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【メセナプラン向け】ゲームゼミ過去記事アーカイブ

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2022年5月の記事一覧

「見たいもの」だけが正当化される時代に「文学」は成立するのか

ソーシャルネットワーク全盛の現代社会では、ユーザー1人1人の声がとても「1人」では作り出せない容量で届くようになった。その結果、毎日何かしらが「炎上」している。 この状況は、行政や大企業の問題を早期に発見、批判するデジタルネイティブの民主主義を生み出したとも言えるし、一方で単純に怒りや憎しみを根拠とした「破壊」をただもたらすポピュリズムに過ぎないのではという懸念も、「炎上」を契機にした誹謗中傷に始まる「同調圧力ディストピア」の現代社会では真っ当なものだと思う。 このポピュ

シン・ウルトラマン批評 異星人は日本に何を期待したのか

『シン・ゴジラ』の後継作、ではない外堀から固めていくような議論になるが、そもそも本作はエンタメとして申し分なく面白い。構成としては樋口監督・庵野脚本のタッグの「シン・」プロジェクトの成功作『シン・ゴジラ』を正当進化させたような構成になっている。 つまり、長年積み重ねられたシリーズ作品のレガシーを、岡本喜八風の演出とともに継接ぎし、現代的なCG表現と庵野風の脚本をミックスし、その上で戦後・高度経済成長期における原作から大きく変貌した日本を取り巻く環境のテーマとの整合性を図る…

『花束みたいな恋をした』にみる「大人たち」の本質的な”うざさ”

客観的に言って、今の若者は不幸と言えるのではないだろうか。 バブルが崩壊し、震災が2度襲われ、国際情勢が悪化し、少子高齢化がボトルネックとなり、そこに来てパンデミックとウクライナ危機である。ネガティブな話題はいつの時代も尽きない。ポジティブな話題がせいぜいゲームとアニメとマンガだ(それはそれで幸福だが)。 だがこうした状況の悲惨さをもっとも染み入るのは、恐らく一瞬の悲劇よりも、しみじみと続く絶望なのだと思う。例えば以下のような意見が当たり前のように日夜テレビで流されると、

『オーバーウォッチ2』のベータは何故失敗したのか?良いゲームが「良いサービス」にはなれない理由

Activision Blizzard期待の新作『オーバーウォッチ2』(以下、OW2)のベータが開始されたが、その評判は芳しくない。筆者自身、なんとかキーを受け取ってプレイすることになったが、その批判の根拠をすぐに理解することになった。 コンテンツが少ないのである。本ベータに用意されたものは「5v5の設計」「新ヒーロー」、更に製品版に搭載予定の「PvEモード」など決して少なくはないのだが、2016年にリリースされて以来6年ぶりとなる新作から期待されるほどではなかった、という