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Jōetsu Shoreと書いて上越ショアと読むポスト・ハードコア

未知のバンドは常時探しているし、ちょっと良さげなものを見つければ繰り返し聴いてみる。その視聴行動は長年身についているので変わらない。その中で最近気になっていて、Bandcampで繰り返し試聴していた最近のお気に入りがフランスのポスト・ハードコアバンド、Jōetsu Shore。

ブラウジングしてあっちこっち聴いてる中でピンときたので、先月リリースされたばっかりのアルバムをフルで聴きながら、どこの人?ナニジン?なんで上越ショア?と思ったんですけど、フランス、ワティニー拠点でレーベル契約もなく、2022年突然怒涛のリリースを始めて、Spotify、AppleMusic、AmazonMusicなどのストリーミング配信系からは一切配信していない、くらいしか情報がない。

正確にいうと2021年12月にファースト・アルバムをリリースして以来、その後毎月、2022年は本当に月イチペースでアルバム・リリースをしている。近年、レーベル契約を持たずにフリーランスで活動するアーティストは増えている。SNSから発信して、短い動画を頻繁に配信し、動画を通して曲をプロモートして、シングル曲をレコーディングしてリリースし、SpotifyやYouTubeなどの配信系で再生回数を稼ぐ。そういうビジネス・モデルは今のトレンドになっている一方で、そういう活動の仕方をしているアーティストは中々アルバム制作ができず、シングルやEPを細切れに出し続けている。

Jōetsu Shoreはそれらとは一線を画す、異端の存在だ。Spotifyなどのストリーミング配信サービスには手を出さず、Bandcampで音源を売る。10-12曲入りのアルバムを毎月毎月リリースする。こんなやり方は、メジャーでもインディーでもレーベル契約があったら出来ないやり方だ。フリーランスだからこそ、自分の裁量で出来ること。

それにしても、毎月10曲以上を、1年以上に渡ってコンスタントにリリースするというのは想像以上に難しいことだと思う。そして多産である場合、往々にして駄作が含まれてくるのはある程度許容するしかないと私は考えているものの、この最新作「Outtakes」から聴き始めて遡って行って、驚愕した。こんなにザクザクリリースしているのに、ハズレがない。

リリースの古い順から聴いていくと、当然新しい作品の方が完成度が高い。つまり生き急ぐようなリリースの中で明らかに成長を遂げているのが聴いてわかる。これも驚くべきことだけれども、成長し、進化していく中で「ハズレ」と呼べるような曲はどのアルバムを聴いても入っていない。これは特筆するべきことだと思う。

そしてBandcampでの音源の売り方。Bandcampは元々、直売所なので価格は安めに設定するバンドが多く、シングルなら1ドル、1ユーロなどの設定が多い。アルバムなら9.99ドル、9.99ユーロなどの最低購入価格が設定されていて、「それ以上ならいくらでもいいです」というパターンが多い。つまり「最低でもこの価格を払って欲しいけど、多く払ってくれるならいくらでもウェルカム」方式が主流で、たまーに、最低価格の設定なしに「好きな価格で買ってください」というアーティストがいる。そして「好きな価格で買ってください」というアーティストは自分自身の才能に、そして作品にプライドがあるからそういう設定を選んでいる、というのを私は今まで何人も、出会ってきて、実際に見てきている。自分の音楽は適切に評価されるであろう、そして適切に評価されたらそれなりの価格を払ってもらえるはずの作品を世に出しているという、自信があるからそういう設定ができるのだ。

Jōetsu Shoreもそういう「好きな価格で買ってください」という価格設定だったので11曲入りの最新アルバムを10ユーロで購入した。順次その前のアルバムなども購入予定。なにしろ配信系に入ってないので音源を持っておいた方が聴きやすい。ちなみにiTunesStoreとかでも売ってない様子。Bandcampでしか買えないの?って思うといったいどういうつもりのバンドなのか、インタビューしたくなってくる。あまりにも謎が多く、音は良く、好奇心を刺激される。


しばらくシューゲイザー/ポスト・ハードコア界隈から離れていたのだけど、世界各国のインディーズ・バンドが充実してきている体感があるのでしばらく定点観測を続けようと思う。


今日の1曲

Jōetsu Shoreの最新作、ここから全曲フル試聴出来ます。


今日のパンが食べられます。