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とくとくの水麦士一茶/梅の木のの巻

Berjaln-jalan, Cari angin.
     07

 あらまし虫の撰さたまる
無骨なる人に仕へる秋のすへ       麦士

初ウ一句、裏入り折り立の句、人事「つかへる」でお伺いを。

     〇

無骨なる ぶこつ・なる、堅物(煮ても焼いても喰えません)

人に ひと・に、人が人に。

使へる つかへる、そばにいて奉仕すること、役所務めも。

秋のすへ あき・の・すゑ、末は、果て、奥、終り。晩秋。

     〇

 あらまし むしの えらび さだまる

ぶこつなるひとにつかへる/ あきのすへ

<撰ぶ>に付けて、<人に仕える>の人事句、麦士とて宮使いの士、おそらく、にっこり笑って人を斬ってきたことでしょう。この句なども、ぐぐいと、間髪入れずに人事の機微に迫っていたのです。

     〇

歌仙という文藝は、文台を離れれば即ち反故と云われていましたので、一座するものたちの共有するものであったとしても、ここで取り扱われた個別で個人的なやりとりに関して、第三者がとかく物言うことは控えていたのです。では、評論はどうしてかというと、取り扱われて内容を「俳語」という言葉のなかで「一般化」して論議していたのです。

それは、例えば、俳諧の宗匠が句を選ぶ作業に近いものだったのです。人気の師匠なら一日、千や二千の、いや五、六千の句にあたります。なかには、惚れた腫れた、切った張ったの句もあったことでしょうが、いちいち個別な内容に立ち入ることは全くしないし、ましてや、それを他言することもなかったのですから。

     〇

要は、数あたることです。(この折、麦士がどうであったとか、一茶がどうだとか、瓦版ならいざ知らず、俳諧で論じることではなかったのです)

今は、各種のデータベースから検索できますので、俳諧の宗匠のようにはいかないのですが、かなりの確率で<句意>を探れるようになっていますので、まさにAIさまさまといったところです。

     〇

どういうことか手のうちのひとつをお見せしましょう。

日文研の俳諧データベースがあります。語句検索で「つかへ」と打つ、すると27件がヒットします。そのなかから「人に仕へる」に近い用例を探して、句にあたっていくのです。

1、なれてもつかへーたてまつらん 芭蕉一座連句139巻 百吟「いとすずしきの巻」98句。

みづらいふわつぱも清き渚にて      信章
 馴れてつかへたてまつる院       桃青
そも是は大師以来の法の華        似春

「いと涼しきの巻」97.98.99句

2、あはうつかへはーみなつかはれる 芭蕉一座連句139巻 歌仙「つふつふとの巻」24句。

持鑓の一間所にはひりかね        望翠
 あはうつかへば皆つかはれる      土芳
宵の口入みだれたる道具市        九節

「つふつふとの巻」23,24,25句

と、まあ、こんなことをずっとずっと続けて、やっと「無骨なる人に仕へる秋のすへ」に帰るという、年寄りの手慰みの一端をばご紹介した次第です。

まことにお恥ずかしいことで、、、、、、、

     〇

わが家の居間に、鳴雪翁の軸がかかっており、

二君には使へ申さぬ紙子かな

と。

6.11.2023.Masafumi.

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