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樗堂一茶両吟/蓬生の巻 6

   桐落ちてあつささりゆく夕の月 
   束ねし柴に木通三ツ四ツ         一茶
 初オ六句、荷駄に秀歌を結び付け。
     〇
  束ねし
   結束。
  柴に
   折り焚く柴。
  木通
   あけび。通草、山女、丁翁。アケビカズラ、アクビ、アケツビ。本草図譜に「軟らかに熟すれバ紫白色自ら裂けて肉あらはる美味なること野木瓜の如し」と。
  三ツ四ツ
   あら、珍しや。
     〇
      あつさ
 きりおちて   ゆく/ゆふのつき
       さり
 たばねししばに
 あけびみつよつ
 季節のうつろいを詠んだ前句に、薪を付けて「いずれ寒くもなりましょうから」と応じた表六句、結びの句。そこに、
  ますらをがつま木にあけびさしそへて暮るれば歸る大原の里  寂然
 と、「山家集」の秀歌をそっと添えていたのです。
     〇
 「売りものには紅をさせ」と。
     *

 蓬生の巻 発句~六句

   春 蓬生蛙妻乞ふ小声哉          樗堂
   春  土瓶をみかく水長閑也        一茶
   春 八重霞車とゝろく此なれや        仝
   雑  流行そめけるさゝらこきりこ      堂
 月 秋 桐落ちてあつささりゆく夕の月      仝
   秋  束ねし柴に木通三ツ四ツ        茶


■画像は、あけび。

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