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JAGATARAと非人間的思考

どういう風の吹き回しか、大人買いしていたJAGATARAのアルバムをまとめて聞いていたが、それを通して改めて気づいたこと。「ゴーグル、それをしろ」(『ニセ預言者ども』)という曲で言われるゴーグルとは、カオスに立ち向かいつつそれから身を守る遮蔽物のシンボルに他ならない。ドゥルーズ哲学の核心に、カオスに抗して身を守る枠という考え方があって、これに関しては小倉拓也『カオスに抗する闘い:ドゥルーズ・精神分析・現象学』(人文書院、2018年)が見事に解明しているが、要するに、通常の人間の知覚を代表とするカオスに抗する枠組みに安住することなく、他方でカオスに巻き込まれて崩壊してしまわないように、人間的ではないような枠組みを形成するということなのだが、ゴーグルもその一つ。光やBig Door等々、アケミの歌詞にはこれに関連する事柄が無数に出てくる。「知覚の扉」(ハクスリー)は開きすぎると私たちを崩壊へと導くのだ。しかし、この点に関してとても敏感だったアケミはカオスに身を投じざるを得なかった、ということを思いながら一連のアルバムを聞き続けると非人間主義的思考というものの過酷さと困難とを思わざるを得ない。(以上とは関係ないが、「オレにはロック雑誌なんかいらない」(「Music Music」『ごくつぶし』)と連呼されるのを聞くと、アケミってパンタというか頭脳警察が大好きだったんだな、と改めて気づかされた。Zappaの影響が圧倒的であること——例えば、「みちくさ」『ニセ預言者ども』——にも驚いたが...)
(2019年6月11日記)


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