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2019.6.15 清水vs横浜FM

2023年のJリーグが開幕しました。

勝ったチーム、負けたチーム、引き分けに終わったチーム明暗は分かれましたが、
長いシーズンずーっと勝ち続けることもなければ調子の良さが続くこともありません。
(それこそ年間通して勝ち続けたのは2020年の川崎ぐらい)

それでもタイトルにたどり着いたチームはシーズン中にも進化し続け、
時に敗戦を糧にし教訓にすることで未来の試合の勝ち点に繋げることも多々あります。

今日紹介するのは2019年終盤の怒涛の7連勝でFC東京を逆転して優勝した横浜Fマリノスの、
逆転優勝のキーとなった清水エスパルスとのアウェイゲームです。


「好事魔多し」
この試合をひと言で例えるならこの諺が当てはまる。

この試合はリーグ中盤の第15節。
17試合で折り返しを迎えるJリーグではそのシーズンの勢力図がだいぶ固まって来た時期。
このシーズンマリノスは2年目のポステコグルー監督のもと攻撃サッカーにさらに磨きをかけていた。
時々、完封を喫するものの(△ vs鳥栖0-0、● vs札幌0-3、● vsC大阪0-3)コンスタントに勝ち点を重ね、
前年残留争いをしていた勝負弱いチームの姿は消え上位争いをしていた。

対する清水は開幕から勝ち点を積み重ねられず苦戦。
頼みのドウグラスが不整脈で出遅れ勝ち点を取りこぼす試合も多く下位に沈んでいた。

下馬評はマリノス優位で実際に前半はほぼ一方的なマリノスペース。
序盤にティーラトン、マルコス、遠藤が警告を受けたのは不安材料だったが、
理想的なパス回しでエスパルスを振り回すと32分先手先手で繋いだパス回しからエースFWエジガルジュニオの得点で先制。
試合の展開的にここからはマリノスがあと何点取るかという雰囲気になった。

前半はこのままマリノスリードで終了。

ハーフタイムには清水のオレンジウェーブと
マリノスのトリコロールマーメイドが
合同でショーを実施


後半開始前にマリノスにアクシデント。

前半の競り合いの際に負傷していたDFの要チアゴマルチンスが交代。
右サイドバックに入っていた和田がCBに入り右サイドバックには広瀬が入る。
結果的にこの交代によりペースがエスパルスに傾く。
前半チアゴが空中戦に強いドウグラスを封じていたが和田は競り合いに強いタイプではなくここで起点を作られる。

エスパルスペースになりセットプレーも増えた59分コーナーキックをドウグラスが折り返し最後は松原が押し込む。
エスパルスホームIAIスタジアム日本平のボルテージも上がりここから一気にエスパルスペースに。
ドウグラスを起点に後半から入ったルーキー西澤が走り回り次々にチャンスに絡む。
西澤が二度三度決定的なシュートを放つがマリノスGK朴一圭が脅威的な反応でシュートをストップ。

それでもエスパルスペースのまま試合は進むが80分一本のパスで仲川が裏を取りマリノスに追加点。
これが調子の良い上位と良い流れでも勝利に結び付かない下位の差かと思われたがここでマリノスに水を差すアクシデント。
キックオフにするため清水が中央に返したボールをマリノスのマルコスがスタンドにボールを蹴り込みこの日2枚目の警告で退場。

マリノスは残り10分とロスタイムを10人で戦うことになったがそれでも強気の姿勢で攻めに出る。
89分前線から追いかけ回しエスパルスGK西部のミスキックを誘いマリノス遠藤がボールを奪いかけるが、
エスパルスMFヘナトが足腰の強さでブロックしマイボールに。
そのまま攻めに出たマリノスの薄くなった守備陣のサイドに起点を作り最後はドウグラスが押し込み同点。

さらに焦ったマリノスがリードされてるかのように前線に選手が飛び出し、
91分ティーラトンが前に前線にボールを入れようとしたところをエウシーニョがカットしドリブル。
エウシーニョがボールを持ち出した時点でエスパルス攻撃陣とマリノス守備陣は同数。
エウシーニョが引きつけるだけ引きつけると左サイドでフリーになった西澤にパス。
西澤はこの日再三ゴールを阻まれていた朴一圭の脇を抜けるシュートを放ちエスパルスが逆転。

エスパルスが劇的な逆転弾でマリノスに勝利し日本平は大いに盛り上がりました。



この勝負を分けたのは何かひと言で言えば「気持ち」ではないかと思います。
気持ちという言葉は実に曖昧で便利な言葉だと思います。
それでも何故私が敢えてこの言葉を使ったかと言えば大事な場面での「球際」にマリノスが負けていたからです。

エスパルスの89分の同点ゴールの場面、先述のように遠藤とヘナトの競り合いがありました。
ヘナトの身体の強さもあったと思いますがハイラインのサッカーをしている以上、
一対一で負けてしまうと途端に数的同数もしくは数的不利が待っています。
この選手遠藤と激突したヘナトはボールを自分のコントロール下で自由に捌ける状況にありました。
この場面ぶつかり合うのであれば最低限ボールと足が当たるなりしてスローインにするか少なくともヘナトが自由にコントロールすることができない状況にする必要があったと思います。
また実際に痛かったのかもしれませんがヘナトと当たった遠藤はその場にうずくまってしまいました。
当たり負けした以上ヘナトからボールを再度奪取するのは難しいにせよすぐに立ち上がって後方からプレッシャーをかけるべきだったと思います。

また、91分のティーラトンから前線へのボールもあっさりエウシーニョに奪われすぐに数的同数になりました。
この場面で前線の足元に入れるのであれば少なくともエスパルスDFとの間に身体を入れて一度ボールを確保するべきでした。
(前線との意図があっていなかったのでもしかすると裏でもらいたかったのかも)。



いずれにせよ局面でのボールに対する執念がエスパルスの方に感じられました。
マリノスは後半押されながらもリード出来たことでフワッとしてしまったところもあったと思います。
最後の場面、レギュラーの座を奪われていた広瀬が後半からのチャンスで結果を残したかった気持ちもわかります。
それでも「勝ち」に焦点を当てるのであればより最終盤はボールを大事により高い集中力で相手のポジションを見極めるべきだったと思います。

まさかの逆転負けで浮かない顔で引き上げる選手たち


結果的にこの敗戦以降このシーズンのマリノスは終盤リードで闇雲に攻めるのではなく、
状況に応じて守りに入ることも選択肢に入れるようになりました。
より勝ちに対する気持ちを見せるようになったと言えます。

またこの試合で暴挙に出て退場したマルコスジュニオールは試合後涙を流しチームメイトに謝罪。
チームメイトは苦言を呈しつつもマルコスを孤立させることもなくそのあとも同じように接しました。
これは2022年の唾吐きで退場したアンデルソンロペスの事例にも同じことが言えますがチームの一体感に繋がったと思います。

「心理的安全性」が高まると組織への貢献性が高まるとの言葉を聞いたことがありますが、
これはサッカークラブにもあてはまることです。
この時の大逆転負けはマリノスにとって大きな痛手でしたが、
エスパルスによって見せつけられた勝利に対する気持ちとマルコスの退場によって見直すことが出来た一体感はチームの進化を加速させました。
選手たちが負けに対して真摯に向き合っていたことも進化の加速の要因になったと思っています。

最終的に15年ぶりのリーグタイトルを獲ったこのシーズン今でもこの試合があったからこそだと思っています。
勝ちから学ぶことも多いですが勝ち続けることがないからこそ負けをどう活かすかが今季もきっと大事になってくると思います。



おじゃ

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