高貴な心で、信条通り正しく:『自省録』
行動と思考は相反するものである。それらに真剣に向き合ったことがあるならばこの両立の難しさは身に染みていることだろう。ところがこの2つは平等ではない。その良し悪しはともかく、思考なしで行動のみという生き方もできるだろう。しかしその逆は不可能である。
これは思考を放棄する理由にはならない。もし直感と経験だけをもとに行動するなら、それはほとんど動物と同じだろう。人間は行動と思考を、理性と感性を天秤にかける。その絶え間ない試みのひとつが表現されているのが『自省録』という本である。