見出し画像

風早ハ兎文一茶両吟/門前やの巻

     36

春なれや花の旅かさ花なれや
 きのふハとろゝ今日ハくこ飯   執筆

名ウ六句、亭主の懇ろな持成しに感謝した挙句でした。

     〇

きのふハ 昨日は。

とろゝ とろろは、山芋をすりおろした料理。

今日ハ けふは。

くこ飯 枸杞飯、クコの若芽を炊きまぜた飯。(クコの実のまぜご飯もあるようです)

     〇

はるなれや はなの
       たひかさ
            はななれや

 きのふはとろゝ けふは くこめし

亭主は客の行く末を寿ぎ、客は亭主の持成しに感謝する。挙句を執筆としたのは、ときに賞賛が過ぎて徒となる恐れに、先手を打って消しにかかったのは一茶の機転だったようです。挙句を第三者の手に委ね、主客の対応を一歩離れたところから見せることで、歌仙という文藝に客観性をもたせようとしていたのです。これにて満尾いたしました。

     〇

くこ飯には

中古の僧慈眼大師 平生枸杞飯を嗜みて延年なりし  (滑稽雑談)

と。

とろゝには

  餞乙劦東武行

梅若葉まりこの宿のとろゝ汁     芭蕉
 かさあたらしき春の曙       乙劦
雲雀なく小田に土持比なれや     珍磧

「猿蓑」巻五に。

     〇

門前やの巻  名ウ一句~六句

   冬 初雪の七言対句おもしろく     茶
   雑  居風呂焚て尺八を吹く      文
   雜 此度の調市ハ都生れなる      茶
   雜  鳥の真似も老行の果       文
 花 春 春なれや花の旅かさ花なれや    仝
   春  きのふハとろゝ今日ハくこ飯  執筆 

長々おつきあいありがとうございました。「風早ハ兎文一茶両吟/門前やの巻」これにてお開きといたします。いづれまた、どこかでお会いいたしましょう。 

17.10.2023.Masafumi.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?