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仕切り直し樗堂一茶両吟/藪越やの巻

     十九

 普賢の像を直す陽炎        一茶
名産の海苔のあつもの盛並べ      ゝ

名残り表一句、名残になったところで、膝送りの順を変え、これより一茶が長句を詠み進めます。

     〇

名産の 「名物に旨いもの無し」と雖も、、、、

海苔の 江戸前は海産物の宝庫だった。

あつもの 「羹に懲りて膾を吹く」の<あつもの>が

盛並べ 器に盛られて並んでる。

     〇

 ふげんのぞうをなをす
           かげろふ

めいさんの のりのあつものもりならべ

謡曲「江口」あるいは小泉八雲の怪談でも、内容はかなり難解な仏法を説いていました。それが名残に入るや否や「さあ召し上がれ」とばかりに海苔の羹が持て成されていたのです。

     〇

虚を突いたようなこの展開は、禅僧などが画いていた俳語に近いものがあります。仙厓はスプーンを描き「生かそふところそふと」の語を添えていました。

また「母恵夢」と書いてポエム。古くは「他抜きもなかの権太」として知られ、そのキャッチコピーが「だまされてくうてみい!!」でした。

     〇

さて、そんな誘い文句に乗って「海苔のあつもの」が食膳に並べられているのです。

羹はあつあつの汁もの。「あつものといふは今の吸物の事也 旧記に吸物と書たる本もあり 本名はあつもの也 羹の字をあつものとよむなり」と、『貞丈雑記』の記事がありました。

5.9.2023.Masafumi.

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