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戯曲 老いがいのクリスマス          シーン③-2 施設長室


   リビングルームの照明が絞られて、施設長室の照明が明るくなる
   施設長室に上崎が入ってくる
 
大塚 ああ、主任お帰りなさい、市役所はどうだった。
上崎 (書類を渡しながら)只今、ええ、納得して頂きました。これで処遇改善の件一安心ですね。まあ、豆に研修していますからね。お客様ですか?
 
   上崎、姉妹にそれぞれに挨拶をする
 
大塚 ええ、今日からお世話する福森愛さんの娘さんで姉妹の姉の望美
 さんと妹の美香さんです。
上崎 えっ! 今日からお世話する福森愛さん!そんな話聞いていませ
 んよ。
大塚 そりゃそうよ。今決まったんだから。
上崎 ホーム長!いいかげんにして下さい! 確かに内はいま空きがあ
 りますが、二名程順番待ちで次の会議でプログラムを決めるはずだっ
 たでしょう。
 
   大塚立ち上がり上崎を部屋の隅に呼ぶ
 
大塚 いいこと、理事長の紹介。私も最初は断ったわよ。でもね仕方な
 いでしょう。理事長のことは別にしても帰る家がないって言うんだも
 の。野宿させられないでしょう!
 
   まじまじと大塚の顔を見る上崎。そしてため息を大きくつく
 
上崎 今日の夜勤は誰でした?
大塚 堂本さんのはず・・・
上崎 堂本さんじゃ難しいな。
 変に教育的だから・・・ああ、仕方ないなあ僕夜勤に入ります。
 堂本さんには都合で明日にスライドと連絡をすぐに入れて下さい。
大塚 (ほっとして)はい、わかったわ。
  (携帯ですぐに堂本に連絡を入れる)
上崎 で、お母さんは何処ですか?
大塚 リビングでレクに参加。吉岡さん日勤の山本さんに任せているんだけど・・・
上崎、それには返事せずに、姉妹に頭を下げてリビングに向かう
大塚 自宅は山之上病院の近くだって・・・(上崎の背に浴びせる)
 
   リビング 福森短冊に言葉を書いている。
 
上崎 (床に膝を着いて)こんにちは、福森さん。上崎と申します。
 よろしくお願いします。
福森 (手を止めて)上崎さん?主任の?
上崎 はい、そうです。
福森、立ち上がって、礼をしながら
福森 いいえ、こちらこそよろしくお願いします。ところで、ここは
 何処ですか?何をするとこですか?
上崎 ・・・う~ん、シェアーハウスみたいな処です。
福森 シェアーハウス?なんか聞いたことあります。要するに皆さんと
 一緒に生活を共にするみたいな・・・
上崎 そう、その通りです。一緒に生活を共にする、良い言葉ですね。
 その通りです。
福森 ふ~ん、そうなんですか? まあ、見学させて頂いてありがとう
 ございました。コーヒーを飲んだら失礼致します。
上崎 あ~あ、今日は、すでに福森さんの夕食も用意させて頂いており
 ますので、それからでは・・・・・。
福森 それでは、うーんと遅くなりますわ。困ります。
上崎 僕が、送って行きますのでご心配無く、確か山之上病院のお近く
 でしたね。
福森 おや、よくご存知で・・・・・(少し思案する)わかりました。
 では厚かましいですが、夕食の後送って頂くということでよろしくお
 願いします。
上崎 はい、わかりました。
 
   暗転
 

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