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仕切り直し樗堂一茶両吟/藪越やの巻

     十七

 春は立テども部屋住の窓     一茶
花の木は雪のふるとし根枯して   樗堂

初ウ十一句、花の定座に<枯れ花>は珍しく、樗堂にしては肝の据わった一句。

     〇

花の木は はなの木の大写し

雪の 大雪が

ふるとし 積もり積もった年の事でした。

根枯れして 根をやられてしまいまして、、、、、。

     〇

 はるは たてども
 へやずみの まど

はなの きはゆきのふるとしねがれして

悪貨と良貨がある如く況や花とてや。いいときばかりじゃないのですから、と。

(元が悪ければ、花も実もつきません)

     〇

憎々し気な花や、鼻つく花もありながら、それでも花は花。

わざわざ花の座で云うことでないと思われがちですが、アンビバレンスな表現や、時に、悪しざまに罵るようなだ歌仙も遺されていたのです。

老いたるは御簾より外にかしこまり   芭蕉
 花の名にくしどこが楊貴妃      彫裳
付ざしを中でばはるゝ桃の色      黄山

打よりての歌仙(花入塚)

樗堂の場合は、<枯れ花>を据え、凡そ世にあるであろうと思われる<有の儘の花の姿>を句にしていたのです。

     〇

後の代の松山の人 伊丹万作は「戦争責任者の問題」書いていました。岩波書店が「きけわただつみのこえ」を出版していたすこし前のことです。もとより、散る花びらのもとに、多くの若者たちの骸が埋まっていた先の戦争のことなど、十八世紀末の俳諧師には、豪も預かり知らぬことだったのですけどね。

3.9.2023.Masafumi.

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