見出し画像

ずっと開けられないグッズがある

 グッズの話をしよう。
 ずっと開けていないグッズがある。グッズ商品はそこそこの頻度で買うが、1つだけ新品状態のまま保管しているものがある。
 用途が明確に設定されているグッズは使ってこそだと思っている。日々の生活に二次元が侵食し、豊かになる。しかし、どうしてもこれだけは使いたくても使えないのだ。
 それは昔、コミケで買った同人抱き枕カバーだ。描かれているキャラクターはあらゆる創作物の中で一番好いている存在で、今でもそれは変わらない。定期的に読み直し、思いを馳せている。
 彼女の抱き枕カバーを買ったのは5年程前のことだろうか。そのジャンルは酷くマイナーで、当時ですら島中に2~3サークル程度出ているだけだった。公式もあまり展開しておらず、グッズもそう多くなかった。当然、抱き枕カバーなんてなかった。いや、実際には俺が知らないだけで、出ていたのかもしれないが。
 ある時、1つのサークルが彼女の抱き枕カバーを作った。個人用らしくあまり数は用意していなかったらしいのだが、なんとか最後の1つを手に入れることに成功した。当時の俺は歓喜した。抱き枕カバーはグッズの中でも単価が高く、同人でもそれは同じだ。抱き枕カバーにどこか、ステイタスのようなものを感じていた節はあったのだ。
 が、ここで1つ問題があった。これが最後の1つなのだ。マイナージャンルの。もう、手に入る望みはない。公式が今更出すとは思えないし、サークル側も次の予定はないと言っていた。そうなれば使えるわけがない。汗や皮脂で汚してしまうなど出来るわけがない。
 では飾っておくか? それも怖い。何かの事故で汚してしまう懸念があるし、それこそ虫が止まったりしたら嫌だ。洗濯すればある程度は大丈夫だろうが、消えなかったり蓄積するものがある。
 それが理由で、未だに彼女を袋から取り出すことができない。抱き枕カバーのカバーなんて商品、だれか出してくれないだろうか。そうすればきっと俺は袋から彼女を出すことができるだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?