見出し画像

鶴ニ乗リテ樗堂一茶両吟/初雪やの巻

     26

売のこる菅菰捨し北時雨
 煩ふ馬の薬問ひけり        樗堂

名オ八句、いけませんなぁ、こう冷えますと人も馬も。

     〇

煩ふ わづらふ、病む。

馬の うま・の。農耕、運搬、軍馬、競走馬に。

薬 くすり、後の時代ながら、富山の売薬に「牛馬一方散」がありました。

問ひけり とひ・けり。問ふは、問求めること、けりで結末。

     〇

うれのこるすがこもすてし/ きたしぐれ

 わづらふ うまのくすり とひけり

季節の変化に耐えきれず馬の薬を求めました、と。かつて人々は牛馬一体で暮らしていたのですから、そりゃあ心配なことだったのです。

     〇

後の世の歌ながら

 供養塔

  数多い馬塚の中に、ま新しい馬頭観
  音の石塔姿の立つてゐるのは、あは
  れである。又殆、峠毎に、旅死にの
  墓がある。中には、業病の姿を家か
  ら隠して、死ぬるまでの旅に出た人
  のなどもある。

人も 馬も 道ゆきつかれ死にゝけり。旅寝
かさなるほどの かそけさ

道に死ぬる馬は、仏となりにけり。行きとゞ
まらむ旅ならなくに

邑山の松の木むらに、日はあたり ひそけき
かもよ。旅びとの墓

ひそかなる心をもりて をはりけむ。命のき
はに、言ふこともなく

ゆきつきて 道にたふるゝ生き物のかそけき
墓は、草つゝみたり

釈迢空「海やまのあひだ」

と。

25.10.2023.Masafumi.

余外ながら、わが家の先々代祖父文吉は売薬業を営んでいました。あいにく、牛馬の薬の記録はほとんどありませんでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?