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歯性感染症による敗血症

昨年11月、俳優の渡辺徹さんが亡くなられたというニュースに接し驚きを覚えましたが、その死因となってしまったのが敗血症という病気でした。この敗血症ですが、歯科とも関連することがあるのでご紹介します。
歯科に関する敗血症は歯性感染症が原因となって敗血症に悪化してしまうものです。敗血症とは、傷口などから細菌が血液に入り込んで感染症を引き起こしてしまう重篤な病気です。
歯科では抜歯などを行うと一時的に菌血症という症状が起こります。菌血症とは、傷口から細菌が血液中に絶えずあるいは断続的に入り込んでいる状態のことです。歯科では抜歯した傷口や歯周病による出血などから細菌が入り込むことで起こります。多くの場合は、細菌が血液中で増殖することはありません。無症状のまま免疫力が勝って細菌は消失します。このように傷口から細菌が血液中に侵入しただけの状態が菌血症です。ただまれに発熱、発汗、全身倦怠感が一時的に表れることがあります。
一方、免疫力が弱まっていると菌血症で侵入した細菌が全身に波及して細菌感染症を引き起こしてしまうことがあります。この菌血症から細菌感染症を起こしてしまった重篤な状態を敗血症と言います。
敗血症になると発熱や顔面皮膚症状、頭痛、けいれんなどの神経症状、頻脈、不整脈などの循環器症状、呼吸数増加、胸痛などの肺症状、食欲不振、便秘、下痢、黄疸などの消化器症状、ショックからの多臓器不全など様々な症状を引き起こします。
歯科では抜歯後の傷口や歯の根の治療途中箇所、また歯周病の炎症から起こる歯ぐきの出血なども菌血症の原因となり、免疫力が落ちている方はそれらが原因となって敗血症となってしまうことが極まれに起こることがあります。特に、根の治療中の歯は傷口を取り外ししやすい仮封をしただけなので長期間放っておくと細菌が入り込んでしまうことがあります。治療途中で通院を中断してしまうと敗血症のような思わぬ病気を引き起こしてしまうことがありますので、歯の治療は継続して最後まで治療するようにしてください。
また、歯周病は悪化すると歯磨きのたびに出血を繰り返してしまい、菌血症も繰り返すことになり、体調の具合によっては免疫力が低下していて敗血症に繋がってしまうリスクも持ち合わせています。歯周病の悪化予防には毎日の丁寧な歯みがきと歯科での定期的なメインテナンスが最も効果を発揮します。
お口の中の異常は、極稀ではありますが予期せぬ事態を招いてしまうことがあります。異常を感じたら、まずは歯科医院へご相談ください。いずみ中山歯科ではこのような重篤な症状に繋がらないように、患者様の体調や既往症などを確認させていただきながら治療を進め、抗生剤の処方や消毒回数を増やすなどその都度状況に配慮した治療を心掛けております。


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