スーパーが好きだ(1)

スーパーが好きだ。

どれくらい好きかというと、体調のバロメータにしているくらいだ。スーパーに行き、心が踊らないときは、だいたい風邪を引いている。ただし、「スーパーに来ているのに楽しくないはずがない」という正常性バイアスが働き、買い物中に体調の悪さを認識できないのであまり役に立たないバロメータではあるのだけど。

スーパーの何が好きなのだろうと考える。たぶん、半分くらいは消費欲を手軽に満たせるとか、健全に消費の欲望を注げる対象だとかそういう理由が占めている。けれど、単にそれだけなら、日常的に買い物に行くドラッグストアやコンビニでもいいはずだ。しかし、ドラッグストアやコンビニでは満たされない何かがスーパーにはあるのだ。たぶん。

前提として、わたしは食いしん坊である。食べるのも好きだし、作るのも好きだ。ゆえに、スーパーで色とりどりに、ずらりと並んだ食材を見ているだけで、「何でも食べられる!(作れる!)」という万能感がじわじわと滲み出てくる。アドレナリンが放出されるのを感じ、たっぷりと買った食材が我が家の冷蔵庫にぎっしりと詰められた様子を想像してはうっとりと、恍惚としながら、青果コーナーから鮮魚売り場へと買い物カートを押し進めるのだ。

事前にチラシでチェックしていたお目当ての商品目がけて行くのもよい。けれど、思いがけず良い商品に出合えたときの喜びはひとしおだ。もちろんそれはお値打ちな品でもいいのだけれど、旬のピカピカに輝くようなフレッシュな野菜だったり、新しいフレーバーのアイスクリームだったりする。

スーパーにはそんなちいさな喜びがあちこちに隠れていて、発見するたびにちょっとだけうれしい気持ちになれる。心の片隅がほんの少し照らされたような、じんわりとあたためられたような、そのくらいのうれしさ。そして、家に帰ったらどんなふうに料理しようかな、新しいフレーバーのアイスクリームを子どもたちは喜んでくれるかなとか、ちいさなわくわくを家に持ち帰ることができる。だから、たぶん、わたしはやっぱりスーパーが好きなのだ。

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