世の中、実はどんなに努力しても、最後は才能にはかなわないものかもしれない。 〜 あの日、初めて鳥谷選手を見た日。
冒頭申し上げておくが、私はタイガースのファンではない。
これを最初にお話しておけば、後の気持ちの行き違いなどどうでも良い。
私は日々外苑前に通い、村上宗隆の成長を、彼の親御さんの立場で遠い目で、来期のスワローズの組閣をあれこれ案じるしがないツバメファンである。
今日はそんなことはどうでも良い。
大事なのは、鳥谷敬だ。タイガースには、全く興味はないが、彼のファンではある。その理由をこれから話す。
このブログは今から3年間前の2016年3月1日に書いた。そこををお含みきいただきたい。
【以下、転記】
3月1日である。
すでにプロ野球のオープン戦が始まっているが、
我がスワローズのオープン戦は4連敗中である。
私は関根監督以来、25年以上のスワローズファンだ。
銀行員のころ、戸田支店に勤務しており、近くに2軍宿舎があった。
その後、野村監督時代の中心選手となる選手が、
入団した時は、契約金の預金交渉などもお願いしに行ったり、時々、店頭には選手も来店していたのを覚えている。
その頃、仕事が早帰りの日は、夕方からよく神宮に試合を見に行っていた。店頭で見覚えのある選手がグランドで活躍していた。
それから10年近く経った頃、私は飯能支店の
取引先係(外訪営業)の総括責任者をしていた。
その年の夏、支店エリアにある聖望学園が、
初めて夏の甲子園に出場することになったのだ。
早速、後援会が発足され、飯能支店に後援会の口座が作られ、私が寄付金集めの事務方と口座の管理をすることになった。
ある日、寄付金の報告と通帳の返却をするために、学校の事務室に行った時、一通り話が終わった後、事務長が、 「せっかくだから、生徒の練習を見て行きますか?」
と言われ、グランドに連れて行かれた。
選手が打撃練習と守備を行っている。
「やっぱりいいですねえ。高校野球は。」
と言いながら、私は1人の選手に目が釘付けになった。
「彼は何という名前なんですか?」
「ああ、やっぱりわかりますか。」
と事務長は笑いながら、
「彼は鳥谷と言います。」
私は野球は好きだが、
さすがにまだ甲子園に出ていない、
地元の選手の名前までは知らなかった。
夏の甲子園に出場するほどのチームである。みんな上手なのは当たり前だ。
しかし、素人の私から見ても、彼のショートの動きは、他のどの選手のそれよりも、次元の違うものだった。
打球を追いかける最初の一歩から捕球、
送球までのフィールディングが、流れるようであり、まるでプロの選手を見ている様である。
身体全身から野球センスが溢れ出ていた。
「みんなかわいい生徒なので、
こういう言い方は憚られるのかもしれませんが、
やはり、彼は別格です。出来ればプロに行って欲しいと思います。先日はベイスターズのスカウトが挨拶に来ました。」
と事務長が言った。
私は頷きながら、才能というのは有無を言わさず、他人を認めさせることなんだなと思ったのだった。
結局、聖望学園は甲子園の初戦で敗退した。
それでも、彼は確か2安打以上だったと思う。
しかし、ショートを守っていた彼が、
リリーフでマウンドに上がったのには、
さすがに驚いた。
143キロの速球だったのを覚えている。
いずれにせよ、才能に満ち溢れていた。
彼はその後、六大学で三冠王を獲り、
阪神タイガースに入団し、侍ジャパンでも
活躍しているのは、ご存知の通りである。
それはそれは、エリートアスリートの中での厳しい競争である。
才能だけでここまで来れるものではないことはわかっているし、もちろん、相当な努力をしているのも間違いないだろう。
それでも、だ。
「世の中、実はどんなに努力しても、最後は才能にはかなわないものかもしれない。」
と思ったのは、これが初めてである。
それは決して努力を否定しているわけではない。
所詮、私みたいな凡人は、努力に努力を重ねるしかなく、
そしてようやく才能のある人間と同じ土俵に立てるということなのだ。
鳥谷選手を見るたびにそのことを思う。
そして、なぜ彼はスワローズに入団してくれなかったのか、ともも思うのであるww
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