オイディプスとアンジェラ ⅩⅨ
此処からは 本音で話す これは提案だが・・・
＜生活の匂い＞がしないと偽物に視える くどいようだがお主の問題点はこの一点に尽きるでなければ群衆は共感を得ることができない そこでだ・・・ とりあえず百日は包帯を強く目の上に巻いて全き闇の世界でこの一座の下働きをして頂く 食事と寝るところは提供するが給金は無し それでよければこの一座で暫く生活をするが良い
又主従の関係が強すぎてはあまり良いとは言えない だから下僕のアンジェラとは百日お主とは別の処で働いてもらう お主には見守りにエレナの従姉妹ポースをつけるから不便はかけないカリスは私の創作の補佐をお願いする 字が書ける故じゃ
アンジェラとカリスは是非とも我が一座に入って頂きたい 二人は若く可能性が多いにある
そうして オイディプスよアンティゴネの元に帰り為され 妹であり娘である彼女にお主の生き様を教えるのだ それが糧になって娘は大きく成長する筈だ
オイディプスはすぐには言葉が出てこなかった
オイディプスのモノローグ
此処まで裸にされて生きねばならぬか 私の業は其程までに深いか
それにしても アンティゴネのことはほんとう盲しいてから 完全に欠落していた父を赦せ・・・二人で放浪の旅？ 私はいいが娘には過酷だ 今の彼女の状況を知らねばならないなぁ
完全な闇の世界ではますます聴覚が鋭敏になることだろうし 他の器官の発達もあるかもしれない 百日耐えてみるか いや耐えてみせよう
ディプ Yakamoti殿ありがたいお言葉を感謝する 又アンジェラとカリ
スも育てて頂けるとはほんとうにありがたい・・・今更喪うも
のなど何もない私だ・・・
百日間の完全な闇の世界と世俗の世界を学びて 何が変わり何
が変わらぬかはわからぬがそのことに賭けてみる
二人を呼んで話を頼む
Yakam わかった
Yakamoti自ら二人を呼びに行き連れ戻した
ア ン どのような結論に達したのですか？
Yakam オイディプス殿には百日間一座の下働きをして頂く アンジェラ
殿にはエレナについて演出助手を学んで頂く カリス殿は儂の
創作の補佐（記録係）になって頂くが この期間はオイディプ
ス殿と話をすることは相成らん
カリス 何故？ 私達を・・・ （と空に文字を書く）
ア ン 到底承服出来ませぬ・・・ディプあなたはそれでほんとうに良
いのですか？
ディプ アンジェラ・カリスありがとう しかしYakamoti殿の申し入れ
を受けてくれ どうも私には長らく身についた王の垢がびっしり
と張り付いているようだ
一人で生きて行かねば 私はほんとうには変わることなど出来
ないようだ
Yakam 王は謙虚でおありだ そうあなたのその垢を落とすにはもっと
俗世にまみれて生きて行かねばならぬ そうすればあなたの舞
はもっと輝く
ディプ 私には娘のアンティゴネがいる 百日後しっかり者の娘と放浪
の旅に出る これが神が下したほんとうの道の様な気がする
つかの間の良い夢を視ることが出来た 二人にはほんとうに感
謝している・・・これで永遠に縁が切れる訳ではない・・・
たかだか百日のことだし また旅の空で逢えるかも知れない
Yakam お前達二人にとっても一つの修行じゃ 一つ約束をする 三人
がこれを果たした時 もう一度三人の舞台を儂の演出のもとで
公演することを・・・
ディプ おぉ それはほんとうか！ 嬉しい限りじゃ
カリスは泣き崩れアンジェラに慰めて貰っていた
Yakam う～む 美も真実も突き詰めれば酷いものだが それを越えた 時必ず光が視える
ディプ アンジェラ カリス Yakamoti殿を信じよう 道は一つだ
カリスは泣き止みアンジェラも頷いた
Yakam 話がついた処で今日は春公演の楽日じゃ みんなで祝宴を開い
ておるお主らも是非参加して頂きたいがどうじゃ
ディプ 私は酒を断ちました故に・・・また少し考え事をしたく存じま
す故に・・・二人は愉しんでくれればよいから行きなさい
アン ではお言葉に甘えて カリス行こう
オイディプスを残して三人が去った
ディプ う～む やっと一人になれた 儂は孤独が好きなのだな
ぁ・・・
海が視たい 海の碧が 空が視たい 空の蒼が
ⅩⅩに続く
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