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思考のしおり

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#読書感想文

三島由紀夫『不道徳教育講座』

子供のころ「道徳」の授業があった。他の教科と同じように教科書が1人ずつ配られて、たいていの授業はそれを読む形だったと思う。一応感想文のようなものを書いたはずだが、内容はあまり覚えていない。確か平和や差別についてなどさまざまな話題を扱っていたはずである。 頭に残っていないのは我々子供の不手際でもあるのだが、当時の素直な印象としては、先生方もその扱いに若干困っていたように見えた。算数などと違って明確に答えを出して答案で評価するわけにもいかないので当然だろう。 私の世代は一応は

見えるものと感覚:『色彩との対話』柳宗玄

ミニマリズムという考えは注目集めている考え方のひとつです。豪華な装飾よりも、実用的な美しさを追い求める動きも増えているのではないでしょうか。 いまや美術品だけが美しいものの代表だという人は少ないでしょう。デザインという言葉は建築から日用品までさまざまな場面で使われる言葉になりました。 日用品の中に美を見出す、という考え方について日本における先駆者として柳宗悦が挙げられます。 用と最も厚く結合する雑器に、工藝美の最も健全な表示があるのを説こうとするのである。用器と美器とは

「意識と本質―精神的東洋を索めて」を読んで

物事の「本質」というものは時代を問わず哲学の主題のひとつとして扱われてきました。プラトンのイデア論は言うまでもなく、またこれに対する考察だけでも数多くあります。 しかし、同じ「本質」についての議論で言えばイスラーム哲学や中国、日本などでのいわゆる「東洋」の思想について触れた本は比較的少ないものです。「東洋」という分類が正しいかはひとまず置いておくとしても、やはりこれらの思想は馴染みがないという人が多いのではないでしょうか。 また、最近はマインドフルネスや瞑想ブームで禅の考