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樗堂一茶両吟/蓬生の巻 29

   関の惣嫁に石投る月
  秋霜に大阪雪駄辷る也           樗堂
 名オ十一句、このあたりから市井の生活に戻します。
     〇
  秋霜に
   霜は冬、これを秋と。
  大阪
   大阪の、あるいは、大阪で。
  雪駄
   表は竹皮を編み、裏は皮をはった履物。元は茶道ゆかりのもの。
  辷る也
   すべるなり。「落ち」です。
     〇
 せきのさうかに
 いしなげるつき
 あきしもにおおさかせった/すべるなり
 惣嫁に雪駄、女に男。頃は晩秋、冬近き。といったとことでしょうか。
     〇
 前景
 「おや、雪駄かぇ」「会いに来たのもおまえのため」
 「恰好つけて」「利休拵え !!」
 「おお寒」「とっととっと危ない、よく辷るんだよ」
 中景
 「まるで頼りにならないね」「面目ない」
 「どっちかと云やぁ」「先は見えてるってのかい」
 「そうさね、あんたも辷る」「大阪も辷るってか」
 遠景
 「おいおい徳川さまの世時さね」「そうだろな」
 「のんびりしてんじゃないよ」「えっ」
 「上り下りが忙しくなるからね」「すべってられないってことだな」
     〇
余外のことながら
雪駄が江戸に下りますと、「与力同心、力士に鳶」そうした小粋なお兄さんたちの履物になっていきました。
同心雪駄チャラチャラと。
■画像は、大阪冬の陣。

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