再開出来そうなのが嬉しいです。

フェルデンクライスはまだまだ認知度が低いので、よりたくさんの方に親しみをもってもらえるよう、気軽に入りやすい入り口を増やしていきたいな、と思っています。アニメーション作成など、考え中です。

今現在は、ニューヨークでお世話になっていた演劇界の友人と、プロジェクトを実施中です。フェルデンクライスがパフォーマーにどのような助けとなるか、セッションを重ねながら意見交換しています。パフォーマーの方々が、より楽に、よりクリエイティブに力を発揮することをお手伝いする活動にも力を入れていきたいと思っています。


ーーーJFC:フェルデンクライスをすることが、どのようにパフォーマーの助けになると思いますか?

響子さん:表現をする時というのは、自分をさらけ出している状態で、無防備であるほど、人に伝わるパフォーマンスが出来ると思っています。ですが、オーディションや批評など、自分が評価される生活の中で、そのまま無防備の状態でいると、精神的に疲れてしまいます。表現者として開ききった状態と、そうでない状態を上手に行ったり来たりするのに、ATMは助けになると感じています。それと、演出家や先生の言う事をより理解出来たり、解釈の幅が広がるとも思っています。


ーーーJFC:響子さんにとってのパフォーマンスの時、クリエイティブになれるリラックスした状態とはどんなものなのでしょうか?

響子:言葉にするのは難しいですね、身体ではわかるんですけど。何かをしようとしていない状態。体、感情がどこにでも動き出せるようなニュートラルな状態でしょうか。

ーーーJFC:そうですよね、真ん中とか、ほどほどの部分という事なんでしょうけど、それも色々な動きのバリエーションを行う事で真ん中がどこかという事がわかるのかなとも思います。

響子さん:うんうん。


ーーーJFC:ドイツのフェルデンクライス事情はどのような感じですか?

響子さん:地域にもよるけど、マーケットは広がっていると思います。ハンブルグの総合病院でもフェルデンクライスプラクティショナーを募集していたり、日本よりも認知されている気がします。ドイツのフェルデンクライスコミュニティーも大きくて、毎朝開催されているレッスンにも100人近く参加者がいたりします。


ーーーJFC:すごいですね!海外のフェルデンクライス事情に触れることができてすごく新鮮な気持ちです。本日はどうもありがとうございました。

響子さん:JFCのみなさん、こんな風にコラボレートする機会をいただき、ありがとうございます。みなさんとのワークショップ、とても楽しみにしています。

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8/8 フェルデンクライス オンラインワークショップ vol.4
〜 From another point of view. 〜
1日のレッスンテーマ:「呼吸」Guest: ヴァインホルド響子

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4人のプラクティショナーがリードする4つの動きのレッスン。「違った視点から見つめる自分」をテーマに、いつもと違った視点から動く・感じる・思う・考える。いつもと違った視点から自分を眺め、深めていく1日です。
詳細はこちらから。

プロフィール
ヴァインホルド響子
兵庫県出身。ニューヨークの音楽院を卒業後、アメリカを拠点にコンサートやミュージカルなど、歌手として音楽活動を展開する。自身の体の不調を機に、体の仕組みについて関心を持ち、フェルデンクライスを学び始める。
ニューヨークとハンブルク(ドイツ)のプラクティショナー養成コースを経て、2019年に資格を取得。現在は、ハンブルク郊外を拠点として、プラクティショナーとして活動中。



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