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シン•ルヴァンがもたらすサッカー文化の継承(2024.3.6 沼津vs仙台/4.17 沼津vs札幌)


1.ルヴァン杯の歴史とレギュレーション変更

前回の記事でJリーグ開幕から変わらぬ伝統の一戦に触れたが、
今年のJでは創成期から行われてきた手法を大きく変えたことがある。

Jリーグ開幕の1993年の前年となる1992年から1995年を除いて行われて来たJリーグカップと言われるルヴァン杯(ナビスコ杯)。
これまでは基本的に最上位カテゴリー(数年前より前年J1だった2チームも含む)のみに出場資格が与えられ、
J2以下の下位カテゴリーのチームサポーターにとっては他人事だった大会。
それが今年からはJ1〜J3のACL決勝トーナメント進出チームを除く57チームが、
同じ土俵に立って公式戦を戦えることになった。

さらにJリーグ側のレギュレーションの組み方で面白いのは、
トーナメント一発勝負で会場は下位カテゴリーのチームのホームスタジアム。
結果的にこの下位カテゴリーのスタジアムで試合を行ったことは大会をさらに盛り上げた。

私の地元沼津(アスルクラロ沼津/J3)の一回戦の対戦相手はJ1経験のあるベガルタ仙台(J2)になり、
おらが街にルヴァン杯という大きな大会が来るということ上位カテゴリーの強豪チームが来るということで、
日程が発表された時から試合の日が来るのが楽しみで仕方なくなった。

2.一回戦 沼津vs仙台

予選トーナメントは基本的に平日水曜開催。
仕事終わりで沼津のホームスタジアム愛鷹陸上競技場に向かう。

クラファンで改修された照明が明るい愛鷹陸上競技場


平日にも関わらず熱心なサポーターの多い仙台。

馴染みの黄色いサポーターが
アウェイエリアを陣取る

私は地元沼津サイドで観ていたが周りからは仙台サポーターの声の揃ったチャント(応援歌)に感嘆の声が多数。

入場時にはルヴァン杯のオーケストラ調の音楽が流れ、
学生時代にサッカーしていたグランドに本当にルヴァンが来たんだと感激。

試合はJ2仙台が主導権を握り常にリードをする展開も沼津も粘り、
終了間際の点の取り合いから逆転まで持ち込み沼津が3-2で勝利。

沼津3-2仙台
スタンドに勝利の報告

トーナメントの醍醐味、ジャイアントキリングを一発目のルヴァン杯観戦で観ることが出来、
さらに二回戦J1札幌との試合が決まりこの時にはまだ一ヶ月以上先の愛鷹での試合が待ち遠しくなりました。

3.二回戦 沼津vs札幌



そして、二回戦の行われる4月17日(水)。
駐車場が足りないかもというアナウンスがアスルクラロ沼津公式から出ていたので、
早めに到着して駐車場でパソコン仕事(こういう時ノマドワーカーは強い)。

試合30分前になりスタジアムに向かうと人、人、人。
J1札幌のユニホームを着た人が多く見られました。
夕飯はスタグルで済ませるつもりでしたがあまりの混雑に諦めスタンドへ。

平日にも関わらず静岡の僻地のスタジアムに札幌から多くのサポーターの姿がありました。

ゴール裏を陣取る札幌サポーター
メインスタンドにも多くの札幌サポーター


地元だからこそわかる愛鷹に行く事の面倒さ。
その面倒を負ってでも来るJ1のサポーター。
そしてJ1チームに2度目のジャイアントキリングを期待する沼津のサポーター。
平日夜とは思えない熱気を帯びた愛鷹陸上競技場。
周囲の森には鹿やら猿やらいると思いますが夜に響く大きな声にびっくりしたんじゃないかと思います(笑)。



試合は沼津の期待を現実的なものではないと思わせるような札幌の攻勢。
パス、フィジカルコンタクト、判断、すべてが速くて強いJ1基準を札幌が見せつける。
沼津もその基準に合わせようとスピードアップさせようとするとミスが出る。
札幌が開始10分に先制するとこのまま大敗もあり得るんじゃないかと思いましたが、
徐々に沼津もチャンスを作り後半9分には札幌のお株を奪う速攻で同点。
最高に盛り上がる沼津サポーターと愛鷹陸上競技場、
2度目のジャイアントキリングとスタジアムの大半が期待してたと思いますが、
同点弾なら1分後にスパチョークと小林の連携で札幌が勝ち越し。
さらに5分後に再びスパチョークと小林の連携から最後はスーパーなシュートであっという間に2点差。
その後沼津もチャンスを作るも札幌GKの好セーブにより反撃させてもらえず1-3で終了。
J1相手には簡単には勝てないことを思い知らされる結果になりました。

勝利の報告をする札幌選手たち

たった2試合ですがおらが街に来たルヴァン杯。
沼津にとっては収穫もありそれ故に逃した魚の大きさに悔しい気持ちもある試合。

4.上位カテゴリーチームとの試合の観客数増加

それは上位カテゴリーのレベルの高いチームと試合が出来るだけでなく集客面でも。
今期沼津のJ3リーグ戦は基本的に週末開催で平均観客数が1,817人。
ルヴァン杯の2試合は平日開催にも関わらず仙台戦が1,600人、札幌戦に関しては平均の約倍の3,455人であった。

この観客数の増加は沼津に限らず上位カテゴリーのチームとの試合で多く見られた。
私的にその現象がよく見られたのが下記の試合。

【一回戦】
北九州(J3)1-0 大分(J2)4,412人
八戸(J3)1-2 鹿島(J1)4,844人
【二回戦】
今治(J3)1-2 神戸(J1)5,097人
北九州(J3)1-2 町田(J1)4,221人
琉球(J3)2-1 G大阪(J1)5,406人
鳥取(J3)2-5 浦和(J1)7,677人
【三回戦】
富山(J3)1[5PK4]1 神戸(J1)8,223人
琉球(J3)0-1 C大阪(J1)7,034人
【プレーオフラウンド】
富山(J3)1-2 札幌(J1)7,701人

上記該当チームの今季のリーグ戦のホームゲームの平均観客数は下記の通り。

2024年リーグ戦ホームゲーム平均観客数(6/9現在)

リーグ戦は基本的に週末開催の開催でルヴァン杯はプレーオフラウンドの富山以外は平日開催のため、
いかに上位カテゴリーとの試合に多くの人が訪れたかがわかる。

5.経済効果とサッカー文化の継承


いつもより多くの人が訪れたこともあり想定外のことも起こった。
愛鷹では駐車場が足りずにスタジアムに入れなかったという話もあったし、
他のスタジアムでも人の輸送能力が足りずにスタジアムから出るのに数時間かかったという話もチラホラ。

しかし、悪いことばかりではなく良いこともたくさんあった。
鹿島サポーターが多く訪れチケット完売になった八戸では近くの宿泊施設が軒並み満室。
浦和サポーターが大挙して訪れた鳥取では鳥取行きの飛行機がほぼ満席。
多くのサポーターが普段は行かない街で多くのお金を落として経済効果をもたらしている。
具体的な話はこれから先になると思うが昇格した際のシミュレーションが出来、
地域への貢献という面でも街ぐるみで昇格の機運が高まるところも出てくるかもしれない。

また試合会場でもJ1三十年の歴史を刻み文化を持ったサポーターの応援に、
感銘を受ける新鋭チームのサポーターの声もSNSを見ると結構な数上がっていた。
私のいた愛鷹でも札幌サポーターの迫力に「凄い」と感嘆の声を漏らしカメラを向ける人も多かった。

今までは天皇杯でしかその機会がなくその天皇杯でも必ずしも下位カテゴリーのホームで試合が出来るとは限らなかった。
今年の大改革によって産まれ変わったシン・ルヴァンによりJリーグ全体のソフト面、ハード面の底上げを期待せずにはいられなくなった。

今日のプレーオフラウンドにより勝ち残ったのはJ1のみとなった。
(ACL決勝トーナメントに進んでたことで甲府も残っていますが)
ルヴァン杯ベスト8となりこれからまた激しい試合が多くなるが、
来年のルヴァン杯もどんなふうになるのか今から楽しみで堪らない。



おじゃ

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