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風早ハ兎文一茶両/門前やの巻

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 居風呂焚て尺八を吹く
此度の調市ハ都生れなる    一茶

名ウ三句、首振りもなかなかのもの、相当な方からお習いになったに違いない。

     〇

此度の このたびの。

調市ハ てうし、ちょうし(調子)。音の高低のぐあい。また、音の速さのぐあい。リズム。拍子。

都生れなる 「みやこ・うまれ」は、褒め詞。「なる」で、その状態になったことを強調。

     〇

 すゑふろたきて しやくはちをふく

このたびの てうしはみやこうまれなる

尺八の調子が、都のそれを思わせますと、最上級の褒め詞を亭主にかけていたのです。

     〇

川柳に

総領は尺八を吹くツラに出来     可笑

以下引用です。

尺八を吹くにはかなり技術がいりそうである。首を縦にふったり、あごの角度を変えたり、息を吹き込んでいく姿はときには滑稽のように見えてしまうものだが、尺八を吹く人は総じて意外なほどさまになっている。

「総領は尺八を吹く」はありそう、「総領は尺八を吹くツラ」はなるほど似合うだろう、が、なんてことはない。しかし、掲句の見事さは「ツラに出来」と言い切った見立てと批評眼にある。それによって一句は劇的に変化した。そうか、生まれながらにそういう顔に出来ていたのかといたく納得した。幸か不幸か、自分はその顔に生まれてこなかった。

樋口由紀子「金曜日の川柳」『ウラハイ=裏「週刊俳句』

17.10.2023.Masafumi.

なお、余外ながら「ざんじ」の句の上に「療クス霍乱 中暍卒史者」、「居風呂」の句の上に「火追燖アタゝムル ユガク 炮ツゝミヤキ 火通アタゝムル」と一茶の書き込みがありました。

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