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妄想香水

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《カジノのホール》の香りを妄想する

 いつの時代も社交場にはさまざまな人が集うもの。 元々は貴族のための場だったものが、近代以降にはブルジョワの人々も出入りしはじめる。やはりそれに連れて、その中の人間関係は複雑になって行ったようだ。それが夜のカジノともなれば一体どんな魑魅魍魎まで紛れ込んでいたことやら……と、ついサスペンスドラマのような妄想をしてしまう。 例えば女相手の詐欺師、身分を偽って潜り込んだ女、澄ました顔をして狡猾なやり手の御婦人…… 【ジョルジュ=バルビエのイラストレーション】 今回妄想する作品は

《浴槽、ブルーのハーモニー》の香りを妄想する

 まだ数枚の作品を観たくらいだったころ、ボナールに対して抱いていたイメージは《太陽光を感じる明るい絵が多い》といったものだった。あまり明確な輪郭がなく色と色は溶け合い、眩しくて目を細めながら見ているような感覚を抱く絵たち。 妻をモデルに数多くの裸婦画を描いたことも知る。きっと満ち足りた人生だったのだろうと思っていた。  一方で私の中にはいつも『心が満たされていたならば、わざわざ絵など描くだろうか?』という思いがある。絵を描く、という行為は描かない者の傍目よりもずっと根気と気