風早ハ兎文一茶両吟/門前やの巻
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春なれや花の旅かさ花なれや
きのふハとろゝ今日ハくこ飯 執筆
名ウ六句、亭主の懇ろな持成しに感謝した挙句でした。
〇
きのふハ 昨日は。
とろゝ とろろは、山芋をすりおろした料理。
今日ハ けふは。
くこ飯 枸杞飯、クコの若芽を炊きまぜた飯。(クコの実のまぜご飯もあるようです)
〇
はるなれや はなの
たひかさ
はななれや
きのふはとろゝ けふは くこめし
亭主は客の行く末を寿ぎ、客は亭主の持成しに感謝する。挙句を執筆としたのは、ときに賞賛が過ぎて徒となる恐れに、先手を打って消しにかかったのは一茶の機転だったようです。挙句を第三者の手に委ね、主客の対応を一歩離れたところから見せることで、歌仙という文藝に客観性をもたせようとしていたのです。これにて満尾いたしました。
〇
くこ飯には
中古の僧慈眼大師 平生枸杞飯を嗜みて延年なりし (滑稽雑談)
と。
とろゝには
餞乙劦東武行
梅若葉まりこの宿のとろゝ汁 芭蕉
かさあたらしき春の曙 乙劦
雲雀なく小田に土持比なれや 珍磧
「猿蓑」巻五に。
〇
門前やの巻 名ウ一句~六句
冬 初雪の七言対句おもしろく 茶
雑 居風呂焚て尺八を吹く 文
雜 此度の調市ハ都生れなる 茶
雜 鳥の真似も老行の果 文
花 春 春なれや花の旅かさ花なれや 仝
春 きのふハとろゝ今日ハくこ飯 執筆
長々おつきあいありがとうございました。「風早ハ兎文一茶両吟/門前やの巻」これにてお開きといたします。いづれまた、どこかでお会いいたしましょう。
17.10.2023.Masafumi.
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